第十三話:数日後・・。
そして、二週間が経った。
比較的いつもと同じような毎日。
ただ、今までと違う少し進歩したこともあった。
ようやく顔を見て話せるようになってきたんだ。
今までは本当に真下を見てて。
笹山のスニーカーを見つめながら話してた。
今思うとすごく変な格好だ。
それが唇のあたりを見れるようになってきたのだ。
自分の中では大きな一歩。
・・ちゃんと目を見て!ってもう一度注意されたこともあったけど・・。
(目はホント無理だって・・・)
どんなに頑張っても鼻の付け根のあたりまで。
たまに意地悪でいきなり顔を低くされ無理やり視線を合わせさせられると本当に慌てる。
「もう〜! そろそろ慣れてよ〜!」
と膨れっ面で言われるのが最近の日課。
それを翼と筒井にからかわれるのも最近の日課。
笹山はだいぶ慣れてきたのか目をきちんと合わせようとしてくる。
まだ顔は赤くなったりしてはいるが。
俺がきちんと目を見て話せるのはいつになることやら・・・。
(告白した時はきちんと目を見て話せたんだけどなぁ・・)
といつも心の中で嘆くが何も変わらない。
ちなみに翼と筒井に俺たちが付き合い始めた事をきちんと報告した。
本当はその事だけを簡潔に話すつもりだったが告白の仕方やその他諸々も話す羽目になってしまったけど。
話した時は本当に大変だった。
部室で翼と筒井だけ呼んで話したのに話した途端、急にお祭り騒ぎ。
なんと部員全員、影に隠れて俺たちの報告を盗み聞きしていたのだ。
驚いた事に笹山が俺の事を好き、という事は一年全員知っていて。
俺が笹山の事を好き、という事は二年全員が知っていた。
まぁ、犯人はあの半分バカップルになりかけている二人しかいないと察したが。
そんなわけでいつも俺たちがくっついたら面白いのに、と話していたらしい。
そして大会の日、俺が笹山を呼び出した事で告白して付き合い始めたと確信したそうだ。
誰にも見られないように呼んだはずだったのだけど・・・。
それにこれで俺がフラれてたらどうするつもりだったのだろうか。
翼は俺の性格上、付き合う事になったら報告してくると先読みしていて。
それを部員に伝えて二人でこのことを報告してきたらみんなで祝おう、というサプライズをしようという事になったようだ。
見事に俺は翼の策略にはまってしまった。
筒井も筒井でやる気満々だったらしく、顧問のいない日をわざわざ調べたりお菓子や飲み物の買出し長のような役目を果たしたと言っていた。
そこまでして・・・と少し呆れてしまったのは黙っていた。
最初は俺も笹山も少し不機嫌にみんなの祝福をうけていたが、次第に楽しんでいった。
確かに冷やかしはうざったかったけどたまにはドンチャン騒ぎをするのもいい。
それに一応、大会の祝勝会っぽい雰囲気もあったし。
(どうせだったら祝勝会をメインにしてくれれば良いものを・・・。)
ぶつくさと文句を言っていたら軽く注意されてしまった。
「先輩、こうなったら楽しみましょうよ? ね?」
優しく諭されて少し顔を赤らめていると全員から冷やかしを入れられた。
これはもう一種のいじめにはならないのだろうか?
「あぁもう!! お前たち明日300m30本やらせるぞ!!」
手を振り払うように笑いながら大きな声を出す。
するとあちらこちらから「それはナイっすよ〜」「無理!」などと聞こえてくる。
極めつけが「彼女さんからもなんとか言って下さいよ〜?」だと。
(からかうのもいい加減にしようよ・・・。)
うな垂れているとみんなから爆笑の渦が巻き起こった。
とにかく飲んで食って騒ぎまくった。
部室が汚すぎるとまずいので適当に掃除をしてからファミレスに移動したりした。
かなり迷惑な客だったであろう。
一応店員の人には出る時に「うるさくてすみませんでした」と言っておいた。
そんな感じでその日はずっとみんなで遊んでいた。
まったく、良い仲間なのかおかしい面子なのかわからない。
これで地区大会は終わり。
県大会は後、一ヶ月後。
一日目は俺の400mと翼の100m。
二日目は笹山と筒井の200m。
後、リレーでも県に行った。
自分の種目の事で頭が一杯でリレーは走った事すら忘れていた。
後々思い出したのでかなり自己嫌悪が激しかった。
一ヶ月でどれだけ成長できるのか。
そこにかかっているんだ。
出来るかな? じゃなくて。
出来る、そしてやらなければいけないんだ。
飛んでしまってすみません^^;
最近どうしても都合が合わなくて(汗
ここからは県大会モードに入っていきます。
「決意」のあとがきでは終盤、と書いたのですがもう少し続けたいと思います(笑)




