婚約破棄を体当たりでぶっ潰せ令嬢
私のお母様が亡くなられてからお父様は再婚をした。
義母と義妹が出来たわ。
「リア!食事抜きだ!全く、ミミリーを虐めたな!」
「お父様、違いますの」
「あ~あ、僕の婚約者が乱暴者だとはな」
「ゲオルト様、信じて下さいませ」
「食事抜きだ」
子爵令嬢なのに食事にも困る毎日だったわ。
お腹がすいてたまらない。
そうだわ。森に行こう・・・魔の森と言われている場所がある。
あそこは誰もいないわ。
「「「ガルガルガル~!」」」
暗い森の中で果物を探す。しかし、魔物がいた。魔獣ケルベロスだ。目が怖い。涎を垂らしているわ。
村人は誰も入らないのには理由があったのね。
まあ、いいわ。生きていても楽しみがない。
このまま楽に死ねるのなら。
「「「キャン!キャン!キャン!」」」(遊んで!遊んで!遊んで!)
「・・・あれ、私を食べないの?」
「「「クゥ~~~~ン」」」(どうしたの?元気ないよ)
・・・・・・
「ワン!ワン!」
「キャン!キャン!キャン!」
しばらくすると、ケルベロスがイノシシを捕ってきてくれた。
「キャン?キャン?」(そうか、生肉ダメ系か?忘れていた)
「ワン!ワン!ワン!」(少し、待っていてね)
しばらくすると、二本足で立つキツネがやってきたわ。
「フン、ほら、フォックスファイヤーだ!」
ボーーーー!
「ヒィ、話せるの?」
「キツネが人語を解せないと誰が決めたんだよ!」
「ヒィ、ごめんなさい。私はリアです」
「フン!俺はキツネ軍師だ」
「あの、それは役職名では?」
「魔物に名前あるわけねえだろうが!」
「ヒィ、ごめんなさい」
「「「ワン!ワン!」」」(ダメだよ。大声だしたら)
「はあ、お前こそワンワンうるさいんだよ!」
「クス・・」
久しぶりに笑ったわ。いつ以来かしら。
「頂くわ・・・美味しい」
それから、ケルベロスがボールを持ってきた。古いボールだわ。
「ワン!ワン!ワン!ワン!」(投げて、投げて!)
「はい、エイ!」
コロコロロ~
すぐに地面に落ちて転がった。
あまり遠くへ飛ばない・・・
しかし、ケルベロスは、大喜びだ。
「「「ワオオオオオーーーーーーン」」」(やったぜ!)
「「「ワン!ワン!ワン!ワン!」」」
こんなに喜んでくれるなんて・・・
それから私はケルベロスちゃんのいる森に行き。食事をごちそうになったり。
遊んだり。
「ハッ!」
ヒュ~ン!
ボールも遠くへ飛ぶようになった。
「「「ワン!ワン!ワン!」」」
「フフフフフ、待て~!」
ケルベロスちゃんと遊び。
お背中に乗せてもらった。
「キャハハ、楽しいわー」
「「「ワン!ワン!」」」(もっと、スピード出して大丈夫?)
「ええ、もっと、お願いしますわ」
そしたら、段々と変わって来た。
分かったのは街に行ったときにゴロツキに絡まれたのがきっかけだ。
「へへへへ、おい、姉ちゃん。いつも森に行くな。俺らと良い事をしようぜ」
「グへへへ、よく見ると可愛いじゃないか?」
全然、怖くない。いつも、ケルベロスちゃんのりりしいお顔を見ているから・・・もしかして、大丈夫かしら。
「フン!」
「なんだ。がに股になったぜ」
「おお、それもいいぜ。グシシシシシシ」
私は足をアーチ状にした。
ケルベロスちゃんと戯れるとき。重心をしっかりしないと体を持って行かれる。
何回も大怪我をして、ケルベロスちゃんはオロオロしましたわ。
その度にキツネ軍師に治してもらった。
そして、ケルベロスちゃんに背中からぶつかる。そうすると怪我はしない。
この感覚で行こう。
【フン!ハー!】
ドカーーーン!
まるで、重い荷車がぶつかったように、ゴロツキ二人は吹き飛んだ。
「「ウワーーーーー」」
フフフ、報告しなければ。
ある日、森に行くと、ケルベロスちゃんはいない。
キツネ軍師も・・・
「ケルベロスちゃん!キツネ軍師――!」
「グスン!グスン!」
私は泣いた。そう言えば一人で狩りが出来るし、調理も出来る・・・・
・・・・・・・・
「・・・ですから、お父様、私を不慮の事故で殺そうと思っても無駄ですわ」
「ウグ、リア・・・いつの間に・・」
「「ヒィ」」
「リア、お義母様と仲直りしましょう」
「そうよ。お義姉様、ドレスあげるから」
「そうだ。リヤ、僕は婚約者だ・・愛の言葉をささやくから、これから毎日、リヤの好きな言葉をささやくよ。何がいい!」
周りには数人の暗殺ギルドの構成員が倒れていた。
婚約破棄をして、絶望したリアを絞殺でゆっくり殺しその顔を皆で楽しもうとしたのだ。
もう、終わっているわ。この家族。私が死んで義妹に爵位を継がせてもね。
「リア、君が子爵家の総領娘だ!父が領地経営を教えてあげる」
母と父の間に何があったか知らない。
その時、王宮から使者がやってきたわ。
今更だわ。
「大公殿下のお出ましでございます」
黒ずくめで、黒髪の大男と痩せた小男がやってきたわ。
初めてなのに、懐かしさを感じる。
それに、初対面なのに、ファーストネームで呼ぶ。
「リア・・よ。我はこの国の大公である。その、妻に所望する」
「おい、アレク!自己紹介をしないか!」
「我はアレクサンドル、32歳、王の弟である。長年、魔女の呪いで魔獣に姿を変えられたのだ」
「俺はフォックス、軍師だ。アレクの元で戦っていたぜ」
そう、貴族令嬢は相手を選べない。
私は16歳、倍のお年の方だけでも決断をした。
私は元家族の前で、カーテシーをした。
「それでは長年お世話になりましたわ」
「「「ヒィ」」」
「リヤ、待て、僕はどうなる!愛を忘れたか?」
「ゲオルト様、私の名はリアでございます。貴方の方から婚約を破棄すると仰いましたから関係はございませんわ」
大公殿下もおっしゃる。
「うむ。貴族位と領地を取り上げるように兄上に進言する」
「ヒヒ、そうさ、リアの化粧料にするのさ」
「「「ヒィ」」」
「なあ、リア、父を見捨てるのか?私はこれからどうすれば良い!」
「自分でお考え下さいませ」
私は大公の妻になった。
陛下、王太子ご夫妻、王子ご夫妻、王女殿下は、私を大歓迎してくれた。
大公殿下は長いこと異形に変えられ森に自ら隠れたという。
呪いを解く研究の間、寂しさのあまり本物の魔物になるのを防いだのは私だと言う。
今となってはあのケルベロスが大公殿下なのかは分からない。
まあ、どうでも良いわ。
「リア、ドレス商と宝石商を呼んだ。好きなのを選べ」
「旦那様が見立てた物が欲しいですわ」
「しかし、我は趣味が悪いぞ」
「実は私、令嬢教育を受けておりませんわ。だから、わかりませんの」
「分かった・・・頑張るぞ!」
まあ、どうでも良いわ。今が大事だわ。
最後までお読み頂き有難うございました。