遠い音楽
遠い音楽
野外につくられた小さな舞台。私は地面に座ってその舞台を見上げる。
壇上に上がったのはクラウス・ノミ。彼は黙って立っている。
やがて熱く、灼けるような雪のつぶて。
執拗なまでに続く嵐のような吹雪。
やがて私が寒さに震えだした頃。
壇上の彼は人形のように倒れた。
彼は二人の男に引きづられるように舞台から消えた。
次に現れたマリア・カラス。彼女も黙って立っている。
凍えた私の心を暖かい暖気が包み込む。
風の匂いと草の音。
やがて彼女も倒れ。
引きずられて舞台から消えた。
最後に何十人もの人が舞台に上がった。狭い舞台は人で埋め尽くされた。
やはり彼らも声を出さない。
私に聞こえるのは人の息づかい。
虫の声。
水の流れる音。
時々鼻をすする音。
やがて壇上から一人、一人降りていく。
舞台の上には誰もいない。
ついに照明も消えてあたりは闇に包まれてしまった。
一人になった私の心に。
喜びが満たされていた。
PS 最近キューブリックDVDボックスを買ったその嬉しさ故のハイテンションより。ハイホー