アタシ達の二戦目
数週間後、2度目のガーゴイルハントの任務があった。今回のガーゴイルの数は6体。数でかなりのディスアドバンテージだ。
リューは分析した。
(数の違いだけではない。敵の連携の質がこの前とは違う。)
リューは戦闘前の打ち合わせの時のミレーヌの言葉を思い出す。
『この前同様、リューは状況を把握できるギリギリまで後ろに下がってなさい。』
だが今のミレーヌは他勢に無勢だ。
(ただ僕は、この前とは少し違う。今なら、僕のGガードはミレーヌのそれの20パーセントくらいの出力がある。それなら、即死はないんじゃ無いだろうか?)リューは考えた。
刹那、ガーゴイルの一体がリューを狙う。ガーゴイルの鋭利な爪が彼の体を引き裂こうとする。
(Gガード!耐えろ!僕の身体!)
リューがGガードを発動した直後、彼の身体は高く宙を舞った。ガーゴイルの攻撃によってそうなったのではない。それはミレーヌの強烈な投げだった。
「邪魔よ!どいてなさい!」
「ガァ!」
かろうじて受け身を取れたが、リューの身体は地面に叩きつけられた。
(急げ、自分!まずは戦況分析を。)
急いで自分を起こしながらリューは考えた。
敵の数は今は4体まで減少。敵味方の数の比の上では、さっきよりはリスクは低いはずだが、ミレーヌに目をやると、肩で息をしている。かなり疲れているように見える。
ミレーヌはすぐ目の前の一体に隙があるのを、見つけた。「一太刀で決める!」エーテルの刀を思い切り振り下ろし、その一体を仕留めた瞬間、背後にもう一体のガーゴイルの気配を感じた。
(囮!?)
ミレーヌがそう思った瞬間には、ガードが間に合わない。ミレーヌの無防備となった背中をガーゴイルの角が突き刺そうとする。次の瞬間、
「グアアアッ!」
吹き飛んだのはリューだった。彼はいち早く敵の囮作戦を察知し、エーテルの風に乗り加速し、ミレーヌとガーゴイルの間に割って入り、Gガードを発動させミレーヌへの攻撃を防いだのだった。。。だが、無我夢中で繰り出した加速とGガードによる急激なエーテル消費は彼のキャパシティをはるかに上回っていた。ハンターはエーテルを消費しすぎると、生命活動の維持すら困難になってしまう。それが今、リューの身体に起きている。加えてガーゴイルからもらった強撃は、彼に強い物理的ダメージを与えた。
吹き飛ばされたリューは、地面に打ち付けられる前に気を失った。受け身を取ることもできず、全身を強打した。
「リュー!この!」
怒りに燃えたミレーヌは残りのうち2体を一気に流れるように斬り払った。ミレーヌはリューの身体に何が起きたか瞬時に察知していた。この怒りは、ガーゴイルに対するものであり、そしてリューを危険な目にあわせてしまった自分に対する怒りだ。
「次、、、!」
ミレーヌが最後のガーゴイルに剣を向けると、それはリューを狙っていた。一方で、彼はまだ気を失っていて動くことができない。
(お願い、間に合って!)
ミレーヌは加速を始める。ガーゴイルが腕を振り上げると同時に彼女の刃がその腕を断ち切った。倒れたガーゴイルの胸に刃を突きつけるとそれは動くのをやめた。
「リュー!」
ミレーヌは呼びかけるがリューの返事はない。