アタシ達と冬の雨 その1
「では一月三日はルオンの森エリア4で13時に集合よ。それじゃよろしくね。またね。」
ミレーヌはそう言って、電話を切った。ルオンの森は中央都の北部に位置する森で、ハイキングコースとして有名だが、そこでジョギング的な有酸素運動を行おうと言うのである。リューは一月三日の朝にはルオンの森の、更に北のオルレオン郡にいる。スライムハンター科主催のボランティア活動に参加しており、リューはそこから直接来ると言う算段だ。ミレーヌの家から待ち合わせの場所へは徒歩で一時間半ちょい程度。一人の部屋で、「やっぱりアタシと一緒にいたいのね、アンタは。」とミレーヌは ぬいぐるみのほうのリューにそう言った。
年が明け、一月三日当日となった。11時15分にはミレーヌは外に出た。住宅街から、畑を横切ってルオンの森にそろそろ着くかと思われたのが12時半だった。
「うう、うう。」
うめき声が聞こえる。あたりを見ると 老婆が倒れていた。
「胸が苦しい。」
「ちょっと、これはまずいわ。」
場所が確かにまずい。ルオンの森とその付近は極端にエーテルの濃度が低く、ハンターの技術は使えない。体内からエーテルを放出するには、周囲の環境にエーテルが存在する事が必要なのだ。周りに人がいない。よってこの老婆を一刻も早く病院に連れて行かねばならない。ミレーヌは老婆を背負って元来た道を戻り始めた。
13時半、やっと一つの家が見えてきた。電話をしてもらえる。そう思っていたらそれは空家だった。結局その10分後、やっと電話をしてもらえる別の農家を見つけ電話をしてもらった。救急隊は大忙しで、ここに回せる馬車はないらしい。タンカで老婆を中央病院まで運んでほしいと言うこととなった。また、第一発見者のミレーヌには、更なる事件性がない事がわかるまで、一緒にいてほしいと言うこととなった。
結局、病院に搬送された老婆は猟師アニエス ブルトンである事がわかり、その家族もやってきた。ミレーヌが解放されたのは15時30分だった。病院の外に出る前に音で気づいた。大雨である。
「あの、、、」ミレーヌの後ろから声がした。
「今日はうちの母を助けてくださってありがとうございました。よければこの傘使ってください。」傘を持つアニエスの息子が言った。
「ありがとう。」とミレーヌはそれを受け取った。
冬の中央都パレは雨が降ることは少ない。と言うかほぼないが、こんな日に限って雨である。
(リュー!今どこなのかしら?)一応彼の家に電話をしたが誰も出ない。となればまだ森の中なのか?雨の中ミレーヌは走っていく。
再び住宅地を抜け、畑を横切り、森の入り口にたどり着く。森の中を駆け抜け、16時ごろに待ち合わせの場所、ルオンの森エリア4に着いた。
「リュー!!リューーーー!」ミレーヌは名前を呼んだ。
「ミレーヌ様、こんにちは。」リューがいつもと変わらない様子で返事をする。
「ごめんなさい。こんなに待たせてしまったわ。」
「私も軍人となる人間です。このくらい待てますよ。」
リューはエーテルがないこの森では、対スライム用の防水膜を作ることもできず、びしょ濡れである。
「ミレーヌ様もずぶ濡れですね。傘は持っているのに。」
「一刻も早くここに来たかったの。さあ一緒に帰るわよ。」
二人は一つの傘に入り、ミレーヌの大遅刻のわけだとか、冬休みにしたことなどを話しながら家路についた。森からはミレーヌの家の方が近く、その前まできた。
「うちで暖まりましょう。」
玄関でちょっと待っててと、言うとミレーヌはバスタオルを持ってきた。
「先にお風呂入りなさいよ。」
「ミレーヌ様より先には入れませんよ。」
「めんどくさいわね。」
ミレーヌはリボンでリューの目隠しをした。
(!?!?!?)
リューは混乱した。
「もう、一緒に入るわよ。あなたは下着はつけてなさい。」
手際よくミレーヌは水着に着替え、リューを風呂へ押し込み自分も中に入った。




