表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

白に囚われる

いつから「ここ」にいるんだろう?




気付いた時には「ここ」にいた。


白い床、白い壁、白い天井。

壁に掛けられた絵画も、装飾品も全て白。

窓から見える景色も白い。


俺は日がな一日中、真っ白な世界で白いベンチに座って窓の外をぼんやり眺めていた。



ここには出口がない。

窓から出ようと、何度か試みた事もある。


サッシにくっついたように、ガラス戸はピクリとも動かない。

ガタガタ揺すろうにも全く動かない。


白い椅子を持ち上げて、叩きつけた時は流石にヒビが入り、ガラスがそこら中に飛び散ったものの、瞬きする間に巻き戻した映像を見るかのように、叩きつける前の状態に戻ってしまった。


思い切って飛び込んだ時は、ガラスがグニャリと歪んで俺を床に吐き出した。


どうにもならない。

今では諦めてぼんやりしている。





ある日、どこからか馨しい香りが漂ってきた。

酷く甘くてクラクラする香りが鼻腔を撫でてくる。


辺りを見回すと、小さなテーブルの上に花が一輪。

白いテーブル、白い花瓶。

そして、みずみずしい華。


にゅうと伸びた茎は、緑。

天を向いて開く花弁は、薄桃色。


そこから放たれる何とも言えない香り。



部屋中に漂う香りを肺いっぱい吸い込んで、俺は立ち上がった。



あれは俺の華だ。



今まで座っていた馴染みのベンチから華に向かって歩き出す。

どんどん強くなる香りに胸がいっぱいになる。


花瓶から華を抜き取ると、その先に今まで無かった扉が出現した。

扉に近付くと自然と開く。



俺はそこに飛び込んだ。



真っ白な部屋から出た世界は、満天の星が空にも地面にも輝く世界。


ふと気が付けば、華は香るのを止めて自ら発光していた。

そんな華を持つ人達があちらこちらから歩いて来る。


年寄り、小さな子ども、若者もいる。

男も女も。




ああ、そうだ。

俺は事故に遭ったんだ。

雨でスリップして乗っていたバイクごと対向車線にはみ出して……






ここは死後の世界か。

こんな世界なら悪くない。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ