アタシ達の特命任務 作戦会議編
ミレーヌとリューは彼らの23歳の九月にトープ県にやってきて、結婚したのはその次の月の10月だった。
結婚の夜、二人は初めて二人の間に何も遮るものがない状態で何度も結ばれた。その後10ヶ月して二人の第一子、シルヴァン ベルモントが産声を上げた。
それから一年が過ぎ、シルヴァンは、元気に育っていった。
この間にリューとミレーヌは皇太子と皇太子妃として、実務を通じてトープ県の政治の実権を握っていった。
リューはエーテルの無いこの県では、二刀流のスライムハンターではなくなっていたが、ある意味二刀流な皇太子だった。ある政策の策定と実行に関し、労力の不足があると感じれば、新たに人をアサインしたり、必要あらば自分でリードを取る一方、優秀な人材の意見があれば、それをよく聞くと言うタイプだ。必要に応じて自分の出し方を少なくとも二つほど持っていたのである。
ミレーヌはどちらかと言うとトップダウン型のリーダーだ。彼女は数字に強いと言う、彼女の特長を生かし財務を担当した。彼女は、財政の管理法を一新し、国家の支出と収入の管理が正確にそして迅速になった。
ミレーヌは経済政策にも積極的だ。工房や工場の育成を進めた。例えば、鉄鉱石の新たな高効率な精錬法を取り入れて商業化することに成功した。この技術をいち早く取り入れた街シゾーはトープ県最大の鉄鋼の街となり、人が続々と集まった。もう二年ぐらいすれば、更なる大型工業化が可能で、税を通じた国庫への大幅増収が見込まれた。
ミレーヌは更に、商業ギルドそして海賊ギルドとの連携を強化し、交易の強化とそれに伴う国庫への関税収入の増加に成功した。
このような成功は、リューとミレーヌの2人の密な連携が成した技で、パレのサンセール士官学校を卒業しても、2人はビノームである事に変わりはなかった。
だが、そんな2人にも頭を悩ます問題があった。それは外交だった。
トープ県は軍事的に見れば、周辺諸国に比べると劣勢に立っていた。最近になってトープ県の北部にあるシャモ県は、その女王カミーユ セドゥーの指導のもと、陸軍の強化に成功した。彼女は昔はトープ県との外交交渉にやって来たが、近頃は彼女の側近が自分の国の軍事的優位性をチラつかせ、女王は交渉の席に不在になり、トープ県とシャモ県の関係性は悪化の一途を辿った。
もう一つの脅威がトープ県と北東部で国境を接するセルポン県であった。ガルガリオン コルドン総統の率いる軍事政権が、トープ県の国境の地方、カンタール地方を数年前に一時占領し、その後リューの母、王妃レティシアの率いるトープ軍によって何とか解放された動乱は、記憶に新しい。セルポン軍の国境での威嚇行為は、最近またエスカレートしていた。
レティシア、リュー、ミレーヌの三人は今後の軍事的活動方針について、会議をしている。
「セルポンの軍事政権に、交渉に来なくなったシャモの女王、いつどちらかが、もしくはその両方がわが国に侵攻を始めてもおかしくない緊張状態ですね。困りました。」王妃レティシアが言う。
「この我々の会議に先立って、国家戦略局でその事について検討しました。やはり軍事力のままならないと、トープ県も身動きが取れません。そこで、陸海空の全ての軍の軍拡を提案します。」
「争いは避けては通れないのですね。」レティシアが言う。
「基本的にはそうです。ですが我々の場合は、少なくとも最初は違います。」
「どう言うことかしら?」レティシアが訊く。
「我々が軍拡を推し進めるのは、まずシャモ県の女王、カミーユ セドゥーを我々との対話の場に引き込むという目的の為です。更に、不可侵条約の締結を彼女に直接提案して、それを受け入れてもらう事を目指します。我々が軍事力を持つのは、そのお膳立てにすぎません。そして、もし彼女との対話が失敗しても、最悪、軍事力は我々の手元に残ります。」
「陸海空軍と言っても、具体的には、それぞれ何をどこまで進めるのか、決めたの?」レティシアはさらに訊く。
「海軍の設立には、商業ギルドや海賊ギルドとの連携が不可欠となります。これについては現在、財務と経済政策を担当しているアタシが指揮を取ります。」ミレーヌが言った。
「陸軍の強化及び空軍の設立にはベルモント家の二匹の守護獣の力を借ります。まず、陸軍ですが鉄の街ゴメットの近くのオルドル洞窟に住む鉄の獣、トウテツの加護を得ます。空軍については、南部のアリッド空洞に棲む、もう一匹の守護獣の銀竜、アルジョンティヌスの助力を得て、飛竜隊を結成します。」リューが続けた。
「国家戦略局のシミュレーションによると陸海空軍の3つの拡張のうち少なくとも二つに成功すれば、シャモ県女王のカミーユは我々の交渉に応じると想定されます。」ミレーヌが付け加えた。
「わかったわ。それでやってみましょう。守護獣は過去の王とは何度か契約を結んだけど、前王エティエンヌは契約はしていなかったわ。また、これはあくまで王と守護獣の関係だから、王位後継者の貴方が直接、守護獣の元に行って誠意を見せなければならない。少しの付き人ならともかく、多数の兵士を引き連れて行くなど無礼千万。だから、あなたが自分で行く事になるわよ、リュー。あなたの先祖の中には契約に失敗し、命を落とした方もいるわ。かなり危険なのです。それでも本当にいいの?」とレティシアが訊く。
「もちろんです。」リューは即答した。
「アタシも行きます!」ミレーヌが言った。
「!?あなた達2人とも行って、もしも何かがあったら、幼いシルヴァンは、悲惨よ。。。」レティシアは胸が張り裂けそうになる。
「心配しないでください、母上。ミレーヌと僕は本当にいいコンビなんですよ。大丈夫。シルヴァンの未来が平穏なものになるためにも、僕たちが行くのです。」リューが母を諭す。
「わかったわ。いってらっしゃい。これを渡しておくわ。」レティシアは一つの腕輪を取り出した。
「この腕輪はジャベリンと言って、特大の槍を召喚し、相手に投げつけるアイテムです。合計で3回まで召喚ができるわ。これを身につけて思念を送るだけで発動します。」レティシアは腕輪の説明を終えた。
「そして、私は王妃として、ここにリューとミレーヌの特命チームの結成を許可します。」
こうしてリューとミレーヌの特命任務が始まった。




