当たり前が嬉しい
15分くらい走った頃だろうか。
さすがのぼくでも体力に限界がきた。
「はあ…はあ…はあ…は」
こんなに走ったのは久しぶりだった。
距離にして、約5kmを走ったはずだ。
それでも頂上には到達することはできていない。
「はあ…な…なんだってこの山はこんなに広いんだよ…」
美少女パワーで加速した俺でさえ息切れするほどなのだ。
山は恐ろしい。
「少し、休憩するか…」
近場にあったベンチに腰掛けた。
「そういえば、お昼ご飯まだ食べてなかったっけ。」
美少女に夢中になるあまり忘れていた。
リュックサックからお弁当箱を取り出す。
お母さんの手作りだ。
結構大きめのの3段重ねの弁当箱である。
お母さんのは料理が上手だ。
山の空気を吸いながら、美味しい美味しいお母さんのお弁当を食べられるなんてぼくはどんなに幸せ者か。
まだ食べてないのに美味しいと断言するあたり、ぼくはお母さんを信頼しているということになるな。
「まあ。食べてみないとわからないよな。」
弁当箱を開けた。
中身は、ご飯、卵焼き、ウインナー、ほうれん草の炒め物、きんぴらごぼう、肉じゃがなどなど…
さまざまな料理が入っていた。
「いただきます。」
両手を合わせ言う。
最初に箸をつけたのは卵焼きだ。
「んん〜!美味しい!」
やはり美味しかった。
学校の昼食時にいつも食べている卵焼きだが、今日のは5割り増しで美味しかった。
それをおかずにご飯を食べる。
冷めたご飯だがお母さんの炊いたご飯は冷めても美味しかった。
「幸せを…幸せを感じるぞ!」
学生の内は当たり前かもしれない母親の作ったお弁当を食べるという行為が、ぼくはたまらなくありがたいことだと思える。
当たり前に感謝をする。
これはとっても立派なことだ。
この当たり前をいつかお母さんに返したいと思った。