アタシがトレーナーでアイツが生徒
二人組の初トレーニングの日の昼がやってきた。ミレーヌとリューは校庭で訓練を始める。
「こんにちは、ミレーヌ様。」リューが言う。
「こんにちは。あなた、臆せずと言うか恥じらいもせず同級生に様づけできるのね。」ミレーヌは呆れ顔で言った。
「一度決まった事にそんな感情を持っていても、時間の無駄でしょう?」リューが言葉を返す。
(こいつ、実力はともかくやる気が半端ない感はあるわね。)ミレーヌは思った。
「いいわ。まあとにかく、あなたのGガードの性能を上げることが最重要事項ね。あなたがガーゴイル戦で死んでしまっては話にならないもの。アタシがガーゴイルの攻撃を模した蹴りを入れてみるから、それをGガードしてみなさい。」
『せーの!』
二人はタイミングを併せてそれぞれ蹴りとGガードを発動させた。まさしく特訓。実戦ではガーゴイルがタイミングを併せて攻撃してくれることなどない。ミレーヌの蹴りをリューが右腕付近に発動させたGガードで受けた次の瞬間、リューの体は宙に舞った。10メートルほど飛ばされ、なんとか受け身を取って着地したが、どちらかといえばそれは墜落だった。
「あら、かなり威力は抑えたのだけど。大丈夫かしら?」ウフフとミレーヌがポーズをとって言う。
「大丈夫です。も、もう一度お願いします」とリュー。
「痛いでしょ?」
「いいのです。」
もう一度やってみたが結果は同じだった。もう一度、もう一度とリューに言われて10回目になった。
やはりリューは同じように吹き飛ばされ地面へ落ちた。リューは今度は立ち上がることができない。
ミレーヌはリューに近づき、右足の靴を脱いだ。そしてリューの頬に痛くはならなようにしつつも、右足をおき、踏みつけた。
何故彼女はわざわざ靴を脱いだのか?それは、彼女には彼を屈服させる意思があったが、すでに痛みを負っている彼を更に傷つけるのは、彼女の趣味ではなかったからである。
「わかったでしょ。アタシとあなたの違い。完全服従しなさい。つまりガーゴイルが出てきたら、あなたは戦闘から離れて木の影で怯えてればいいのよ。」
「うう。」
リューはうめいた。そして続けた。
「断るよ。今は。だって練習を始めて1日も経ってないのに諦めるのは早すぎるでしょ。」
「、、、勝手にしなさい。アタシの思念体をここに置いていくわ。何回もやったから、それが作れる。アタシの蹴りがエミュレートできるわ。アタシはこれから個人で特訓するから。バイバイ。あ、そうそう。私がGガードするイメージはね、どちらかと言うと一点に気を集中させる感じかな。盾のような面を作ると言うよりはね。じゃあね。」
そう言い残すとミレーヌは別の場所へと去っていった。風とリューと思念体だけが残された。