声食いのトンネル

　心霊スポットとして知られる「犬鳴トンネル」で、一人の少女・高橋美咲が忽然と姿を消した。これが全ての悲劇の始まりだった。恋人である彼女の行方を案じた矢沢拓也は、単身トンネルへと向かうが、そこで人ならざる恐怖に遭遇。翌朝、彼は極度の恐怖に顔を歪ませた遺体となって発見された。
息子の不可解な死に事件性を確信した母・矢沢佳代子と、娘の失踪の真相を求める父・高橋隆一は、それぞれが遺したノートと日記を手がかりに、独自に調査を開始する。やがて、子供たちが追っていた謎の中心である犬鳴トンネルで、二人の親は運命的に出会う。
当初、我が子を失った深い悲しみと怒りは、互いへの激しい憎悪に向けられた。「あなたの娘が息子を危険に誘った」「あなたの息子さんこそ娘の失踪に関わっている」。互いを責め、二人の溝は決定的になるかと思われた。しかし、子供たちの遺品を交換したことで、衝撃の真実を知る。拓也と美咲は深く愛し合い、この土地に渦巻く不気味な事件の裏に潜む「本当の悪意」に、二人で立ち向かおうとしていたのだ。憎しみを乗り越え、子供たちの遺志を継ぐことを決意した二人は、固い絆で結ばれた"戦友"となった。
共闘を始めた二人は、トンネルの怪談が、新型ドラッグを扱う犯罪組織の隠れ蓑であったことを突き止める。親としての覚悟と執念で、二人は組織の摘発に大きく貢献し、事件は解決に向かうかに見えた。だが、彼らの戦いは終わらない。法では裁けぬ超常の存在、子供たちを直接手にかけた怪異「声喰い様」の存在を、二人は確信していた。
全ての事件が終結した後、子供たちの魂を鎮め、そして奪還するため、佳代子と隆一は再び、二人だけであのトンネルの闇へと、最後の戦いに挑んでいく。