第十二話:二人きりの帰り道
隣に笹山がいて手を繋いで一緒に帰っている。
しかも二人きりで。
まるで夢みたいな状況。
先ほどよりだいぶ頭が直ってきてようやく歓喜の喜びをかみ締める。
(やった! OKしてくれたんだ!)
心の中でガッツポーズを100回くらいしただろう。
顔は真っ赤っかで沸騰したヤカンみたい。
心臓は破裂寸前。
繋いだ右手から温もりが伝わってくる。
細くてちょっと冷たいちっちゃな手。
遊園地以上に緊張して歩く時に手と足が一緒に出てしまいそうだ。
・・・そんな事を考えていると本当にそうなった。
「あ、手と足一緒に出てる! 面白ーい!」
思いっきり笑われてしまった。
最近、かっこ悪いとこばかり見られてしまっている。
(・・やっぱり泣いてるより笑ってる方が絶対可愛いよなぁ。)
思わず笹山の顔をじーっと見つめてしまう。
今なら翼の気持ちがよくわかる。
するとそれに気がついた笹山が顔を赤らめて言う。
「せ、先輩! そ、そんなにじっと見つめられると恥ずかしいよ・・・」
「ごめんごめん。でも目、見て欲しいんだろ?」
「そ、そうだけど・・・」
「じゃあいいじゃん! なっ?」
「い、今はそんなにじっーと見つめる時じゃないですか! また何か考えてたの?」
少しからかってみた。
必死に反論してくる。
まだ先輩のなごりが消えなくて時々敬語になるのも面白い。
(俺だってじっと見つめるの、かなり恥ずかしいけどな・・・)
「・・・さ、笹山やっぱり可愛いなって。」
調子に乗ってつい言ってしまう。
まぁ、ふざけて言えるほど人間が出来てないから俺も顔真っ赤だけど。
「!! 先輩! い、いきなり・・」
あたふたして慌てて顔を隠す。
「ご、ごめん・・・」
二人してりんご病にでもかかったみたいに顔が赤い。
慌てて顔を赤らめる姿も可愛い。
(・・・まずい。翼と同じになりそう・・・。)
けどそんな事言ったって可愛いもんは可愛いのだから仕方が無いか。
「・・・・た。」
「へっ?」
うまく聞き取れなかったので聞き返すが思わず間抜けな声が出てしまう。
「で、でも先輩に言ってもらえて嬉しかった・・・」
俯いて視線を下に落としたまま笹山は答えた。
「・・・」
(本当にやばい! ここまま死にそう!!!)
お互いに真っ赤にした顔を下に向けながらゆっくりと歩く。
無言のまま。
少しの間、沈黙が続いたがさすがにダメだと思ったので俺が話題を持ちかける。
「あのさ、翼にプロフのURL教えてもらったんだ。」
「えっ?」
「そ、そこに好きな人の事が書いてあって・・・」
聞いちゃいけない、と歯止めをかけようとしたが遅かった。
「あ、あれは・・・。」
何かを言いかけて口を噤む。
「あれは?」
歯止めがきかない。
「・・クラスの子に『斉藤先輩の事、好きでしょ?!』ってしつこく聞かれ続けてて思わず適当に書いたんです・・」
この事でかなり凹んでいた俺はなんだったのだろう。
あれだけ泣いてしまったのがアホらしく感じる。
「そっか、あれ結構・・「で、でも!!」
大きな声で遮られてしまった。
「本当は入部した時くらいからずっと先輩の事が好きで・・・だから先輩が告白してくれたのもすごく嬉しくて・・・」
まさか・・・。
まさか笹山の口からこんなことが聞けるとは思わなかった。
全然そんな素振り見せなかったのに・・・。
「あ、ありがと・・」
「じゃあ、家ここだから・・送ってくれてありがとうございます。」
話しているうちに笹山の家に着いたようだ。
まだ敬語が抜け切らない。
当たり前か。
「あ、そっか。じゃあまた明日な!」
俺は大きく手を振ると自分の家へと帰った。
(あと姉貴と翼にも言わないとな)
「ただいま! 姉ちゃん?!」
ドタバタと家を駆け回り姉貴を探す。
「何? もう少し静かにしなさいよ。で、どうしたの? 大会で勝った?」
寝ていたようで目を軽く擦りながら言った。
「ごめん。勝ったよ、後・・・」
「後?」
「・・・笹山に告ってOKしてもらった。」
姉貴は眠気覚ましにコーヒーを飲んでいたが思わずむせてしまう。
「ゴホッ!! う、嘘・・・よかったじゃん!!」
「うん、告ったらいきなり抱きつかれて大泣きしちゃって・・」
また姉貴むせてしまい、さっきよりもひどくなる。
「ゴホゴホゴホゴホッッ!! あ、あんた・・・」
とりあえず早めに夕食と風呂を済ますと遊園地の事から先ほどのことまでを淡々と説明していく。
「りゅ、竜・・・。 あんた、凄すぎるよ。」
「そうなの?」
いまいち実感が湧かない。
確かに告白してOKしてもらった事はよかったけどそんなにすごい事なのか?!
「だって遊園地のシチュエーションといい告白のシチュエーションといい・・完璧じゃない! 私もそんな恋をしてみたいなぁ〜。」
(よくよく考えたら好きな子が自分の事を前々から好きだった、なんてあんまり無いよな。)
またしても心の中でガッツポーズをしまくる。
「顔、にやつきすぎだって。さ、もう子供は早く寝なさい。疲れてるんだし。」
「わかったよ、じゃおやすみ。」
自分の部屋へ行き、寝る事にした。
ちょっとアイデアが不足してきてます(汗
今後の展開がどうなるかまだわかりません。
温かく見守ってくれると嬉しいです(汗




