アタシ達の特命任務 神の使いの銀竜編 その1
リューとミレーヌはトープ県南西部のアリッド空洞にやって来た。ここにいるトープ県王家の二匹目の守護獣、銀竜、アルジョンティヌスの協力を得るためにやって来たのである。
これは陸海空軍の拡大のための皇太子夫妻だけが行えるの特命任務の一環なのだ。陸海空軍の3つの軍のうち少なくとも2つの拡大に成功すれば、シャモ県の女王カミーユ セドゥーが外交交渉の場に再び姿を現すと言う見込みがあっての事だ。
海軍の創設は海賊アリアの協力を得たことで成功する見込みだ。陸軍増強は攻撃力増強の加護を与える王家の一匹目の守護獣トウテツを頼みとしたが、今回トウテツはゴメットの街の住人の生贄を必要としたので、リュー達はそれを諦めた。残るは銀竜の協力を得て空軍、飛龍隊を結成すると言う望みがあるのみだった。
アリッド空洞があるこの場所は海から近い。近くには火山が活動しており、アリッド空洞自体は砂漠に囲まれている。リュー達は砂漠を遥々超えてここまでやって来たのである。
リューはアリッド空洞の入り口で、王家の者だけが解けるその封印を解いた。
中に入ると確かにそれは空洞だった。アリッド空洞は半径50メートルほどの円柱状の巨大な空洞で高さは400メートルほどある。一番上は銀竜が外に出れるように穴が空いている。
リュー達が驚いたのは空洞が下にも続いていると言う点だ。この空洞の下はどこまで続いているのであろうか?まるで底が見えない。
「地獄の底まで続いているんじゃないかしら?」とミレーヌが軽口を叩く。
トープ王家、ベルモント家の伝承によると銀竜は空洞の最上部にいるはずだ。入り口を入ってすぐ目の前は底なしの空洞、右手の方に螺旋階段状の足場が続いていた。この足場を登って空洞の内壁の淵伝いに登っていけば銀竜に会えるのだろう。
早速、リューとミレーヌは螺旋階段を登り始めた。
「オナラ、しないでよね。あなたが先に階段を登ってるんだから、ちょうどアタシの顔にオナラがかかっちゃうでしょ。」
「お腹の調子が良いから、大丈夫ですよ。」
2人がそんな掛け合いをしていた時だった。上から何かが飛んできた。それはワイバーンだった。体長5メートルくらいの大型だ。
ワイバーンが2人めがけて突っ込んでくる。2人はかろうじて、螺旋階段の上方へと素早く移動し、この突撃を辛くも回避した。ワイバーンが突っ込んだ空洞の内壁が崩れる。リュー達の乗っている螺旋階段が無事だったのが不幸中の幸いだった。
「ジャベリン!」リューは王家のマジックアイテムの腕輪、ジャベリンを使用した!飛行する槍が召喚され、ワイバーンの腹部を直撃する。ジャベリンは3回まで使用可能で、トウテツ探しの時に一回目を使っており、今回の使用は2回目だった。
「グエエ!」と言いながらワイバーンは下へと落ちていった。
「大丈夫?ミレーヌ?」リューが聞く。
「ええ、平気よ。変なのがまた出てこないうちに先を急ぎましょう。」
2人は上まで螺旋階段を上まで登って行った。空洞の上が空いているので少しずつ明るさが増していった。最上部付近に至ると銀竜がいるらしき場所が下から見える。
螺旋階段の最上部からは空洞の中心部を通って向こう岸へと空中の足場が水平に伸びている。向こう岸の方は行き止まりになっているのが下からでもわかる。一方で、その空中の足場は空洞の中央部では円形のステージのようになっていた。おそらく銀竜がいるのは、そこだ。
リューとミレーヌは、螺旋階段を登り続け、そこに到達した。空中の足場を歩いていき、空洞中央部の円形のステージまで歩いていく。
(強風でも吹けば真っ逆様だな。)リューは思った。
ステージの中央まで来たが銀竜の姿は見えない。
「神の使い銀竜よ。私はベルモント家の皇太子、リュー ベルモントだ。あなたの力をお借りしたい!」
リューがそう言うと上の方からのはばたきの音が聞こえて来た。それとともにすごい風が巻き起こった。ミレーヌとリューはお互いを支え合い、地面も掴む事で、吹き飛ばされるのを防いだ。銀竜はステージ上に降り立ち、リューに向かって言った。
【誰よ、アタシの名前を呼んでるのは?】銀竜が言う、神竜に数えられる銀竜に特に性別は無いが、人間で言えば女性のような喋り方をしていた。
「初めまして、アルジョンティヌス!私はリュー・ベルモントです。トープは今外交的に危機的な状況にある。我々にはあなたの力が必要なのです。力をお貸しください。」
【それで、あなたがアタシを頼ってきたと。。。
!リューと言ったわね。その顔をよくアタシに見せて!】
リューは銀竜の近づいた。
【あなたやっぱり!アントワーヌにそっくり。これはきっと遺伝ね。アントワーヌとアタシは、昔のトープに侵略してきた外国の軍隊をよく一緒に追い払ったり、或いはトープの人が建物を建てる手助けを一緒にしたりしたわ。今でも懐かしい!充実した日々だったわ。】
アントワーヌとはリューの曽祖父にあたる人物だ。
「私の曽祖父がお世話になりました。ありがとうございます。」
【あら、そちらにいらっしゃるのは、どちら様かしら?ご紹介してくださらない?】
「妻のミレーヌです。」
「ミレーヌ カルノです。」
2人は言った。
【なるほど。】
そう言うと銀竜はジローっとミレーヌを見つめた。
【立派で志しの高い人ではありそうね。でもトープの人では無さそうね、まあ、別に良いけど。それはそれとして、アタシの見立てでは、あなた達の愛こそが、あなた達の成功の鍵。それがある事を示せなければ私が力を貸す価値は無いわね。それがないとあなた達はどのみちうまくいかないのだから。
アタシの目の前で、あなた達、愛し合いなさい!そしてあなた達の愛を示しなさい!】
「愛し合うって、どうすれば良いのですか?」リューが訊く。
【あなた一国を背負う者なら、自分で考えなさい。ノーヒント。】
ちょっとちょっとと、ミレーヌがリューを呼んだ。ヒソヒソ話の作戦会議が始まる。
「愛し合うって言ったら、アレしかないでしょ。」
「アレ?」
「アタシ達のいつもよくやるアレよ。夫婦の営みよ。」
「!?」
「全く、誰かさんに似てエッチな竜ね。でもこれが試練なら、さっさとやるわよ!」
「ええっ!」とリューが言った時には、すでにミレーヌは半分服を脱いでいた。
(そうだ、ミレーヌの考えを信じよう!)リューも遅れを取らないように服を脱いだ。
2人は服を丁寧に畳んで置いた。服を置き終わって、リューが見上げるとそこにミレーヌがいた。
空洞の上空から微かに指す光の中にいるミレーヌは美しかった。リューにとっては1人の女神のように見えた。いつも見ているのに、今日見ると、昨日までは捉えきれていなかった一面があったかのように、彼女の美しさをまた再発見した。
「いつも通りにしましょう。」ミレーヌが言う。
「はい、ミレーヌ。」
リューはミレーヌに近づき手を取り、その胸にキスをしようとしたその時だった。ステージの下から風が舞い上がってきた。何物かが急速に接近してきたのだった!




