第1話 邂逅
少年――バンは国家十字軍本部に向かっていた。バンは本日付で国家十字軍に入隊することが決まっていた。
すると、目の前で少女がこちらに向かってくるのが見えた。おまけにその後ろにはあやしい輩が3、4人少女を追っていた。
少年と少女がすれ違う。すると怒号が聞こえた。
「邪魔だぁガキィ!!そこをどけぇええ!!」
輩たちは少年に向かって剣を振りおろした。少女がとっさに少年の方を振り返る。――危ない!
―――――キーン!!
大きな金属音がこだました。少女は驚いた。そして何より輩たちが一番驚いた。なぜなら、少年は素手で剣を受け止めていたからだ。それも両腕を盾にするように。そしてこの大きな金属音。輩たちは戸惑った。
「ど、どういうことだ・・・?」
「こういうことだよ!」
少年はそう言い、輩のみぞおちを思いっきり殴った。鉛のような鈍い感覚に打たれた輩は思わず膝をついた。そして、少年を見た輩たちは驚いた。
少年の両腕は鉄と化していた。そして両腕の鉄は溶けるかのように形を変え、刀となった。
「き、貴様、能力者・・・!?」
「ああ、そうさ、これでもまだやるのか?」
「ひっ、に、逃げるぞお前ら!」
「大丈夫?」
輩たちが逃げた後、バンは少女に訪ねた。
「先ほどはありがとうございます、私、レイ・ハーネットって言います」
「俺はバンだ。バン・ジクード。それより何で追われてたんだ?」
「それが、わからないんです・・・」
「わからない?」
「はい、何故かわからないんですが、いつもいつも誰かに狙われていて、ここまでずっと逃げてきました」
「そりゃとんだ災難だな」
その時だった。一人の男がこちらに向かってきた。黒い軍服にサングラス、髪はオールバックの男だった。男は尋ねた。
「バン君かな?」
「はい、そうですけど」
「私は国家騎士団第四部隊大佐のライン・ロックスウェザーだ。まぁ、簡単に言えば君の上司にあたる」
「あ、よろしくお願いします!」
バンは深々と頭を下げた。
「よし、とりあえず本部へ案内しよう。来たまえ。それと隣の女の子、君も可愛いから来たまえ」
「あ、はい!」
レイは驚き、反射的に応えた。
そして、3人は国家騎士団本部へ向かうのであった。
――国家騎士団本部、最高司令室。
銀色の髪をした男、彼の名前はラミレス・バルトロウ。31歳の若さにして大将の座に登り詰めた男。グラン元帥の右腕である。
「グラン元帥、例の少女がバン・ジクードと合流しました」
「ほう、ジクード少年か・・・」
「しかしグラン元帥、例の少女を野放しにしておいてよろしいのですか?今すぐ確保すべきでは?」
「今彼女に無理に刺激を与えてはならん。覚醒すれば世界が滅びるからな。今は彼女を泳がせておけ。彼女を囮にして奴らを誘き出すんだ。奴らの持つ‘’対の力‘’を手に入れるためにな」
「わかりました」
「そしてジクード少年はどこに所属するのだ?」
「第四部隊です。隊長はライン大佐ですね。あ、第四部隊と言えば、第五部隊のアン中将からこんな伝言をいただいております。‘’第四部隊に裏切り者がいる‘’と」
「ハッハッハ、さすが、あのクソババァ。なんでも見透かしやがる。しかし、裏切り者っていうのは奴らにほぼ間違いないな」
「じゃあ狙いは例の少女?」
「だろうな。国家騎士団がもう1つの‘’対の力‘’を手中に収めていると知れば、スパイを送り込んでくるだろうな。とりあえず第五部隊にも警戒するよう連絡しろ」
「かしこまりました。あともう1つ、第二部隊からです。西方の町グレンカで七大魔女の一人、ベルフェゴールらしき人物を発見したと」
「うむ。あと第二部隊少年が一人入ったよな?」
「あ、はい。サンタという少年だとか」