アタシ達の戦争 ヴァレリアン渓谷の戦い その2
開戦二日目の夜
「皆さん!明日は、ロイヤルガードを前線に置く戦略は止めて、全軍で戦います!
いいニュースがあります!トープ海軍の活躍を伝書鳩が知らせてくれました。セルポン県北部の港町、マガトーを海軍が占拠しました。北部戦線は、これによってシャモ軍とトープ海軍の協力の下、優勢な状況となっています!」リューが演説する。
「うおおおおおおっ!」と兵士の間に雄叫びが上がる。
戦っているのは自分たちだけではないのだ。皆がそれに感動した。
「我らも必ずセルポン軍を追い払うぞ!」
「エイエイオー!」
皆、自分達を鼓舞して勝利を誓っている。だが数の上での不利は明らかだった。半分の者は、ヴァレリアン渓谷での勝利をそれでも信じたし、それ以外の半分も、万が一我々が破れたとしても、トープ海軍、空軍つまり銀竜アルジョンティヌス、トープの民、そしてシャモ軍が最後にセルポン軍の息の根を止めると、最終的な勝利を信じていた。
リューはまだミレーヌの言葉を信じていた。アルジョンティヌスは、いつかここにやってきて、自分らは勝つと信じていた。ただ過去の天気のデータでは、アリッド空洞付近は雨季に入れば雨が半月は止まない。今回も、もしそうだとアルジョンティヌスは来れない。不確かに取られ、混乱や士気の低下を生じる可能性は高かったので、アルジョンティヌスがやってくるとは皆には言えなかったが、ミレーヌへの絶対的な信頼はリューの中にあったのだ。そして夜が明けた。
戦の三日目が始まった。
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各軍の生存数 開戦三日目 八月十一日 9:00
トープ軍
2,250人 指揮官:リュー ベルモント
うち、ロイヤルガード250人
セルポン軍
9,000人
前列4,500人
後列4,500人 指揮官:ガルガリオン コルドン
ルナール軍 (セルポン軍の同盟軍)
5,000人 指揮官:アガサ セイエ
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敵は昨日と同様に数にものを言わせて、セナ川を強行突破しようと言う考えだ。今日最初に川を渡ったセルポン軍の兵士をトープ軍が迎え撃とうとしたその時だ。大きな爆発音が川の向こうでした。爆発に数百名のセルポン兵が巻き込まれた。
すかさずリューが吠える。
「皆の者、見よ!これは神の啓示である。我々はセルポン軍を倒すのだ!」
「うおおおおおおおおおおおっ!」
軍の士気が上がった。もちろんこれは神の仕業などではなかった。神の啓示と言うのは、リューが考えた現場を鼓舞するための仕込みだった。爆発したのは、トープ県のゴメットの街のラニュイ族の族長コレール達が夜間に仕掛けた爆薬である。サンラザル大陸の今の時代の普通の人間なら、夜間の戦闘は何がなんだかわからなくなるので、戦闘を夜に続けることは普通しない。しかし、夜に活動するラニュイ族は普段鉱山で使っている爆薬を敵陣にこっそりと仕掛けるくらいは造作なかった。
敵軍はこの爆発で一時怯んだが、再び攻勢を強めた。一昨日より昨日、昨日よりも今日の方が敵の攻勢が厳しくなっているのだった。午後になると防御力がミスリルスプレーで5倍に強化されているロイヤルガードの人数も随分減り、トープ軍はついに窮地に立たされた。
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各軍の生存数 開戦三日目 八月十一日 13:30
トープ軍
1,650人 指揮官:リュー ベルモント
うち、ロイヤルガード150人
セルポン軍
7,000人
前列2,500人
後列4,500人 指揮官:ガルガリオン コルドン
ルナール軍 (セルポン軍の同盟軍)
5,000人 指揮官:アガサ セイエ
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そこに大きな影が後ろからやってきた!それは最前線で戦うリューの目の前にやってきて、近くの20人ほどの敵兵を一気になぎ払った。大きく翼を広げるそれは、見間違える事なく、銀竜だった。
【遅れてしまったわね!昨日まで雨が降ってたのよ!】
「アルジョンティヌス!」リューが叫ぶ。
【さあ、一気に敵の本陣へ突っ込むわよ!】アルジョンティヌスはノリノリだ。
「ここの指揮は私が引き受けます。行きなさい!リュー!」
そう言ったのはリューの母で太后のレティシアだった。彼女は王城からはるばるやってきたのだ。
レティシアの到着にトープ軍の士気は再度上がった。レティシアは前回のセルポン軍の侵攻を退けた救国のヒロインで、彼女も名将なのだ。
「ドラゴンの上から戦うなら、こちらの方がいいでしょう。持っていきなさい!」
レティシアは銀の槍をリューに渡した。
「ミレーヌは無事、出産しました。あなたの子、セリス ベルモントも元気です!何がなんでも無事に勝って帰りますよ、リュー!」レティシアがそう言うと、現場は更に活気づいた!
「母上、みんな、ご無事で!行くぞ!僕たちは絶対に勝つ!」
「おおおおおおおお!」
皆の雄叫びの中、アルジョンティヌスにまたがったリューは、敵の本陣へと飛び立っていった。




