第9話 ロストジュエリー
ノブとサンザークは日が昇り始める前から起き始め、昨日市場で買った干し肉とパンを食べる。昨日の昼に食べた、なんかの肉の串焼き、夜食べた屋台で買ったサンドイッチはいずれもかーちゃん手作りサンドイッチ、ハンバーガーの100倍美味しかったと思いながらノブは朝食を食べ終わると日が昇ると共に出発をする。ノブ達は黙々と歩き、夕方には国境の街コンバンに到着し、ここで一泊することにした。コンバンは国境の街という事もあり、人が多く見られ賑わっていた。ノブとサンザークは宿を取り、宿に併設してある酒場でサンザークはビール、ノビはミルクを飲みながら話をする。ちなみにミルクはウーシーと言う、動物の乳らしく、ノブはそれを聞いて「牛じゃん!」とおおいにつっこんだ。
「サンザークさん、ウーシーのミルクめっちゃ美味しいじゃないですか!?」
「いや、普通だろ」
「いや、この濃厚さ!ほのかな甘さ!のどごしの滑らかさ!たまらん!」
「そ、それは良かったな」
サンザークはウーシーミルクを飲んで感動しているノブの姿を見て引きながら応え、ビールのおかわりをマスターに頼む。
「そうだ、サンザークさん!そろそろ冒険者にならずに急に鍛えるって言い出した理由を教えてくださいよ」
「そらーお前が冒険者になったら、大体1ヶ月くらいで殺されるかだよ」
「ころ、ころ、ころ、殺されるってどうしてですか!?」
「いや、後ろから剣でザパーか首をスパーってな」
「ザパーっじゃなくて!スパーっでもなくて!てなって!殺され方を聞いてるんじゃなくて何で殺されなきゃ行けないのかが聞きたいんですよ」
「あぁそれか、ここで話すわけにはいかん。部屋に戻ってから話してやるよ」
そう言って、サンザークは残ったビールを飲み干し、代金を払うとノブと共に酒場を後にし部屋と戻る
「レインボーダイヤだよ。お前のマイジュエリーはとてつもなく危険でとてつもない可能性を秘めている。そんなものを弱っちいお前がちらすかすと、十中八九殺されて奪われる。マイジュエリーは持ち主が生きている間は盗まれようが無くそうが持ち主に戻ってくるが、持ち主が死ねばジュエリーは戻る場所を失うから、持ち主の所に戻るって事はなくなる。ロストジュエリーと呼ばれて、貴族様の観賞用に高く売れる。それと、死んだ持ち主の魔力がロストジュエリーには込められていてな、剣や杖、武器に装着して使えるんだよ。ただ、元持ち主に比例した耐久値しかないから、ほぼ使い捨てだな。それでも、戦場に身を置く者の需要は高いからの高く売れる」
「なるほど・・・・ちょいと気になったんですが、武器に装着するってどういう事ですか?」
「あぁそりゃぁ・・・まぁ見せた方が早いか・・・」
サンザークは鞘から巨大な剣を出す、そして一緒に懐からピンポン玉程の黒い宝石を出す、そして剣に空いてある穴に装着する。すると宝石を中心に黒いオーラが大剣を包み込む。
「この宝石はブラックダイヤ、俺のマイジュエリーだ。そして、この剣は太古の遺跡から持ち帰った物だ。この剣も始めは錆びた大きな鉄屑だった、お前の持っている鉄の棒と一緒だ。それを鍛え直して、本来の切れ味を取り戻した・・・名を『ブラックバスター』という」
「ブラックバスター・・・・(ダサいダサすぎる)、剣の名前は誰がつけたんです?」
「剣を鍛え直してもらった鍛冶師が銘をつけた」
「なるほど・・・・にしても宝石をつける前と後で剣の雰囲気が変わったような気がしますね」
「あぁブラックダイヤをつける前の剣はただの棍棒で切れ味もへったくれもないが、ブラックダイヤを装着すると岩がサパースパーだ。まぁブラックバスターの本当の力は切れ味だけじゃないがな・・・まだ、お前には教えないけどな」
「ちなみになんですけど、今僕が持ってるこの鉄の棒の穴に僕のマイジュエリーをつけたらどうなるんです?」
「ただ光る棍棒になる」
「・・・・うわー、素敵(光る棍棒って、ライブ会場でファンが振り回すやつじゃん、蛍光のやつじゃん、サンザークさんのファンみたいじゃん、絶対につけないな)」
「まぁ安心しろい、あの鉄の棒も鍛えたらいい得物になる。明日マク王国に入ったら、とりあえず首都を目指す。そこでブラックバスターを鍛え直してもらった鍛冶師に頼んで、お前の鉄の棒を蘇らすぞ」
サンザークはそう言って、ブラックバスターからブラックダイヤを外し懐にしまう。
「マク王国の首都までどれくらいかかるんです?」
「歩いたら1ヶ月くらいか・・・」
「歩き死にますって」
「話しをよく聞けぇい!首都までは馬車で行くから10日程度だ。明日から、馬車が休んでいる間は稽古を始めるから、歩いて行くよりも疲れるかもな」
「はうっ!・・・頑張ります。後からサパーされな・・・グー・・・グー・・・」
「もう、早いなんてもんじゃないな・・・ただ、あの人が素直に剣を直してくれるかが心配だ・・・まっなるようになるか、さぁ俺も寝るか」
そうつぶやくと、サンザークはベッドに入り布団を抱え込むように眠りにつく。