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アタシ達は学科交流パーティーに参加した。 その3

 ミレーヌはリューがいない間、ガーゴイルハンター科の友人と話をしていた。


(何よ、あのおっぱい押し付けパフェ女は!)


 ミレーヌはリューとの初対面の時、彼をハガイジメにする時、意図せずに、押しつけをやってしまったが、それは彼女の中でノーカンである。


(ア、アタシも何か一人適当な男と二人っきりになってやろうかしら?)


 だが彼女は、それが自分の心の欲するところではない事を悟り、やめた。


 気を取り直したミレーヌは、それでもほかの友人と楽しく時を過ごすフリをしていた。なぜこんなにイライラするのか、話しながら考えてみた。おそらく自分は、ビノームとして活動してくる中で、リューに指図ができる唯一の特等席に座っているかのような錯覚を抱いていたのではないだろうか。リューの事を一番わかっているのは自分で、少し大袈裟に言えば、短い間ながら、生死を共にしてきた仲間というのも自分一人なのだ。そんな相棒に、いきなり一緒にパフェを食べてと言ってくる女が出てきたのが、心に波を起こす。15分くらいすると、リューが戻ってきた。


「?何かしら?」平素を装いミレーヌが言った。


「パフェ、美味しかったですよ。多分好きな味だなと思ったので一個貰ってきました。」


「あ、ありがとう。」


「柑橘系好きですもんね。」


「んー、この冷たいミカンの上にオレンジとビターショコラのソースがかかっているのが格別♡。って調子に乗らないで!アタシの事、なんでも知ってるみたいな態度、頭が高いわよ!」


 この間接キス魔!とまではミレーヌは言わなかった。ジェラシーを奴隷に知られるわけには行かないのだ。


「あれー、リュー、こんなところにいた!私、酔っ払っててー!」


 おもむろに、一人の女性がリューの唇を奪った。それは当然のように軍医科首席、アリスだった。


(また次から次へと、何なのよ、もう!)


 ミレーヌはそう思いながら、自己嫌悪に陥っていた。自分の奴隷という男が、次々と他の女に口を侵されている。自分は何もできていない。ガーゴイルハント関連以外の事となると、あーしろこーしろと自分が言えた事が試しが、実はあまりないことに気づいた。こんなに近かったと思っていたものが、こんなに遠くにあるように思えた。

 だが、リューは困った口調で言うのだった。


「アリス、口の中がしっかり磨かれてて、絶対1ミリも酔ってないですよね。今のはダメですよ。」


「こんなに美少女なのにダメなの?」


「ダメです。」


「ちぇ。つまんないの。」


 アリスはぷいっとしてあっちに行ってしまった。


「少し寒いけど、外の空気でも吸いませんか、ミレーヌ様?」


「あなたって、案外酷いのね、好きでキスしてくれた女の子に対して。アリスなんて、数しれぬほどの男子の憧れの的なのよ?」


(違う、アタシが言いたいのは、こんな事じゃなくて。)


「今度は離れないように、手を繋ぎましょうか。」


 言うなり、リューがミレーヌの手を引っ張る。思ってたのより大きな手だった。二人は人混みを突っ切っていき、テラスへと出た。


「思ったより、少し寒いですかね?」


「いや、そんな事ないし、中より、こっちの方がいい。」 


「交流会なんて言って、やっぱりビノームでいるのが落ち着きます。」


「な、何よ、急に。」


「ミレーヌ様の奴隷な時の自分が心地よいって言ったら、変ですか?」


「変、っていうか変態よ。。」

(いや、本当は変じゃないけど。)


「そうですか。。。じゃあ、『もっとそばにいたい』だったら?」


「ちょ、調子に乗ってるからお仕置きするわ。」

(ちょ、いきなり何を言うのよ、もぉー!)


 そう言いつつ、ミレーヌは、胸の鼓動の上昇が止まらない。脳内でドーパミンがドバドバ出てくる。


「ふーむ。」


「な、何よ。」


「ミレーヌ様のお仕置き、嫌じゃないですよ。

あとこれ、良かったら受け取ってくれませんか?」


「何よこれ?」


「私の住んでたトープ県では年末のちょうど今日、12月25日に大切な人に贈り物をするんですよ。中央都にはそのような風習がないようですが。」


 包みを開けるとクマのぬいぐるみが出てきた。


「ちょ、これ。」


「この前任務が終わった時に通りかかったショーウィンドウを見ながら欲しがっていた一品だと思ったのですが。」


「何勝手に覚えているのよ、あなたは。しょ、しょうがないわね。こんなみんなのいる中で断られたら可哀想だし、受け取ってあげる。ありがとう。」


 ありがとうと言うまではリューの方を向いていたが、なんだか彼を直視できず斜めを向いてしまった。


「もうそろそろ、パーティーも終わりのようですね。二次会があちこち乱立しているようなのですが、僕は帰ります。ミレーヌ様はどうされますか?もし帰るのなら一緒に帰りませんか?」


 この会場からだと確かに帰る方向が同じなのだ。


「な、あなたと一緒に?」


「?いつも一緒に帰っているじゃないですか。」


「それはそうだけど、それはビノームだからでしょ。あ、あなたと帰って噂になると恥ずかしいわ。」(こらー、一緒に帰れアタシー)


 ミレーヌはリアルと心の中、両方でテンパってしまった。風評は気にしないタイプのミレーヌは人の噂などどうでもいいのだが、今日はなんだか素直な自分がどこかにいってしまっている。


「わかりました。ではでは。明日から三日間は年末の学科ごとの特別授業のみで、それで年内の課程は終わるので、次会う時は来年ですね。今言っておきます。良いお年を。」


「あなたもね。」


 帰っていくリューを見つめているミレーヌだった。


「あれ、一緒に帰らなくていいのか?」と近くにいたルイ。


「しー、ルイさん、こういうのは二人の成り行きに任せるべきです!」とルイーズが言った。


「でも、さっきのプレゼントって、ヴェロニカとアリスが強気で、弱気に思わずなっちゃったミレーヌを自分の方に引き戻したいって思いもあったんじゃ?」


「だから、シー!ルイさんが鋭いのは私は、わかりましたから!」

 ルイーズがルイの口を塞ぐ。


(そうか、アイツは、アタシへの本気を見せてくれたんだ。それなのにアタシは。)

 リューが消えた闇の中を、虚にミレーヌは見つめる。大きめのぬいぐるみをギュッと抱きしめる。周りに偶然居合わせたその他の者達は好奇の目でミレーヌを見てたが、ホラホラ見せ物じゃないのよと言わんとばかりにミレーヌの友達が二次会へ行くグループに彼ら彼女らを押し込んでいった。



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