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アタシ達の特命任務 トウテツ編 その1

 ここはトープ県南部の鉄鉱山の街ゴメット。トープ県の南部は、森の豊かな北部とはかなり気候が異なる。草原や岩場、火山地帯、そして砂漠が拡がる。この街の周りもゴツゴツとした岩場が多く、その中に鉄鉱山への入り口がいくつかある。


 この鉄鉱山の街ゴメットにはラニュイ族が住む。彼らには1日の活動をし始めるのが夜と言う特徴がある。夜に起床して昼に寝ている一族なのである。鉄鉱山には夜に潜る方が、眩しさの差がその中と外で違いが少ない。その事が彼らの目にとっては良いので、人がそうし始めたのだと言う。


 ミレーヌとリューは、この街にやってきた。この街の近くにある洞窟、オルドルの洞窟にはベルモント家の二匹の守護獣のうち一匹、トウテツが住んでいる。トウテツに会い、トープの陸軍増強のための加護を得ると言うのが目的だ。


 伝説によると多くの兵や護衛を引き連れて守護獣に会いに行くのは王家のものでも無礼ということになっており、ミレーヌ達は2人の特命任務チームとして来ている。トウテツの加護を受けるためには王家の者がトウテツと直接話すしかない。また、オルドルの洞窟の入り口の封印は王族の直系のリューにしか解けない。


 オルドルの洞窟の内部をどのように進めばトウテツに会えるのかということは、ラニュイ族の族長が代々伝承として覚えている。だからまず族長に会う必要があった。


「今が夜っていうのもあるけど、この街、少し寂れつつある様子が窺えるわね。。」ミレーヌが言う。


 今は夜で、人がいる家には灯りがついているが、灯りのついていない家が30パーセントはあるように見受けられ、そういう家に限って、窓についた砂漠から飛んできた砂が落とされていないとか、入り口のドアが空いていて中がもぬけのからになっているのが見えるとか、とにかく人気(ひとけ)がない。それらは、棄てられた家のようにミレーヌ達には見えたのだった。


 首長の家にミレーヌ達は到着した。右手の方の手前に2本の木が立っており、その間にハンモックがかかっていて老人が寝そべっている。


「なんじゃい、夜っぱらから騒々しい。」


 ラニュイ族は、昼夜逆転しているので、朝っぱらに対応する言葉が夜っぱらなのである。


「こんばんは、トープ県皇太子のリュー ベルモントです。ラニュイ族の族長を探しています。族長様でいらっしゃいますか?」


「うんにゃ、違う。ワシは元族長のガトーじゃ。今の族長はワシの孫、コレールじゃ。今、この家の中にいるから、ついて来なされ。」


 中に入ると、その大きな家の中に20人ほどの人が集まっていた。彼らの目の前で、彼らに向かい話をしている1人の男がいた。それがおそらくコレールなのだろう。


 部屋の脇には鉄鉱山で働くための個人用装備が人数分置いてある。今日はこれから仕事に行くところなのだろう。


「なんだ、くそジジイ!会議中は入ってくるなと言っておいただろうが!」


「まあ、そう怒るなコレール。こちら、トープの皇太子様じゃぞ。」


「!?皇太子だと!」


「リュー ベルモントです。よろしく、コレール。」と言いつつ、リューが手を差し出す。


「おっと、アンタと握手する手なんてねえよ、ケッ。どの面下げてここにやって来てんだよ!」コレールが怒鳴る。


「こりゃ、コレール、無礼じゃぞ!ちゃんと皇太子様にお答えせんかい!」


「嫌だね。俺らはこいつのせいで、大損害を被ってんだ!」


「どう言う事だか話してくれますか、コレール?」リューが尋ねた。


「お前らが始めた鉄鉱石の精錬の技術革新、それがシゾーの街で大成功しちまった。そして新しい鉱脈がシゾーの街の近くで見つかったと来た。原材料の産出から精錬まで、シゾーがあっという間にトープの中心になり、そのせいでこちとら、商売あがったりなんだよ!」


「ちょっと待って欲しい。ゴメットの街とシゾーの街の両方で新技術を導入する事を我々は提案した。ゴメットの街には、粘り強く何度も提案した。だが昔ながらのやり方を続けたいと言うゴメット側が、我々の言葉を一度も聞き入れなかったと言うのが事実のはずです。」リューが説明した。


「うるせえ、稼ぎが少なくなって、貧しい奴が増えてんだぞ!少なからぬ者が街を出ていった!責任を取れ!」


「何よ、自分たちの判断が招いた事でもあるのに一方的に責任をこっちに押し付けようって言うの?そんなのただの八つ当たりじゃない!それにシゾーの街の成功を受けて、その後もアタシ達は使者を送ったけど、全ての対話を拒否して来たのはあなたたちでしょ!」ミレーヌが言う。


「なんだこの女は!」


「私の妻、皇太子妃のミレーヌです。」


 リューにそう言われてリューを見たコレールはビクッとした。口では言われなかったが、私の妻に手を出したら絶対に許さないと言う鋭い眼光で睨まれたような気がして、一瞬、怖気付いたのだった。


 コレールがハッと気づくと、リューは普通の目でコレールを見ていた。


「こりゃこりゃ、皇太子殿下は何か要件があり、ここにおいでなのじゃろ。さっさとそれをお伺いせんかい、コレール。」ガトーが促す。


「チッ、なんだってんだよ。」


「この地にいる我が家の守護獣と対話し、その加護を得たい。その加護が、トープの周りにある他の県との戦争を起こさないために必要なのです。」 


 伝説によれば、トウテツの加護は、兵士の攻撃力を2倍か3倍くらいにする。この加護さえあれば兵士数で劣るトープでも他の県と陸軍の兵力で渡り合えるのは予想できた。


「ラニュイ族の族長は代々、伝承として洞窟内でどのように進んで行けばトウテツに会えるのかを覚えていると聞きます。コレールさん、あなたにはどうか私達をトウテツの所まで案内して欲しい。」


「、、、嫌だね。ジジイが行けよ。伝承は知っているんだろ。ジジイがオヤジに教え、オヤジが俺に教えたんだから。」


「それがワシも歳での。すっかり伝承にあるトウテツへの道の記憶がなくなってしまっておる。それに、道は長かったことは覚えておるが、この歳で、トウテツまで辿り着くのは肉体的にも無理そうじゃ。お前さんが行く他ないぞ、コレール。トープの一大事なのじゃぞ、力を貸さんかい!」


「チッ、嫌だって言っているだろうが!」


「ワシらの一家が族長としてやって来れたのも、鉄鉱山の利権の我々に託したベルモント家のおかげじゃろうが!」


「へっ、ご先祖のことを持ち出されたら、俺も断りにくいか。だがな、リューとか言ったな、テメーは気に食わねえ。そうだな、、、こちとら、テメーらの政策には本当にムシャクシャしてんだ。俺の気の済むまで俺に殴られろ。そうしたら、一緒に行ってやってもいいぜ。」


「そうか、それは大筋で構わないが、こちらの提案も一つ呑んでもらいたい。トウテツに会った後には、我々とこのゴメットの街の地域の再開発について一緒に取り組んでもらいたい。このままでは、一層、生活に困るのは街の住人だ。そのためには、今までのやり方を変える必要があるだろう。」リューが言った。


「ふん、そっちから注文追加か。面白え。じゃあ殴る量を2倍にさせろ。」


「、、、構わない。」リューはそう答えた。

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