たっちゃん
「ところで…」
「ん?」
「お名前まだだったね。私、伊切 多津美っていいます。あなたは?」
「ああ。ぼくの名前は奏 誠司。奏くんでも誠司くんでもどちらでも構わない。好きな方で呼んでくれ。」
「わかりました。じゃあ…せいくんって呼ばせてもらいます。」
「おお。」
おおっとー。まさか、せいくんと呼ばれるとは。嬉しいものですなぁ。
「ぼくはなんと呼べばいい?」
「そうですねぇ。周りからはたっちゃんって呼ばれてるからそう呼んでくれると嬉しいな
」
「嘘つけ。おまー」
幻が何かを言いかけたがそれを止めるたっちゃん。
「イッタアアアアアアアア」
足を踏まれた幻が叫ぶ。
「たっちゃんって呼んでくれると嬉しいな?」
「は、はい。そう呼ばせていただきます。」
ぼくも踏まれるかもと思い、そう答えた。
まあ。ご褒美なんですけどねぇ。
「ところで、たっちゃんは幻とはどういう仲なの?幻にたっちゃんみたいに可愛い女の子の知り合いがいたなんて知らなかったんだけど。」
「え⁉︎か、可愛い⁉︎」
「うん。幻は女の見る目がないからわからないけど、誰から見ても可愛いと思うよ。」
「//////」
「あの…たっちゃん?」
「ご、ごめんなさい!あまりそういうこと言われないので慣れてなくて…」
顔を真っ赤にするたっちゃん。
本当に慣れてないんだろう。
可愛いと言われることは別に嫌ってわけでもなさそうだな。
「その…ありがとう、ございます…」
小さい声でそう呟いた。
「いえいえ。」
「話を戻しますね。私と幻くんは同じ学校の生徒なんです。」
「え?だとするとぼくと同じ学校ってことにもなるけど…学校でたっちゃんみたことないなぁ…」
「それは…」
すると幻が
「それもそうだろう。なにせ多津美は登校してないからな。」
「ーーーー」
なるほど。そういうことか。
登校してないということはなにか理由があるのだろう。
「なんで登校してないの?たっちゃん。」
「あ、あの…それは…」
言いにくい理由なのだろうか。
困っている様子だ。
これならば無理に聞き出すこともあるまい。
「ああ。言いにくいならいいんだ。ごめん。変なこと聞いて。」
「こちらこそごめんなさい。今は話せないけど…いつか…話せる勇気を持つことができたら、そのときに聞いてくれますか?」
彼女は恐る恐る尋ねてきた。
これを拒むことなど誰ができよう。
「もちろんさ。いつでもウェルカムだよ!」
ぼくがそう答えると、たっちゃんの顔には笑顔が取り戻った。