第8話 嘘
ノブとサンザークはギルドを出ると街を歩く
「サンザークさん、これからどこに行くんですか?」
「どこに行くも何も、お前の服装をどうにかしないことには一緒には歩けねーよ」
「ん?」
「不思議そうな顔してるな、自分の格好がいかに変かわかってるか?」
「確かに・・・でも、これはサンザークさんのかーちゃんお手製ですよ」
「かーちゃんは服のセンスは死んでいる・・・まぁ料理の腕は世界一だけどな」
「・・・・・・・・(料理の腕も死んでるよ)確かに・・・・・そういえばサンザークさんって特級冒険者なんですよね?めちゃくちゃ偉い人じゃないですか?」
「んなことはね~よ、特級って言っても何もなけりゃただの冒険者だ。国の危機っていっても早々あるわけじゃないからな、基本的に自由だ」
「そんなもんなんですかね〜」
「そんなもんだ。おっ着いたぞ。服と装備、食料と調味料とかを買ったら出発だ」
「出発って一体どこに行くんです?それと僕、お金持ってないんですけど・・・」
「行く場所は・・・ひ・み・つ、お金は・・・お・ご・り」
「ただ、おじさんの『ひ・み・つ』ほど気持ち悪くて恐ろしいものはないんですよ!おごってくれるのは嬉しいんですが・・・」
「失礼なやつだな、まぁまた行きながら教えてやるよ」
そう言って2人は服屋、防具屋、食料店をまわる。どの店の店主もサンザークとは顔見知りらしく、値引きやおまけをつけてくれた。買い物が終わるとすぐに出発をする。門の所にはテッドがおり別れを告げて街を出る。
「サンザークさん、大丈夫ですかね?」
「何が大丈夫なんだ?」
「いや、この格好」
ノブはサンザークが全身コーディネートした服と装備を着ている。上はノースリーブ的な革の鎧をつけており、下はブリーフ的なパンツのみ、靴は膝までのブーツ、そして真っ赤なマントのようなローブを着けている。
「大丈夫だ、服に関してはかーちゃんよりセンスが良い、ましてや記憶喪失のお前に服のセンスが語れるのか?」
「うぐっ!そこをつかれるとなんとも言えません・・・」
「だろう、俺に任せとけ」
「わかりました、ただ一言、言わせてください!なぜ、この格好が完成した際にお店の人が顔を背けて震えていたんですか!?」
「あれは店の者が自分では思いつかないセンスの良い格好を見て悔しがってたんだろう」
「なるほど・・・(いや、あれは確実に笑いを堪えてた、証拠に店から出たら子どもが指刺して大爆笑してた、さらにどこからか『変態』って声が聞こえたし、兵隊じゃない変態だった!これならかーちゃんのセンスの方がいい気がする。しかし、そんなことサンザークさんに言ったところで無駄だろう、何故ならこいつは歴史的天然おじさんだ!おごってもらったしもう、何も言うまい)」
「何、真剣な顔してんだよ、早く行くぞ」
「何でもないですよ。服と装備ありがとうございました。そういえば、なんでこんなに急いで出発するんですか?」
「早くお前を鍛えたいからに決まってんだろ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ノブとサンザークは街道を歩く。そして、夕方にはなる前に野営の準備をし、食事をとる。食事を食べながらノブはサンザークにこれからの予定を聞く
「サンザークさん、いい加減にどこに行くか教えてくださいよ」
「そうだな〜教えてやっても良いかな。そのかわり、聞いて『行きません』は聞かないからな。縛りあげてでも連れて行くからな」
「どんだけ危険な場所に連れて行こうとしてんすか!!・・・・・ちなみに今、聞かなかったら行かなくても良いです?」
「いや」
「選択肢は?」
「ない!・・・・おいノブ、はっきり言っておくが今から向かうところは恐ろしく危険だ!だが、ここで行かないって選択をしてもいいがお前はそれでいいのか?強くもなれず、一生人に守ってもらい、大切なものも守れない、お前はそんなんでいいのか?さぁどうするんだ?行く場所を聞いて行くのか?行かないのか?聞かないなら俺は引き返しても良い」
サンザークは真面目な顔をしてノブに問いかける
「・・・確かにこのままだといつ死んでもおかしくない、自分も守れないし大事な物も守れない・・・そんなのは嫌だ!だから聞きません!!!」
「んあ?」
「だから、聞かないから行きません!」
「はぁ?」
「サンザークさん、耳大丈夫です?石でも詰まってんじゃないですか?でも、サンザークさんって顔がでかいから耳もでかい、石が詰まってるって感じじゃぁないし、岩が耳に詰まってるって言った方がしっくりきますねって、サンザークさん何してるんです?」
「何ってお前を縛ってるんじゃないか」
「縛ってるって、縛ってどうするんです?」
「縛ってでも連れて行くって言ったろ?お前こそ耳に何か詰まってたのか?」
「・・・・・・・・・いやいやいやいやいやいや!!!引き返しても良いって言ったじゃないですか?」
「あんなもんウソに決まってんだろ!!!」
「堂々と嘘を認めないでくださいよ!!!結局、何があろうと連れて行くんじゃないですか!!!」
「なんか、文句があるのか?」
「文句しかないですよ!!!口から文句しか出てきませんよ!!」
その後も押し問答が続き、数分後ノブは渋々納得して、さらに自ら『行きたいです』とまで言わされ縄を解いてもらう。
「んで、結局どこに連れってもらえるんですか?サンザークさん」
「あぁ目的地はバン王国の隣の隣の国、アレ王国にあるボリン大森林だ!この世界でも有数の危険地帯だ」
「・・・・・行く場所はわかりましたけど、サンザークさんはこの国の特級冒険者でしょ?だったら、この国から離れちゃダメなんじゃないんですか?」
ノブは期待を込めて質問をする
「あぁそのことなら心配はない、特級のギルドバッジには連絡魔法がついててな、国の危機にはこのバッジに連絡が来ることになってる。いくら国王に任命権があっても冒険者は国の兵隊さんじゃないからなどこに行っても文句言われんさ」
「・・・とっっっっても、便利な機能ですね・・・・・・」
「だろう」
サンザークはニヤッと笑みを浮かべる。
「よしっじゃぁ明日も早いし、寝るぞ!今日は俺も寝る。ここは比較的安全なところだからな」
「サンザークさん!他にも色々と聞きたいことがあるんですけど!」
「まぁそうだろうだが、おいおいだおいおい」
「おいおいですか?しょうがないですね・・・じゃぁさっさと寝ましょう・・・・グー・・・グー・・・」
「相変わらずはえーな・・よし、俺も寝るか」
2人は休む。