アタシ達の戦争 ヴァレリアン渓谷の戦い その1
トープ県とシャモ県が不可侵条約を結んだ2ヶ月後の事だった。戦争が始まった。突如としてセルポン軍は、県境付近を超えてトープに侵攻を始めたのだ。このままでは、いくつかの街が占領されてしまう。
セルポン軍は今回はその75%をトープに向けている。残りの25%はシャモ県との国境沿いに展開し、シャモ県の領土を脅かした。シャモ軍はこれを迎え撃ち、セルポン軍の更なる侵入を防いでいる。
更にトープ軍にとっては都合の悪いことに、セルポン軍と同盟を結んでいるルナールも軍隊を派遣している。これは今回の戦争の兵力差を決定的にしている。
その頃、ミレーヌは第二子を身ごもっていて、そろそろ、その子が産まれそうなところだった。セルポンの侵攻が始まったのと同じ日に陣痛が始まった。本当にもうすぐ産まれる。ミレーヌはそれに集中しなければならない一方で、リューは今すぐ前線に行かなくてはならない。ミレーヌはリューの耳元で、彼に戦いの前の最後の言葉を囁いた。それを聞くとリューはすぐに前線へと馬を走らせた。
なぜだか、近衛隊長のエミリーは見当たらない。リューはエミリー無しでヴァレリアン渓谷に展開しているトープ軍の前線にたどり着いた。
リューは作戦会議をしながらも、ミレーヌの言葉を思い出している。リューにミレーヌが囁いたのは次の言葉だ。
「銀竜は必ず来る。それを信じて最初はどれだけ苦しくても戦いを続けて。」
だが、前線でリューを待ち受けていた情報はそれとは真逆の事を支持するものだった。アリッド空洞の付近で昨日から、雨が降っているという知らせが届いていたのである。銀竜は神との約束で、雨の日は外に出れないのだった。不幸なことに、今回の雨というのは特別な意味があった。毎年大体この時期には、一度雨が降ると20日間は雨が降り止まないと言う短い雨季が、普段は雨の降らないアリッド空洞の付近では起こるのだ。つまり銀竜は次の19日くらいはリューに合流できない。つまり、トープ軍は空軍を使えず、セルポン軍にとっては絶好のチャンスなのだ。
(タイミングが悪すぎる。一旦退却するか?だがミレーヌの言葉がある。なぜミレーヌは 銀竜が来るか来ないかと言う話題を選んだのか?何かあるに違いない。だが問題はどうやってセルポン軍を凌ぐかだ。兵力差がありすぎる。)
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各軍の生存数 開戦初日 八月九日 9:00
トープ軍
2,500人 指揮官:リュー ベルモント
うち、ロイヤルガード500人
セルポン軍
12,000人
前列6,000人
後列6,000人 指揮官:ガルガリオン コルドン
ルナール軍 (セルポン軍の同盟軍)
5,000人 指揮官:アガサ セイエ
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トープ軍とセルポン軍で5倍近くの兵力差がある上に、ルナール軍とも戦わなければならないのだ。
「一旦退き、銀竜が出て来れるのを待ち、本格的に反撃をすると言う戦略も考えられます。」参謀が提案する。
リューにも、それが素直な戦略であるようにも思えたが、リューは戦う事を選んだ。
「いえ、戦いましょう。いつかは戦わないといけない。一旦退却してしまうと、ここヴァレリアン渓谷に近い街は一旦占領されてしまうでしょう。それを避けるべきです。退却すると、こちらの士気が下がり、敵の士気が上がるでしょう。それを避けましょう。
ほぼ逆の戦略で行きましょう。私と私直属のロイヤルガード500人がセナ川のこちら岸で敵を迎えうちます。ロイヤルガードの防具はシャモ県から購入したミスリルスプレーが塗ってあって防御力が約5倍に増強されています。言わば、攻めながら防御すると言うわけです。」
指揮官である王自身が突撃していくと言う作戦を取るので、トープ軍の士気は上がった。
セルポン軍は、セナ川を渡り始めた。川を渡った敵軍の兵士は疲労状態にあるのだが、渡ってくる兵士数が半端ない。数で押してこようと言う作戦だ。人を人として扱わず、コマのように思っているかのような作戦だ。
リューのロイヤルガードは、川を渡った兵を次々に撃破していく。だが、数で圧倒され、少なからずの犠牲が出てしまう。だがなんとか一日、セルポン軍の猛攻をトープ軍は防ぎきった。
ミスリルスプレーの効果の有無は、使用者の生死に依存するようだった。つまりミスリルスプレーが噴霧された防具は、敵が回収しても味方が回収しても、元の装備者が死んでしまってたなら、防御力アップの効果は切れているようだった。
戦いは二日目に突入した。
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各軍の生存数 開戦二日目 八月十日 9:00
トープ軍
2,400人 指揮官:リュー ベルモント
うち、ロイヤルガード400人
セルポン軍
11,000人
前列5,000人
後列6,000人 指揮官:ガルガリオン コルドン
ルナール軍 (セルポン軍の同盟軍)
5,000人 指揮官:アガサ セイエ
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ここでリューの体に異変が起きた。体の底から力がみなぎってくるのだった。その時は、なぜだかはわからなかった。
二日目もリュー達は同じ作戦をとった。つまり指揮官突撃だ。指揮官の戦闘力が上がったのだから、これはリューには妥当に思えた。事実、人間離れしたような力で敵をみるみると倒していく指揮官の姿に、ロイヤルガードの士気は上がった。だが敵軍もセナ川を超えて攻撃に参加する人数を増やしてきた。これによって二日目の戦が終わる頃には、ロイヤルガードは開戦前の半分までに人数が減ってしまった。
一方セルポン軍は多大な被害を出したが、人数上での優勢は揺らがなかった。セルポン軍は前列と後列に分かれていたが、後列の兵のうち1500人が前列に送り込まれた。指揮官のセルポン県の軍事政権の総統ガルガリオン コルドンはまだ余裕の表情をしていた。
ルナール軍はトープ軍から見てセナ川の向こうの右手のアタカ山の上に待機を続けていた。
戦いは三日目に突入した。
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各軍の生存数 開戦三日目 八月十一日 9:00
トープ軍
2,250人 指揮官:リュー ベルモント
うち、ロイヤルガード250人
セルポン軍
9,000人
前列4,500人
後列4,500人 指揮官:ガルガリオン コルドン
ルナール軍 (セルポン軍の同盟軍)
5,000人 指揮官:アガサ セイエ
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