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風花ーKAZAHANAー  作者: 結城朱琉
4/14

月は静かに夢を見る 弐

はいはい(/・ω・)/続きです



放課後になり、各部活動が始まるなので、無意識に弓道場の方へ足を向けようとして、はたと月夜は我に返った。


「東ー。一緒に帰らねー?」


誘ってきたのは透で、行哉や雅史もこちらを見るが、放課後はいつも用事があるんだ、と断った。事実、大事な用事がある。


「ゴメンな」


「大丈夫ってことよ。放課後暇な奴の方が少ないし」


そうなんだ、と思いながら楓と連れ立って、教室を出た。


これから真司に仕事を学ぶんだ、と密かに気合を入れている月夜の耳に、楓が、後ろに篠原様がついてきております、と教えてくれた。


「了解」


神官であることはバレてはいけないから、その手の会話は避ける。それと、皇居地区に入る時の証明書を提示する時に注意だ。鉢巻の証明書は神官のみ。楓のような御影や神官に携わる人は皆お守りのような物に刺繍されている。その他の人は自分が常に身に着けるものに刺繍されている。


歩いている間に光明との距離がどのぐらいかと確かめようとチラッとさりげなく後ろを見た月夜は驚きのあまり思いっきり目を逸らした。


「楓・・・あれは・・・」


「はい。ですが、申し上げては失礼かと・・・」


「いや、言ってあげた方がいいとオレは思うんだけどな」


月夜が後ろを確かめた際そこにいたのは必死に隠れて尾行している光明だけではなく、その隣を堂々と歩く道重と、その他未神官がぞろぞろといた。つまり、必死に隠れている光明の努力は無に帰していた。


やがて、皇居地区の門へとたどり着く。月夜は普通に歩きながらスッと制服の袖を少しまくり上げ、鉢巻の端の刺繍が見えるようにし、警官が確認したのを把握すると早々に袖を下した。一応後ろからは見えないようにしたのだが、大丈夫だっただろうか?と自然と胸の鼓動が早くなる。それは、屋敷に入るまで続いた。


屋敷の門をくぐると、そこには雪水がいた。


「おかえり。月夜君、楓」


「た、ただいま・・・」


「ただいま戻りました」


学校から家に帰ってきて、誰かにただいまというのは何年ぶりだろうかと月夜は考えてしまう。


さあさあ、と屋敷の中に促され、誘導されるがまま屋敷に入る。


「ちゃんと手洗いうがいをしてくださいね」


「あ、はい・・・」


本当にお母さんみたいだ、という言葉を飲み込んで洗面所へと向かう月夜と楓の後ろ姿を見ていた雪水は険しい顔をしていた。



自室に戻った月夜は制服から私服に着替え、真司を探すものの見つからない。一応隣の屋敷の方にも行ったのだが、いなかった。結局自室に戻って学校の宿題を解いているわけだが、捗らない。


「月夜ー、いるかー?」


スパンと障子が勢いよく開いて、その音にビクッと首を竦めた。


「真司さん。障子は丁寧に開けてください。壊れてしまいます」


「はいはいっと。これに着替えろ」


月夜の言葉を軽く流した真司は持っていた服を手渡した。それは、秘色(ひそく)筒袖(つつそで)二藍(ふたあい)色の袴と帯だった。


「なんでですか」


「服合わせなくちゃ、お前が浮くだろが。あと、髪少し上で結え。その長さなら可能だろ」


確かに、現在真司は和服である。動き易いように、二藍色の筒袖に紫色の袴だ。腕に巻かれた紫色の鉢巻が良く似合う。


「ほら、早くしろ。ああ、髪紐は雪の使え。楓、雪に聞いて持ってこい」


一瞬ムッとした楓は立ち上がって雪水の元へ向かった。その間に月夜は着替えた。鉢巻は真司同様腕に巻き、服は弓道着と同じであるから素早く着替えられた。それと同時に楓が部屋に戻ってくる。その手には、葵色の紐に藍色のトンボ玉が端についている髪紐だ。


「雪水様が選んで下さいました。それと、その髪紐は月夜様に差し上げるそうです」


「ありがとう」


後で御礼を言わなくちゃな、と思いながら月夜は自分の髪を結い上げた。


「よし、行くぞ」


黒足袋に藁草履を履いて、意気揚々と真司の後に続いて屋敷を出ようとしたが、光明がいることを月夜は思い出した。


「大丈夫だ。オレがなんとかする」


そう言って、真司が指を鳴らすと屋敷の地面から植物が生えてきて、みるみる大きく高く育ち、東の方へと折れたと思いきや、本来維管束が詰まっているだろうその場所がポッカリ空いて、まるでトンネルのようなものになった。


「ここ通るぞー。早々に目的地に着かないと手遅れになる」


そう言って植物のトンネルの中に入って行った真司の後を追って月夜もまた入った。その後を楓が続く。一定の速度でトンネルの中を走り、目的地に到着するなり、真司は植物を一瞬で消した。


「んで、だ。仕事だ、月夜」


にっこり笑って真司が指差した先には、酒屋があり、その中から喧噪が聞こえてきた。


「仕事って・・・」


「困っている住民は助けなくちゃな」


「でも、何をすれば・・・」


「いいか、よく見とけ」


スタスタと酒屋に近づいた真司はガララと酒屋のドアを開ける。そこには取っ組み合っている男が二人いた。この時間帯にしては席が結構埋まっていたので、それなりに人気の酒屋なのだと分かる。


月夜は真司に置いて行かれないように、任務を邪魔しないよう適度な距離を保つ。


「店長はいるか?」


問うた真司を見た客たちが目を丸くする。(たちま)ち、神官だ、という囁きが聞こえてくる。


男二人を止めようにも止められないというような雰囲気を纏った店長が手を上げて真司に近づいた。


「この状況は?」


二人が酔っぱらって取っ組み合っているなら、こちらで対処。店の出し物ならば一応注意に(とど)めておくのだが、店長の困った顔を見るだけで、どちらだか判別ができている。しかし、確認は必要だ。


「酔いが回ったお客様が暴れ出して、困っています」


「では、我々が引き受けても?」


「お願いします」


「了解いたしました」


激しく取っ組み合っている男二人の振るわれる腕やら足やらをひょいひょいと避ける真司は手錠を二つ取り出し、あっという間に二人の動きを止めてしまった。手が使えないので足で戦おうとする二人の手首にかかっている手錠の鎖の部分を引っ掴んだ真司は引きずるようにして、外まで持ってきた。店の方はこれ以上物が壊れることもないし、人が傷つく心配もないので一安心だ。


さて、外に二人を連れ出した真司は、店の裏方へと回る。さすがに人が往来(おうらい)する道端で説教するのは躊躇(ためら)われるからか、と月夜は思いながら真司の後についていく。どうせこの後は説教でもして終わりかな、という月夜の予想は外れることになる。


正座をさせられた二人は隣同士で、今にも取っ組み合いをしそうなほどに互いを睨みつけていた。その二人の前に仁王立ちする真司と、その斜め後ろに立つ月夜。それぞれの御影は主の声が届く範疇にいる。


「なんで取っ組み合いになったんだ?」


コイツが、と二人同時に話し出して再び睨み合う。仕方ないので、真司が片方ずつ話すよう指名した。二人は別々の席に座っていて、ひょんなことから肩がぶつかったらしい。片方が謝ったものの、機嫌が悪かったもう片方がつっかかったと。酒も入っていたので、歯止めが効かずに取っ組み合った、と。よくある話だ。


「分かった」


そういうなり真司が神刀を出した。何をするつもりなのかと固唾(かたず)を飲んだ月夜はすぐに息を飲んだ。真司が右側にいた男へと神刀を振り上げると、勢いよく振り下ろしたからだ。続けざまに左へ横に斬る。


その場が真っ赤に染まる・・・ことはなかった。神刀が男の体をすり抜けたように、何も飛び散ってはいなかったし、声の一つもなかった。だが、ドサリと二人の男が倒れた。


「ちょ・・・、何・・・して・・・」


「大丈夫だ。気絶してるだけだから。起きたらきっと、爽やかな気持ちだろうな」


それはどうだろう、と月夜は思う。二人は驚きのあまり気絶し、起きたら悪夢だったと思うのではないか。そう思えてならない。


「神刀ってのはな、人を斬る物じゃない。この世には天魔(てんま)ってのがある。人間には多少の悪が必要だ。その悪を天魔って勝手にオレ達が呼んでるんだが・・・・まあ、おいおい学校で習うだろ」


いきなり匙を投げた真司に月夜は掴みかかる。


「いや、今大事なところだったですよね!?教えてくださいよ!!中途半端です!!」


「いやいや。だって、コイツらこのままじゃ・・・」


「楓!!」


呼びつけた楓に男達を酒屋に戻すよう言いつけて、捕まえておいた真司に向き合う。


「で?」


すごい剣幕で問う月夜の手を払って、服を整えた真司は腕を組んで月夜を見下ろす。


「天魔っていう人間の悪は、何かを引き金に暴れ出すんだ。まあ、ストレスとか、逆鱗に触れるものとか、そういうもので簡単に。天魔が支配している間は常識ってのが吹っ飛ぶから何やらかすか分からない。それに素早く対処するのが神官の仕事だ。天魔を斬れるのは神刀だけだから自然と神官が重宝される。・・・・他に聞きたいことは?」


「天魔って目に見えるんですか?」


「神官には見える。神刀の通常時のブレスがあればな」


真司の腕にある紫色と桃色と黒色の丸い石でできたブレスが揺れる。


「これ・・・外れないんですけど・・・」


「ああ。外れない。ただ、天魔の攻撃で取れる時がある。その時は、もう、神官でない時だ。さ、行くぞ。もう一度酒屋に顔出さなくちゃな」


大きな真司の背中を見ながら立ちつくしていた月夜の頭の中を真司の言葉がぐるぐると回る。ポンと肩を叩かれて、楓の顔が見えた。


「月夜様、どうされました?」


「いや、なんでもない」


月夜ももう一度酒屋を目指して歩き出す。そうしている間もぐるぐると言葉が頭の中を反芻(はんすう)する。


”その時は、もう、神官でない時だ”


何故だか、震え出しそうになるほどその言葉に恐怖を抱き、それと同時に歓喜していた。




『 月よ  月よ  どうしてそんなに高いところにおられるのですか  』


『 さあ もっと こちらに寄って 』


『 落ちる雫を拭ってあげる 』


『 そうしたら ほら  みえるでしょう 』


『 ・・・・・・・・・・・・・・・ が  』







うーむ・・・

急な展開かな?


もう少し上手く文章書けたらなあ(;'∀')


まだまだ続くので、よろしくお願いします。


ではでは(/・ω・)/

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