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風花ーKAZAHANAー  作者: 結城朱琉
8/14

二人の神官

なんだか、誤字脱字すいません・・・。

あと、文章が拙いのはいつものことです・・・。




早くも夏休みが終わった那智学園はいつもよりざわざわしていた。


それもそうだ。


合宿中に行った実技テストの順位が発表されるのだから。


高等部二年から大学部三年までの生徒全員混ぜ合わせた順位だ。


第一グラウンド朝礼台前に立った掲示板に順位と名前が書かれた紙が貼り出されるのは昼だ。


夏休み明け一日目は午前中だけなので、昼過ぎには部活が始まる。だから早々と自分の名前を見つけ出さなくてはいけない。



「たっのしみだなぁー」


どうやら夏休みを満喫したらしい、緩みきった顔をした透が昼を楽しみで堪らないと言った様子で言った。


「どうせ透は真ん中だろ」


「なんだと!!オレの実技の点数を見てそれを言っているのか!?」


「オレと同じくらいじゃん」


「むむ……………」


透と雅史のいつも通りの掛け合いを行哉と月夜と楓でほほえましく眺めた。


「透の実技の点数って?」


「実技は100点満点中50点以上で合格。不合格は再テストなんだけど。まぁ、皆が取る点数といえば60点くらいかな」


雅史が月夜に説明してくれた。


「ついでに、俺の点数は90点だ」


「胸を張るなら行哉の上をいってからにしろ」


「100の上があるわけ無いだろー」


「せめて同じくらいになれよ」


「無理」


行哉は透の隣で苦笑いだ。


そうこうしているうちに先生が来た。これからホームルームだから、それが終われば第一グラウンドへ駆け足だ。


「夏休み明けだから、気が緩んでいる奴もいるようだが、もうすぐテストだ。しっかり勉強するよーに。あと、西の森に近づかぬよう警邏隊(けいらたい)から連絡があったので、近づかない事。以上。では解散」


ざわついた教室を先生が早々と去っていった。


「やっべー。警邏隊だってよ」


「警邏隊?」


「なんだ、東ー。警邏隊も知らないのか?神官と同じくらい有名だぜ?」


「警邏隊っていうのは、まぁ、警察なんだけど。パトロール専門なんだよ」


「雅史の親父さんがまさしくそうだ」


「へぇ」


「神官とはまた違ったカッコ良さだよなぁ。あ、警邏隊って那智学園の卒業生がほとんどだけど、都の外から来るやつも居るんだぜ?」


「実力さえあれば、なれる役職だな」


「行哉なれよ」


「オレは御影になる」


御影になって、月夜が神官だと知ったら行哉はどんな顔をするだろうか、と月夜は考えた。けど、やっぱりな、というような反応をするか、とすぐに結論が出た。それほどまでに行哉は月夜に迫っている。


果たして、卒業までに隠せるかどうか、心配になった月夜であった。


ざわつくのも束の間、誰かが時間を気にして教室を出ると周りのみんなも続いて教室を出た。だから、月夜たちも教室を出た。


第一グラウンドの朝礼台前にはもう既に上級生たちが群れをなしていて、近づけなかった。


「行哉、見えるー?」


この中でも一番長身な行哉が見えないと答えた。


どうやら掻き分けて行くしかないようだ。意を決して月夜が足を踏み出そうとした瞬間目の前に楓が現れた。


「おわっ!?楓」


「はい。月夜様。月夜様は真ん中でしたよ?市之崎様は三十位。寿様は七十四位。金里様は七十五位でした」


「よく・・・この中行けたな・・・」


「小柄なものですから」


それもそうだが、楓の場合基本スキルが高いからでは、と思った月夜は楓にありがとうと忘れず告げた。すると、楓はこの上なく嬉しそうに笑顔で、どういたしまして、と月夜に応えた。


「つか、行哉が三十位とか・・・伊達に学年トップじゃねーなー」


「まだまだだよ」


「ハハ。ご謙遜を」


訓練だけの評価で、三人は百位を切っている。楓は論外として、月夜は自分の順位に少なからず落ち込んだ。仕方ないと思っても、月夜も人の子だ。周りから劣っていると見られるのは嫌だ。人一倍努力をしなくては、と気合いを入れた月夜だった。




「雪ー」


「なんだい?」


「例の件進んだ?」


「昔調べただろう?その見直しと、現在のだいたいの人数を調べてる途中だから、今日中には終わる」


「どうするんだ?」


「どうも。別に悪いことしてるわけじゃないから、放っておいても構わないと思うけど」


「雪は優しいな」


緑色の紅葉を眺めながら、真司は言った。


「月夜はこっちの手の内にあるから向こうもそうそう手を出してこないだろ」


「そうだね」


「叩き潰すなら、月夜がこっちにいる間だ」


「そうだね。・・・というか、真司はそんなに奴らを叩き潰したいのかい?」


「ん。・・・まあ・・・いや・・・その・・・」


いつも威勢の良い真司が言葉を濁し、気まずそうな雰囲気を出すときの理由は雪水が一番よく分かっている。


「ありがとう、真司。でも、心配のし過ぎじゃないのかな?」


「心配は過ぎるくらいが丁度いいんだ。雪は隙がありすぎる」


「ハハ。そうだね」


一体この問答をあと何年続けられるのだろうと、思う。ずっと、がないことを知ったあの時から真司と雪水は一緒にいるが、やはり雪水は、ずっと、があるとは思えないから、真司が雪水の傍を離れた時のことを想像して、一人静かに身震いをする。


「雪」


「うん?」


「また変なこと考えてただろ」


「考えてないよ。それより、真司。そろそろ月夜達が帰ってくる」


「ああ・・・・」


その場を動こうとしない真司に、雪水はくすりと笑う。


「真司。私は全部を守るよ」


「ああ」


「真司はずっと隣にいてくれるんだよね」


「ああ」


「じゃあ、守り切った後は?」


「一緒だろ?」


「そっか。じゃあ、安心だ」


ニコリと雪水が真司に笑顔を向けると、真司は部屋を去った。


ずっとを信じていない者がずっとを口にする。そんな小さな矛盾が胸をキツく締める。


「永遠じゃないだけマシかな」


一人小さく笑って再び書類に目を通し始めた。




夜。梟の鳴き声が森に響く。


「で?どうすんのー」


「夏休み終わったけどー」


「夏休みの間にだいぶ事が進んだから、もうそろそろだな」


「こっちの電車代もー底尽きちゃうんだけどー」


「払えよなー」


「ざけんな。誰が払うかよ。だったら、じっ様にもらえばいいだろが」


「じっ様こわーい」


「そうだそうだー」


「月夜のためって言えばもらえるだろが」


恐い恐いと言う二人に溜息をついた。


「月夜の回収と、神官の神刀の破壊。できたらやっていいぞ」


「月夜の回収は無理っしょ」


「お前やれよ」


「最初からそのつもりだが?」


「はいはい。神刀の破壊ですね、了解」


「りょーかーい。じゃあねー」


去った二人の音はない。鳥も気付かぬ程に自然と溶け合う。


月夜の覚醒が済んだ今、他の神官に用はない。これ以上こちらに深入りされる前に月夜の回収と、邪魔になる神官の数を減らすこと。


「共存を認められなかった弱者は必要ない」


歴史は決して変えられないけど、これからは変えられる。ここで終わっていい我々ではない。


仲間の無念が重たくのしかかる。




学校から帰って来ると雪水がいつもの如く玄関で待っていた。


「ただいまー」


「おかえり」


いつものやりとりに安心するのが分かった。


「あ、真司さんは・・・」


「ああ、それなんだけど、真司は急な仕事が入って、月夜はお休み。だから、今日は私の話に付き合ってくれると嬉しいのだけれど、いいかな?」


「あ、はい」


今日も頑張ろうと張り切っていたので少し拍子抜けだが、雪水と話すということに、違う緊張が月夜の体を強張らせた。


颯爽と着替えて、雪水の部屋へ月夜は向かった。


「いつも、早いね」


屋敷にもだいぶ慣れたので、迷わなくなった。雪水の部屋はやはり、どこか清廉である。


「で、今日話すことは重要なことだから。・・・楓。椿。人払いを」


すると、楓と、雪水の御影だろう椿の気配が少し遠くなった。


「ん。これでよし」


御影を遠ざけ、その上人払い。これほど重要な話、に月夜の背筋がピンと伸びる。


「そんなに緊張しなくてもいいよ。ただの昔話だから。ただ、このことは他言無用でよろしく頼む。ああ、真司になら話しても大丈夫だから」


「はい」


「じゃあ、今の帝の地位について話すよ」













まだまだ終わりへの道のりが遠い・・・・(;'∀')


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