アタシ達は卒業した。
トープ県に行く直前、ミレーヌは月の花を採取した時について、回想していた。
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こうして、アタシ達はガエリア山地の山頂に咲く『月の花』の採取に成功した。
アタシ達は、軍医科 学科長、フランソワの待つ病院へと月の花を届けた。月の花を触媒として、リューのエーテルの枯渇を回復し、なおかつエーテルを健康に重篤な障害を及ぼすまでに使い過ぎてしまうエーテル過剰使用症も治療すると言う大手術が行われた。フランソワと総勢20名の生徒達は、八時間をかけて、その手術を行った。
手術の結果は大成功。リューはスライムハンター科一位を不動のものにして活躍しつつも、卒業まで、彼がエーテルの過剰使用により再度生命の危機に陥ることは無かった。
闇ハンターの出現に始まり、リューの手術に終わる疾風怒濤の数日間はかくして終わったのである。
それからは、士官学校の卒業まではこれに比べれば少しは平和な日々だった。特に、大型の魔人は出てこなかったと言う点についてそうだった。ただし、スライムもガーゴイルも前の年に比べて平均的には確実に強くなっているのが分かった。アタシ達は、その原因までは突き止められなかったが。。。
人間は人間で強くなっていった。例えば、リューとアタシが巨人に乗った時に使った、ガーゴイルハンター1人とスライムハンター1人がエーテルを融合させて攻撃や防御をする技は、巨人なしでも、更にはリューやルイのような二刀流の学生が二人のうちの一人でなくても、2人が触れ合ってさえいれば、出せると言うことを、アタシ達の学年の皆は見つけた。その技法は軍に共有され、スライムとガーゴイルが合体した敵が何度か現れたが、それらはその技法を身につけた人類によって退治された。
リューはスライムハンター科を首席で卒業し、アタシはガーゴイルハンター科を首席で卒業できた。アイツと並び立つことができたのが素直に嬉しかった。卒業をもって、アタシ達は、ハンターの資格を得た。
プライベートで特筆すべきなのは、ルイとルイーズの結婚だろう。その結婚式では、アタシが司会を務め、リューが厨房で料理長として料理の腕を振るった。そのリューの料理を食べた皆は、その味を絶賛した。
「リュー君、うちにお嫁に来ない?ミレーヌがあなたを離すような事があれば私が結婚してあげる。」
などとヴェロニカが言っていた。もちろんアタシがリューを離すことは無いが、リューと地理的に離れて暮らす事になる彼女の寂しさはアタシにもわかり、切なくなる。
リューとこれから一緒に行くトープ県ではどのような生活が待っているのか、リューとは卒業の3ヶ月前くらいから、話した。結論から言うと、アタシはトープ県の皇太子妃になる事になった。リューとの新生活、何が飛び出て来てもアタシは驚かないが、アイツがトープ県の皇太子だったのだ。アタシ達の婚約指輪に宿っていたエティエンヌは前王だったと言うことになる。今は、リューの母、レティシアが宰相として県の政治の中心にいる。アタシ達はトープで生活を始めて、やがてリューが王となり、アタシは王妃となり政治を引き継ぐ事になる。
アタシにそこでの生活に心配はない。リューと一緒なのだから。
ただ、トープ県と周りの三つの県、シャモ、セルポン、そしてルナールは、極めて微妙な関係にある。中央都パレで人はエーテルを使い、異形と戦っているが、エーテルの無い地方県では戦いは人と人との間で起こる。領土、資源、その他の富をめぐる争いがあるのだ。王と王妃だから安泰な生活ができるなどと言うことはなく、アタシ達はアタシ達自身を生き延びさせ、人々を、そして県を生き延びさせる必要がある。
そんなこんなで先行きは見えないところも多いけど、アタシ達はどんな試練も乗り越えてみせる。アタシはアタシ達を信じている。
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ミレーヌはトープ県で生きていく決意を新たにしたところで、リューがミレーヌの乗っている馬車に戻って来た。
と言うわけで
士官学校を卒業したミレーヌとリューは、それぞれトープ県の皇太子妃、皇太子として新たな人生の1ページを踏み出す!
次回から新章
地方県の動乱編
です!
寒い日が続きますね。お風邪など召さぬようご自愛ください!




