アタシたちはケンカはしない、でも馴れ合いもしない。
「参ったわね。アタシの二人組はあなたで決定という事なのね。」
ミレーヌが言う。
「随分な言いようですね。」
少年、リュー ベルモントはミレーヌに言い返した。
ビノームが二つの学科の生徒からなるというのは確かにレアなケースだった。ガーゴイルハンター科には400名の生徒が在籍しスライムハンター科には40名の生徒が在籍している。このうちビノームがそれぞれの学科から一人づつ選ばれているケースは、ミレーヌ達の学年では、たった二組だけである。
ちなみにサンセール大学校の学生選抜つまり入試は学科ごとに行われ、併願することはできない。統計上は、大部分がパレの高校生が新入生として入試で選ばれる。地方県から選ばれる学生というのは毎年、両学科併せて高々二人以下でレアなのだ。大学校入学前、高校では全大陸の高校生を対象にスライムハンター及びガーゴイルハンターへの適性が計測される。計測でマッチがあることがわかり、尚且つ自信そして熱意のある者がサンセール大学校の入試を受けるというような仕組みになっている。
そしてリューは地方県トープ出身のスライムハンター候補生である。
「まあしょうがないわ。これから任務にどう対応するかという事について決めましょう。」ミレーヌが言った。
「わかりました。」とリュー。
「アタシの調べによると任務の九割は異形の討伐です。ガーゴイルが出てきた時はアタシがアタシ一人で行きます。あなたはついてくる必要が無いわ。スライムが出てきた時はあなたが一人でやって頂戴。残りの異形の関係無い平和維持活動には一緒に取り組みます。はい以上。」
ミレーヌは言い放つ。
「それだとビノームの意味が九割無いという事になりますね。」リューは分析する。
「そうね。だってあなたGガードそもそもできるの?」
Gガードとはガーゴイル戦で基本となる技能である。生身の人間がガーゴイルの攻撃を受ければ重症もしくは即死してしまう。Gガードは空気中の魔法元素エーテルを顕在化させ魔力でできた盾を作り、ガーゴイルの攻撃のダメージを何倍にも軽減する技法である。
「ほんの少しならできるのですが、僕はスライムハンター科なので、対ガーゴイルの戦闘技能獲得に使った時間がとても短かかったのです。だから、ガーゴイルハンター科の基準では完成度がとても低いという事は否定しません。」とリュー。
「それにスライムハンターは、、、」
そう言うとミレーヌはエーテルに乗って加速した。
ガーゴイルハンターは、空気中のエーテルを使って加速するのが得意だ。一方でスライムハンターはそれができないわけでは無いが、一般にはガーゴイルハンターほど上手くできない。
「遅いじゃない。」
ミレーヌはリューの背後を取り、腕で首周りを取り囲むモーションをした。
「!?」
リューは絶句してしまった。まずミレーヌのあまりの速さに驚き、次にミレーヌの体がここまで密着してしまっている事にどうリアクションすればいいのかわからず、言葉が出なかった。何やら柔らかい感触がリューの背中に伝わってくる。二人の背丈が同じくらいで、特に肩の少し下くらいに柔らかポイントが左と右に一つづつある様に感じられた。そしてそれはかなりのボリュームと質量で主張してくるのであった。
「!?もしかして、お前、ヤラシイ事考えているわね!」
バッとミレーヌは離れて胸を隠す様なポーズを取った。