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ヴァレリアン渓谷の戦いの全貌

 こうしてヴァレリアン渓谷の戦いはトープ・シャモ・ルナールの連合軍の勝利に終った。その後連合軍はセルポン県の首都デゼスプワールを制圧した。制圧といっても、軍事政権に長年虐げられていた住民は、連合軍を歓迎した。

 戦いから1ヶ月が経った。これから一週間後に四つの県は和平会議を開く。セルポン県は他の三つの県に分割されるというのが大方の見方であった。

 この日、リューはトープ県の王城に主要人物を集めた。和平会議の事前情報として重要な事を話すのだと言う。


「皆さん、集まってくれてありがとう。特にシャモから遥々お越しくださいましたカミーユ、本当にありがとうございます。我々は多大な犠牲を払いヴァレリアンの戦いに勝利しました。その時、何が起こっていたのか、我々の知りうる情報については我々で共有しておくことが、和平会議の準備としては重要です。それをしておかないと何が各軍の手柄だったのか曖昧になるからです。これについて皆で話して良いでしょうか?」


「意義なし!」意義を唱える者はいなかった。会議室にはリューの他にミレーヌ、近衛部隊隊長エミリー、海賊アリア、太后レティシア、そしてシャモ県の女王カミーユがいる。


「まず、戦闘の初日ですが、自然の防壁とも言えるセナ川の流れに打たれた敵の疲労と、防具をミスリルスプレーで強化したロイヤルガードの活躍で我々はその日を乗り切ったのでした。不思議な事が起き出したのは二日目でした。私の力がとてつもなくみなぎり、超人的な力が出せたのです。これについて思い当たる仮説はあまり無いのですが、強いて言えば、海軍結成の時、アリアから頂いた大人のオモチャのタコとナマコが怪しい気がします。その、少し恥ずかしいのですが、ミレーヌがそれらを擦り付けた場所がとても熱くなったのです。アリア、どうですか?」


(大人のオモチャ!?キャー!?)若きシャモ県女王カミーユは内心穏やかでない。


(ん?大人のオモチャ?この会議、確か、講和を準備するための会議だったはずよね?)皇后レティシアはミケンにシワを寄せた。


「それはご明察です。あれは単なる大人のオモチャではないのです。むしろ、その本性は数ヶ月後に超人的な力を一時的に、それを使われた人に与える知る人ぞ知る魔法生物なのです。お役に立ったようで良かったです。実はアタイ達は別のプレゼントのアイディアがあったけど、ミレーヌがその魔法生物が手に入るなら、それが良いって手紙で教えてくれたのよね、確か。」海賊アリアが答えた。


「ありがとう、アリア。次に三日目です。」


「三日目は確か、敵陣の爆発から始まったのよね。」レティシアが言う。


「そうです。それは私がゴメットの街の夜間活動の得意なラニュイ族のコレールに頼んで仕掛けてもらった爆薬の爆発です。」


「なるほどね。彼らの街、ゴメット、一時期廃れてたけど、持ち直したのよね。」


「ええ、彼らとはよく手紙でやりとりしてます。製鉄の新技術もうまく導入できましたし、トウテツから貰った熱の魔石を用いた温泉の探索にも成功しました。一度街を出ていった人も戻ってきています。」


「よかったわ。さて、戦いに話を戻すと次は、、、」レティシアが話を戻す。


「アルジョンティヌスの登場ですね。アリッド空洞の近くでは毎年大体この時期に雨季がやってくる。一度雨が降ると半月は降り止まない。それだと神との約束で雨の日に出撃できないアルジョンティヌスは来れないはずだった。だけど今年は、観測史上初、雨がすぐに上がりアルジョンティヌスがやって来た。」リューが説明する。


「偶然、、でしょうか?」カミーユが不思議そうにする。


「いや、偶然ではない事をこの場で皆に共有したいのです。あの雨は止んだのは、それが人工的に起こされた雨だったからです。」


「人工の雨!?」一同が驚く。


「どうやってそんな事ができるの?」レティシアが聞く。


「熱の魔石です。エミリー、これについて説明してくれますか?」リューが言う。


「はい、リュー様。私はミレーヌ様の命を受け、熱の魔石を持ってアリッド空洞の近くに行きました。そこで熱の魔石の力で一時期、火山活動の活発化を活発にしました。それによって上昇気流が発生し、近くの海から来た湿気を含んだ空気は気流に乗って雲となり、雨が降ったのです。


私のしたことは、それだけではありません。私達は近衛部隊としての諜報活動として、セルポン県のスパイでアリッド空洞付近の天気を探っていた者をずっとマークしていたのです。その者は雨が降れば伝書鳩を出すはずだと、ミレーヌ様から伺っていました。すると、確かにその通りに、私が雨を降らせた後に彼は伝書鳩を出したのです。そこでミレーヌ様に前もって言われていた通りに、彼が連絡を続けられないように彼を捕獲、逮捕しました。その後、私は再び熱の魔石を使い、今度は火山活動を不活性化しました。すると雲は消えて晴れていったのです。スパイはもう捕獲済みなので、晴れたことはセルポン軍には伝わらないと言うわけです。」


「つまり、アリッド空洞が雨季に入ったと言う誤った情報を、セルポン軍に流したことになるのね。」

レティシアが自分を理解させるかのように言った。


「ここで次のような仮説が成り立ちます。セルポン軍はあらかじめ、銀竜(アルジョンティヌス)の存在と、雨が降ると銀竜(アルジョンティヌス)が出撃できなくなる事を知っていた。そしてアリッド空洞付近の雨季についても知っていた。そして、スパイの放った伝書鳩の情報からアルジョンティヌスが出撃できないと思ったからこそ、絶好のタイミングと思ってトープ県への侵攻を開始した。」リューが解説する。


「と言うことは、ミレーヌあなた、敵がアルジョンティヌスや雨について知っていると言う事を知っていたの?」レティシアが尋ねる。


 ミレーヌは黙っている。


「そう考えるのは少なくとも自然ではあります。ただ、もちろん、ミレーヌはセルポン内部の人間ではないし、」リューが言うと


「シャモ内部の人でもありません。」シャモの女王カミーユが直々に言う。


「と言うと、ミレーヌあなたはルナールと繋がりがあったのですか?」レティシアが聞く。


 ミレーヌはまだ黙っている。


「母上、まずはその質問は全部の謎について話した後にしましょう。最後の謎はルナール軍が何故トープ軍の味方についたかと言うことです。私はルナール軍指揮官アガサと少し戦場で話しました。彼女は僕がリュー ベルモントである事を知っていたのです。初対面なのに。そして、僕が彼女に何故僕がリュー ベルモントだと思ったのか聞くと彼女はこう答えたのです。『伝説の守護獣に乗っているから』と。これは少しおかしいように聞こえました。アルジョンティヌスを初めて見た人は単にドラゴンを見たと思うだけでしょう。見た目からは守護獣は連想されない。確かにアルジョンティヌスは二匹の守護獣のうちの一匹なのですが。


そう考えると、ルナール軍にトープ県にまつわる重要情報が筒抜けだったと考えられます。例えば、ルナール軍指揮官アガサはミレーヌから情報を得ていた可能性があります。


一方で、ガルガリオンは何故、彼にとっては突拍子もないアリッド空洞周辺の雨季の話や銀竜(アルジョンティヌス)が雨になると出撃できない事について信じる気になったのでしょうか?


次のように仮定すると辻褄は合います。ガルガリオンはルナール県の大王アンジェルモアに守護獣の存在を聞き、雨季にアルジョンティヌスが出撃できない事も聞いた。同盟関係にあるルナールの大王の言葉だからこそ、ガルガリオンはその情報を信じた。当然、大王はルナール軍にも同じ情報を与えていた。その上で大王は元からセルポン軍を裏切り滅ぼすつもりで、今回の侵攻にルナール軍をセルポンの援軍を装って送り込んだ。ルナール軍総大将のアガサにそう命令をできる人物は大王一人くらいのものでしょう。だから今回のアルジョンティヌスに関連した情報のルナールへの伝達には大王アンジェルモアも絡んでいるはずです。」


「ちょっと待って、それだとおかしいわ。ミレーヌと大王アンジェルモアが二人とも、今言ってた情報のやりとりに絡んでいると仮定しましょう。アンジェルモアはそこまでミレーヌの事を信用できるものなのかしら?だってミレーヌは、アンジェルモアの会ったこともないエミリー達に、これまたアンジェルモアの見た事もないキーアイテム、熱の魔石の使用を任せているのよ。それに今回は幸い連合軍が勝ったけど、トープやシャモに強い信頼を置いていないととてもじゃないけど軍事強国のセルポンを裏切るなんてできないわ。その点に関し、ミレーヌにアンジェルモアを説得させることなんてできるのかしら?」アリアが言う。


「そうなのです。ミレーヌと大王アンジェルモアが別人だと考えると、今回の戦に勝ったことが説明し難い。。。一方で同一人物だったとすると辻褄が合う。


そろそろ話をしてくれますか、ミレーヌ?

いや、、、大王アンジェルモアよ。」


リューがそう言うとミレーヌは笑みを浮かべた。


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