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不器用な俺。  作者: sprint
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第十五話:仲良し四人組

夕日で赤く染まる校庭。


みんな足早にそれぞれの家へと帰っていく。


俺と翼はそんな夕方の様子をぼーっと見つめて二人を待っていた。




「・・・来ないなぁ〜。」

俺がそうつぶやく。


「そうだな、そろそろ来てもいいと思うけど・・」


二人で目を凝らして昇降口のあたりを探した。




「いた!」


俺が指差して叫ぶ。



好きな人を待ってる時はどうしてこんなにも長く感じるのだろうか。




「遅れてごめん! 先生の話、長くって・・」


筒井が両手を合わせて謝ってくる。



香織も息を切らして謝ってきた。



「ごめん! すぐに行きたかったんだけど・・」



深く追求せずに許してあげた。




あ、ちなみに。


笹山のこと、名前呼びで呼ぶようになったんだ。




・・・というかそう言われた。


俺がいつものように「なぁ、笹山?」と呼んだ時だった。


香織は振り向くとなぜかしょぼんとしていた。




「どうした? 具合でも悪いのか?」

「ううん、先輩。 ・・・これからは名前で呼ばない・・?」

「えっ・・?」

「あっ、べ、別に嫌ならそれでいいんだけど・・・。」


名前で呼ぶ、なんて考えた事が無かった。

翼たちはいつもキャッキャと名前で呼び合っているが、自分もああなるのか?



「い、嫌じゃないけど。」

「じゃ、じゃあ。名前で呼ぼう? ・・・竜二。」

「わかった。・・・香織。」



この日、俺たちは手をギュッと繋いだまま何も話せずに帰った。



この瞬間は今までドキドキした中でもトップ5に入るくらいドキドキした。


一位はダントツで告白した瞬間。

二位は観覧車の中で二人きりで隣になったとき。

三位はお化け屋敷でいきなり手をつながれた瞬間。


四位は・・・色々ありすぎてわからない。



まぁ、とにかく。

それくらいの衝撃だったという事だ。







そんな風に考え事をしているといつの間にか公園にいた。


「竜二! お前なんでずっとボーッとしてるんだよ!」


翼に怒られてようやく気がついた。


学校から少し離れた広い運動公園の中の休憩スペースのような場所。





「あ、ごめん・・ちょっと考え事してた。」

「部長! こんな時に考え事してちゃダメですよ〜。」


筒井の甲高い声が耳に突き刺さる。


「悪い悪い! 県大とか色々、な。」



「変な事でも想像してたんじゃないの〜?」

翼が目を細めてニヤニヤと言う。


「ば、馬鹿! んなわけないだろ!」

「はいはい! 下ネタ禁止!! 先輩も考えるなら家で!」


「って、お前もかよ!!」


俺たちのやりとりを見て香織はクスクスと笑っている。




「それは置いておいて・・竜二、前に渡した笹山のプロフ、見たか?」


「はっ?!」

「いやいや、だから笹山のプロフ。」


「・・・」

「大丈夫だって! ちゃんと本人に了解を得て竜二に渡したんだから。」


「・・・見た。」



いきなりこいつは何を話すのかと思った。



「あの時に俺、笹山の事可愛いって言ったよな? どう思った??」

「どう思ったって・・・」


こいつ、本当に馬鹿か?

本人がいる前で言えと?


筒井も知っていたようで興味津々に見つめてくる。



香織も知りたいような知りたくないような、と言いたげな顔をしていた。

プロフの事は香織にも話したけど・・・。


「いいからいいから! 早く!」

翼が急かす。



「・・・メッチャ凹んだ。」



「なんで??」

すかさず翼が追求してくる。




「あの時、翼にはムカつくようななんとなく悲しいようなそんな感情が芽生えた。・・・プロフ見たとき、同学年に好きな人いるって書いてあったから凹んだ。」



翼と筒井が顔をあわせてニヤっと笑った。




「あのな、あれ。俺と綾香が竜二はどう思うかなーって試したわけ!」


「・・・・・はぁぁぁ?!!」



「俺が笹山の事を可愛いって言えば、竜二も嫉妬するかなーって。」


まったくこいつらは・・・。

というかそのころから付き合ってたのかよ。

全然気がつかなかった。



「いや、あれは嫉妬じゃなくて・・・」


こいつらの手の上で踊らされていた事を認めたくなくて必死に反論する。


「いやいや、そんな感情の事を『嫉妬』って言うの。」

「先輩、香織が他の一年の男子と仲良さそうに話してるとなんか変な気持ちになりません?」


「・・・。」


「そういえば一年の男子で香織の事が好きっていう子が・・「ちょ、ちょっと! 綾香!!」

香織が困ったように一生懸命遮ろうとする。




(俺の他に香織の事が好きな奴が・・・?)


胸の奥から湧いてくるこの気持ち。

なぜかその誰だかわからない男子にムカついた。


「竜二、今その一年にムカついただろ。それが嫉妬。わかった?」



嫉妬、か。



「でも、香織よかったね! それだけ好かれてるって事じゃん!」

「・・・うん。」


香織は少し俯きながら微笑んだ。



その照れながら微笑む姿にしばし見とれていた。

もう翼のようになっているのかもしれないな。



「じゃ、遅いしそろそろ帰ろ?」

そう、筒井が言った。



そしていつものように家へと帰った。







夜。


俺はベッドに寝っころがって漫画を読んでいた。


静かな俺の部屋に携帯の着信が鳴る。


メールだ。




「今日は楽しかったね! それに・・なんか嬉しかった♪ 私も竜二が他の子と話してたら嫉妬しちゃうかも〜・・。ちなみに私は竜二一筋だから安心してネ!(笑) 県大までもう少しだけど怪我しないように頑張ろ!」




素直に嬉しかった。


意識しなくても頬が緩む。


ずっと不安だった先ほどの事が一気に消え失せる。




早めにメールに返事をした。


その後、自然に手が動き「保護」の所にカーソルを合わせボタンを押していた。





(本当に香織と付き合えてよかった・・・)





改めてそう思うのであった。





更新遅れてゴメンなさい(汗

なるべく水曜日・土曜日に更新できるように頑張ります^^;


ちなみに最初のころの翼の「可愛い」は一応伏線って事で(笑)

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