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そういうことなら -二重人格帝王ウリオンの伝説  作者: 早猛虎家
第一章:グレゴリウスは怪物だから仕方ない
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第五話 ひとつの決意

グランデールの現状にからめて、主人公グレゴリウスについて話そう。


うーん…本来は、彼の産まれたときから順番に描いていくべきなのかもしれない。

まだ彼のことをほとんど紹介できていないのだから。


だが仕方ない!

ここは話の流れに沿うことにして、王子だった頃のお話はまたの機会にしよう。



さて。


グランデール王国はふたつの王家による微妙な力関係の上で、やじろべえみたいに危うく成り立っている国だったから


どちらの王家にとっても、自分たちが圧勝してまさに唯一の国王となるのでなければ中途半端にバランスを崩すことは嫌がった。


だからグレゴリウスも、教皇に選ばれたとの知らせが届いた時、断ったほうがいいだろうかと一瞬迷った。



片方の王家の出身者が、世界のさまざまな国の人から尊敬される教皇になったら、グランデール王国の絶妙なバランスは必ず崩れるだろうから。



…わたしの祖国は、まだ民間信仰が根強いが、まわりの国々はそうではない。

いろいろな書物を調べると、国王から貧民までを含む全ての国民の、半分以上に聖人由来の名前がついている国がこの一世紀あまりで急激に増えていることがわかる…。



…わたしが教皇になれば、実家には迷惑がかかるかもしれない…。



彼は考えた。


他国の人々は現状、ふたつの王家に対してほぼ同じように礼儀をもって接する。


しかし、グレゴリウスが教皇になれば、世界は彼の実家側を優先するようになるだろう。


そのとき相手は、どう出るだろうか?



…もしも不利な立場に置かれたと気付いた彼らが、破れかぶれになって攻めて来たら困る。窮鼠猫を噛むと言うじゃないか…。



あるいは。


ここは教皇の政治に対する影響力がとても大きい世界だ。

各国の国王に対して、戴冠を許可するのしないのと口をはさむ権力までも、教皇は持っていた。



…戴冠の儀を逆手にとって相手の「王家」は、いまあえて国王が引退し、王子に位を譲ると称してわたしを引きずり出すことだってできる…。



その戴冠を認めれば、王子は晴れて正式なグランデール国王となってしまう。

しかも、そのことを「いままで張り合ってきた」彼の実家側が認めたことになる。


そうなれば、グレゴリウスの実家は国王争いに負けることになる。



国王争いに負けたら、ただの人になるぐらいでは済まされない。

相手の性格しだいでは、一族の皆が虐殺される危険もある。



しかし、戴冠式に招待されて出席を断れば、グレゴリウスが私情を優先しすぎていると、非難されることになるだろう。


そして、戴冠式に出席しておいて即位を認めないわけにはいかない。


さらに、新しい国王に彼が冠をかぶせてやらなければ、教皇の「戴冠を行う」ことの権威が失われてしまうだろうから、屈辱をしのんで儀式を行わなければならない。



…先手を打たれれば必ず負けるという状況だな…。



グレゴリウスは文机のまわりをぐるぐると回った。



戴冠式のほかにも、教皇という彼の地位を政治的に悪用しようと思えば、いくらだって悪いことができてしまう気がした。



しかし彼はすぐさま考え直した。



…この事であの家が滅ぶなら、滅びる運命にあったというだけのことだ…。



…三年前に兄が他界した時も、彼らは危機をしのいだ。

まだツキが残っていれば、今回も持ちこたえるだろう…。



そこで彼は教皇を引き受けた。


いま、ちらっと書いたが例の一ヶ月違いの兄ランディス王子は、なんと15歳の時に亡くなっていた。


こうなるとわかっていたら、グレゴリウスを僧院には預けなかったかもしれない。


ランディスのためにウリオンを追い出したのに、そのランディスがいなくなってしまったのだ。彼らは貴重な手駒を二つも失う羽目になったのだから、むなしい気持ちにもなる。



だが幸いと言うべきか、宮殿では弟たちがすでに三人生まれていた。


しかし、三人とも兄をサポートすべく育てられてきたのでその兄が突然いなくなって、どうしたらよいかわからずおろおろしている。


今のところ外部には混乱を悟られていないが、実に先行きが心配だ。



ところで、兄の葬儀の時にグレゴリウスは、あるものを見たのだが、この話は、またいつか詳しく書くことにしよう。



さて新しい教皇が誕生すると、関係各国の代表たちがお祝いの挨拶に訪れる。



もちろん、グレゴリウスの実家からも、そして対抗する王家からも使節はやって来る。


彼は両方と挨拶しなければならない。



…両家とも、ただの挨拶では終わらないだろう。


…わたしは実家を離れた身だが、いつも王家の出身という肩書きがついて回る。

そのような目で見られている以上、どこへ行ってもわたしが権力争いに巻き込まれることは避けられないのだ…。



彼は、政治的な争いの場面に出くわした場合、もし傍観していたとしても、傍観者とは受け取られない立場になってしまった。



かといって、あからさまに実家を応援すれば、教皇が身内をひいきしすぎている、と言われかねない。



…戦いが始まった…。



彼は思った。


これは静かな戦いだ。


この戦いには戦場もないし、武器も使わない。兵士もいない。


しかし敵はあらゆるところにいる。

そして、いつ襲ってくるかわからない。


味方だと思った者が、次の瞬間には敵になっているかもしれない。



…わたしには、一瞬のスキも許されない…。



覚悟を決めた彼は、知らせを告げに来た僧侶に、優しく微笑みかけ受諾の言葉を伝えた。




ランディスという第一王子に全てを託そうとしたために、グレゴリウスの実家であるグランデール王家はピンチを迎えてしまいました。


しかし、もしグレゴリウスを含めた全ての弟たちを、それぞれが国王になっても困らないように育てていたなら

彼らはバトルを始めて、それはそれで王家はピンチを迎えていたかもしれません。


故郷想いのグレゴリウスは、そのあたりのことをよくわかった上で、今の自分には教皇になる他に選択肢が無いと判断したようです。

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