アタシ達は夜を超えて
カミーユを王宮の中庭で見送った後、ミレーヌとリューはルナールの都、エフォールの王宮内で食事をすることになった。アンジェルモアがリューを連れてきたのは王宮の厨房だった。だが厨房内に他に人はいない。二人きりだった。
「あなたの作った料理が食べたいの。アタシに一番最初に作ってくれたホタテの料理、作ってくださる?」
リューは中央都パレのサンセール士官学校の二年生の時、初めてミレーヌのアパートに泊まった冬の日と同じ食材を探し、ホタテ貝のクリームソース、コキーユ サンジャック ア ラ クレームを作った。二人はそれとパンとワインをアンジェルモアが食事する部屋に運んだ。
アンジェルモアの食卓は、王宮の威厳を示しつつも、親しい者数名だけで食事ができる大きさに抑えられていた。幅は四人が二人ずつ向かい合って座るのに十分なほどで、向かい合う距離も遠すぎない。木材は深みのあるマホガニーで、表面は滑らかに磨かれ、控えめな彫刻が施されている。端には細やかな金の装飾が施され、気品を放って輝いていた。テーブルの中央には、銀の燭台が静かに灯を揺らし、光が食卓を優しく照らしている。
「やっぱり、あなたの作るこれが、アタシの一番かな。」
「そこまで喜んでくれるの、とっても嬉しいです、アンジェルモア。」
二人は食事を終えると、アンジェルモアの寝室のドアの前にやってきた。その重厚なドアは、別世界への入り口かのようにリューには思われた。
アンジェルモアはちょっと準備があると言うのでリューが先にシャワーを浴びた。リューはアンジェルモアの大きなベッドに座って彼女がシャワーから出てくるのを待っている。
「お待たせ。」
「!?」リューはアンジェルモアの姿を見て絶句した。
「どうかしら?」
アンジェルモアはエメラルドで装飾された金の首輪をしている。首輪からは左右へと細い白地の布の帯が出ている。その左右の布がアンジェルモアの豊かな乳房を隠すが、布の細さゆえ、少し触れれば中の蕾が露わになってしまいそうだ。下はシースルーの透明に近いミニスカートだ。アンジェルモアのお尻の下側がはみ出すほどのミニだ。その下には申し訳程度に秘部を隠す紐に近いような白の布の下着が見える。
「この世で一番美しいです。アンジェルモア様。」
「あなたにその名前で呼ばれながら、この部屋であなたに抱かれるのをどれほど待ち焦がれたことか、、、。リュー、妾はそなたに伽を願う。」
リューはそれに答え、そっとアンジェルモアをベッドの上に押し倒し、彼女の下着をずらす。
二人はこれまでにない熱い夜を過ごした。時々二人は起きて、ワインを飲み、語り合ってはまたベッドに戻った。
朝の3時ごろになり、アンジェルモアは一人起きた。
「リュー、、、ぐっすり寝てるわね。」
彼女は彼女の普段着に着替えると、神の発行した魔界への通行許可証を手にした。
「待っててね、リュー。こればかりはあなたを巻き込むことができないわ。」
彼女は部屋を出て、王城の厩舎に行き、一頭の馬にまたがり、外へと馬を走らせた。
朝5時ごろ、中央都パレへのトンネルへ後少しと言うところで、アンジェルモアは行手を阻まれた。それは銀竜に乗ったリューだった。
「そろそろ、あなたが僕を置き去りにして動きだす頃かなって思ってました。」リューの声がする。
「アルジョンティヌス!なんで!アリッド空洞に戻るって言ってたわよね!」
「僕がアルジョンティヌスに乗っている時は、我々の思念が同調するのですが、そのうちに僕は思念だけでアルジョンティヌスを呼び出せるようになったのです。あなたが一人で行ってしまったので、急遽戻ってきてもらいました。」
【アタシの速さ、凄いでしょ。】アルジョンティヌスが誇らしげに言う。
「リューはなんで眠っていないの!?」
「ルナールでよく使われる睡眠剤、恐らくワインにでも入れてたのでしょう?こう言うこともあろうかとあらかじめ、その睡眠剤を無効にする薬を飲んでおいたのですよ。こういう事が将来起きるだろうと思っていたからアリアから前もって買ってあったものです。
あなたはご両親が絡む危険な案件になると、僕を関与させないようにしますからね。パレでも同じことがありました。そして、あなたは今日、あの時と同じ寂しそうな顔をしてました。
あの時は、あなたを行かせてしまいましたが、今回はあなたの負けです、アンジェルモア。魔界には一緒に行きましょう!」
「今回の魔界行きは本当に危険な可能性があると思ってるの。あなた、もしアタシ達二人とも帰って来れなかったら、この大陸はどうなるの?シルヴァンとセリスはどうなるの?」
「あなたとの二人の関係、これが僕の全てなのです。僕の人生は、それからしか始まらない。だから、ここでも魔界でも地獄でもずっと僕らは一緒です。
そして、僕たちは絶対に戻ってきて、この大陸のみんなと、子供達と共に生きる。僕たちの幸せってシンプルに追い求められるでしょう?」
「いいわ、一緒に行きましょう。。。
、、、
ありがとう、リュー。あなた、幸せを追い求めるってことを今、言ったわね。でもアタシ、今この瞬間がもう既に幸せよ。」
二人は銀竜に乗り中央都パレの上空にやってきた。銀竜の背中の上で二人は作戦会議を始める。
「大きく二つ問題があるのですよね。まず、あなたのご両親が魔界に取り残されている可能性がある事。もう一つは、最近ガーゴイルとスライムを凶暴化させている原因がそこにいる可能性がある事。今回の魔界行きの目的は具体的にどう設定しますか?」リューが聞く。
「魔界がどれほど危険かわからないのだから、とにかく無事に帰ってくることよ。できるだけ魔界の現地の情報を収集してね。
その上で、もし、パパとママがそこにいて、助けられそうだったら助けるし、異形凶暴化の原因を取り除けそうなら、そうする。でも基本はアタシ達が無事に帰る事に専念しましょう。」
「了解!」
アンジェルモアが両親から譲り受けたペンダントと魔界への通行許可証が共鳴して魔界への入り口の場所をアンジェルモアに伝える。それを頼りに、銀竜は航路を定め、飛び続けた。そしてついに、アンジェルモアとリューはパレの北西部にある森に降り立った。数百年前からあるような大木が二人の前に聳え立つ。
「入り口はここよ!準備は良いかしら?」
「はい。。。」
「神よ!今こそ我らに魔界への扉を開け!」
アンジェルモアがそう言うと、魔界への通行許可証が紫の光を放ちながら、宙に浮く。それは数秒ほど光を強めた。眩しくて一度閉じた目を開くと、通行許可証が消えていて、そこに人がようやく通れるくらいの穴が大木のすぐ前の宙に浮いていた。これが魔界への入り口だ。
「神が通行許可証に書いていたことによると100分しか時間がないわ。このマジックアイテム、絶対砂時計は、どんなに揺らしても、きっかりその100分を教えてくれるわ。
アルジョンティヌス、あなたはこの穴はとてもくぐれないわね。ここで待っていてちょうだい。
リュー、行きましょう!」
「はい!」
そうして、二人は魔界の中へと消えて行った。




