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『花巻そばと私』

「ん〜会議の前に何か食べるかぁ」そう思って何気に入ったのはお蕎麦屋さん。


 石の通路に竹の仕切り、すぐに入った場所を間違えたと気づいた私は普段のフワッとしたイメージからキリッとしたエリートビジネスマンを装った。


「いらっしゃいませ」


 店員の品の良い声が店の雰囲気と相まって高級感をよりいっそう醸し出す。


「花巻そば一つ」


 私はエリートを演じながら890円の一番安い蕎麦を頼んだ。内心、千円以下のメニューがあってほっとした。この花巻そば以外はすべて千円以上だったのだ。どうりで店内にご年配が多いわけだ。


「お待たせしました」


 そばはシンプルなものだった。お椀にそば、つゆ、海苔一枚、以上。

 味オンチの私にはぼったくりにしか思えなかった。


 後悔を噛みしめながら、まずひとくち


 ツルッとした喉越しにカツオだしが効いて、まさに高級どん兵衛を食べているようだった。


 味の基準がカップラーメンの時点で場違いなのがわかる。ただ、脇役だった一枚の海苔がここで一気に主役に躍り出た。箸で触ると溶けるのだ。ただ表現力のない私には「めかぶみたい」としか言えないのが残念なところである。味に関しても伝えたいのは山々だが「歯に付きそう」としか思いつかない。もはや味、関係ない。


 さて、それでは一番の問題に触れるとしよう。実は店員さんがそばと一緒に急須を置いていったのだ。


「コップ忘れてますよ」


 言いかけて私は躊躇した。これ、何が入ってるの?お茶なの?つゆは足りてるし、まさか最後にご飯が出てきてお茶漬けか?


 この得体の知れない急須のおかげですでに食べ終わったが席を立てない。


 頼りの隣のお婆ちゃんは空気を読めず『ザルそば』を頼むし……。


 試しに誰も見ていない事を確認しお椀に入れてみる。




 ジョロ……。


 なんか出た。



お茶ではなさそうだ。つゆにしては色が薄い。

でも、やはりお茶漬けかな?


私は意を決して「ご飯まだ?」と店員に言おうとしたその時、偶然反対側の席に同じものが運ばれ店員はこう言った。


「最後にこちらを入れてお飲みください」














( ・ω・) 飲まねーよ。


私の庶民の声は敷居という壁に阻まれ雑踏の中に消えていった。


おわり

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