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アタシ達の初出張 その5

 リューがレバーのある制御室の入り口に結界を張った。


「ふう、これでよし、、、です。さあ、行きましょう。」とリュー。



「迷宮はどうなっているでしょうね?


、、、


ラッキーですね。どうやらレバーを上げた時には迷宮の壁の配置は変わらないようです。そうなってしまうのはレバーを下げた時のみの様です。」


 ミレーヌとリューは迷宮を戻っていく。一つの十字路に差し掛かる。



(あれ、なんだか急に眩暈がするぞ。。。)リューがそう思った。


「ってリュー!?」


 ミレーヌが倒れこむリューを支える。


「うう。」

(リュー君はかなり危険なレベルまでエーテルを使えてしまうという、ある意味で言えば素質、別の意味で言えば欠点があるようだ。ビノームのミレーヌ君と協力して、無理をしないように積極的に管理を知る必要があるね。)

ミレーヌは2回目のガーゴイルハントの後に、軍医ソフィーに言われた言葉を思い出した。


「リュー。あなたエーテルを使いすぎて!」


「ふう、百匹以上のスライムを倒して結界まで作ると流石に少しは疲れました。でも大丈夫。数分休めば治りますよ。今回はこれでもエーテルの使い過ぎには気をつけているのです。スライムを遠くから射撃することはできなくても、近接攻撃なら、いくらでもできますよ。」


「おとなしく休んでいなさい。こんなにアタシを心配させて。帰ったらお仕置きだからね。」


 ミレーヌがリューを楽な姿勢にしようと彼の体を支えながら少し後ろに下がった。ミレーヌは地面にあった何かを押してしまったようで、ゴトリという音がした。


「しまった。まさかトラップ!?」


 ミレーヌが気づいた。床が崩れるのが感覚でわかる。


「うわわ!」リューが驚く。


「チィ!」


 ミレーヌはそういうとエーテルを少し込めて、リューを蹴り飛ばす。


「ウグッ」


 十字路にいた二人であったが、リューは蹴り飛ばされ、今までやってきた進行方向の右側の地面に落ちた。ミレーヌは蹴りの反作用を利用して左側の床に着地した。ガラガラと音を立てて今まで通過していた通路が前後10メートルにわたって崩れ落ちていた。2人はその亀裂で分断されてしまった。


「大丈夫リュー?」ミレーヌが尋ねる。


「大丈夫です。」ゲホゲホッと言いながらリューは言った。


「良かっ、キャア!?」


 ミレーヌが悲鳴をあげる。なんと左側の通路には見えてはいなかったが、薄く伸びているスライムがいたのだ。それがミレーヌの足元一面に拡がっている。


「こんなの加速して逃げる!クッ!?」


ミレーヌはエーテルに乗って加速しようとしたが、もう既にスライムに捕まっていて逃げられない。


「ミレーヌ様!」リューはエーテルの球を打とうと構える。


「落ち着けええ、リュー!」ミレーヌが叫んでそれを止める。


「エーテル切れの、今のあなたじゃエーテルの球は打てないか、打ててもこっちにいるスライムに当たるほどの距離は飛ばせないわ。」


 冷静な分析だ。そうとなればスライムに近接攻撃するしかない。


「でもどうすれば。。。」


 今来た道の前後も崩れているので飛び移ることはできない。壁伝いといっても、ここらへんの壁は滑らかで、特に今のリューの体では張り付いていられないだろう。リューは迷宮の地図を思い描く。レバーの部屋に着く前に散策したのでここら辺の地図のイメージは豊富にある。彼はミレーヌのところまで行く道筋を思いついた。今、自分たちの目に入っている所に崩れている場所が限定されていると仮定すれば、この道なら行ける。


「ミレーヌ様、3分待ってて。必ず来るから。」


「リュー。。」


 リューは足を引きずりながら歩いていく。


(クッなんなのこのスライムは。)


 重力に逆らって床からミレーヌの下半身までスライムが上がってくる。


「ちょっと、どこ触ってるのよ。この変態スライム!くっ!」ミレーヌが赤くなる。


(どうすれば。。。リューは意識が朦朧としている中アタシを助けようとしているわ。あいつは命懸けなのよ。)


 ミレーヌはハッとリューとの昔の会話を思い出した。


『ガーゴイル戦のGガードに対応する技法と言っていいと思うのですが、特に技名もないですが、自分の体に張り付いたスライムを引き離す技法があります。大きすぎるスライムが獰猛で僕らを取り込もうとしてきた場合、窒息する可能性がありますね。それを防ぐ技法です。スライムを水面と思った時、そこから抜け出るイメージでエーテルを身体の表面に解き放つ感じです。』


「水面よ。私を解き放て!」ミレーヌがそう念じたが、技は発動しない。


(お願い私、私の一番大事な人には少し時間が必要なの。そんで、一緒に帰って、あいつと2人っきりになって、ベッドの上でお仕置きするんだからっ!!!)


 ミレーヌがもう一度念じると、ミレーヌの肌をエーテルの光が包む。そして、ヒューと音がする。次の瞬間、ミレーヌはスライムが自分の足首までは下がっていったのを見た。


(やった!)


 ただやはりスライムは足元には絡みついたままで、逃げることまではできない。


「ちょ!ちょっとまたエッチなことしたら、また吹き飛ばすわよ!」


 結局、スライムはまた腰の周りまで上がってきた。


「もう一発!ダメだ。私もエーテル切れか。」


 慣れないスライムハンター技を出し、もうミレーヌに抵抗する力は残ってなかった。


(リュー 早く来て。。。アタシ もうダメみたい。)ミレーヌは願った。


 スライムはゆっくりとミレーヌの胸へ、そして顔へと上がってこようとする。


「ハァハァッ。」

 その頃、リューは四つん這いになってミレーヌの方へと進んでいた。もう立っていられない。力の限界なのだ。だがあと2回曲がっていけばミレーヌの場所に着くはずだ!


 急にクイズシステムが発動した!


【20個の異なるものから5個の物を選ぶ組み合わせの総数は?】


「こ、このクソが、15504だぁーーーー。」リューがブチギレながらお行儀悪く答えた。


 正解を感知したシステムによってまた道が開かれる。


(ミレーヌがさっき答えてたのと同じ問題。。。だから即答できた。そうなんだ。こんな感じでいつも僕のいく道にはミレーヌ、あなたがいる。)


 リューは計算ができないわけではないが、彼の持ち前の記憶力で、今の問題とミレーヌが回答を丸暗記していたので、それをそのまま言ったのであった。リューは角を2つ回りミレーヌのいる区画にたどり着いた。


「ミレーヌ!?」


 スライムはミレーヌの額までは取り込んでいる。あの様子だと少し前から息ができていない。


「体よ。耐えろ!」


 リューは力を振り絞りスライムの核に直接攻撃をする。この至近距離ならエーテルによる攻撃ができる!リューの攻撃をまともに受けたスライムは弾け飛び、ミレーヌが解放された。


「ミレーヌ!ミレーヌ!」


 ミレーヌに息がある。気を失いかけていた、ミレーヌが目を覚ます。


「あなた、来たのね。遅いわよ。やっぱり今日はお仕置きね。」


 ミレーヌが笑った。二人は抱きしめあい、深いキスをした。

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