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捨てられ猫姫の憂鬱  作者:
第四章 王配の座は誰に

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そして襲撃


 それから少しして、終了の合図が鳴り響いた。十名の合格者が決まったのだ。


 それに続き、最終戦に残る十名が紹介された。

 登録時のプロフィールと、人間の姿と猫の姿、そしてリアルタイムで、本人から一言。


 ダンはインタビューに対して、『絶対に優勝する』 と一言だけ答えた。その様子は四つの拡大映像で、会場中に届けられている。


「気合が入っているわね。ミーアは女王を引き受けることにしたの?」


 バーバラが聞き、リンスも私の顔をを覗き込んだ。


「ダンは、そう望んでいるみたい。でも理由は、他の男が手を出せなくなるから、なのよね。動機がそれって、不純すぎない?」


「それも素敵な動機よ」


 リンスが軽い笑い声を上げた。


「昨夜女王と話し合ったの。私とニコラに子供ができたとして、その子は人間か、貴族猫か、両方が混ざるのか、それにどんな風に育つのか、全く未知よね。だから次期王女はミーアの子供に決定よ」


「それでいいの?」


「それがいいの。だってもしかしたら、その子供は人間と普通に交配できるかもしれないわ。だから女王にしたくないの。人間と貴族猫が混血して広がっていくかもしれない未来って、素敵じゃない」


 その言葉を理解した途端、私の目の前に、未来が広がった。


 何年も後の、この世界の変容が見えるような気がした。

 それは時間のかかること。その最初の二人を守っていくためには、リンスは子供を育てるだけで一杯になる。

 それならば、私が女王にならなくてはいけない。そして二人を女王として守っていく。つまり、そういうことだ。


 私は真っ直ぐに立って、頭を上げた。


「私が女王になるわ」


 リンスとバーバラが、両方から私を抱きしめた。





 夜になり、暗闇に包まれた森の中、女学院の屋敷に、襲撃メンバーが集合した。

 総司令官が、短い挨拶の後に、加えた。


「今回は女王が観戦にいらっしゃるそうです。自分たちの事は気にせず、好きなだけ暴れて欲しいと仰っています。派手に行きましょう」


 オーと高い声が屋敷に響いた。



 その頃、バーナード学院の屋敷でも、同じように隊長が挨拶していた。

 女学院の総司令官と違い、緊張感が顔に表れている。


「女王陛下が観戦される。間抜けな様をお見せするわけにはいかない。心して掛れ。相手側に、実力者が味方するという情報を得た。だが、こちらには明日の第三試合出場者が四人いる。怯むな」


 オーと太い声が屋敷中に響いた。



 私はチームのメンバーと決められた場所に移動し、身を潜めた。猫の姿のほうが潜みやすいので、全員猫だ。


 女学院の下級生が、横で小さな鳥を出す練習をしている。羽ばたくのが下手な鳥で、低空飛行しかできないようだ。


「ここに、こう加えてみて。もう少し」


 そのアドバイスで手を加えると、鳥が力強く羽ばたいた。

 私は思いっきり褒めてあげてから、偵察隊に見つかるとまずいから消してね、と忠告した。


 屋敷周辺を偵察隊が回っているはずなのだ。見つかったら逃げて隠れろ。それでもだめなら、捕獲して隠せ、と命令されている。


 小さくカサッと音がした。猫の足音だ。

 全員が、一斉に地面に伏せた。


 小さい音は、そのまま遠ざかって行った。

 ホッとして体を持ち上げた瞬間に、網が被さって来た。慌てて手足をバタつかせたが、網に絡まって自由にならない。


「やった。大量捕獲、成功」 と声が上がった。


 多分、バーナードのメンバーだろう男達が、喜んでいる。

 まだ何もしていないのに、こんなに早く捕まってしまうとは、と情けなくなってしまった。


 しょげていると、その男達が突然にバタバタと倒れた。その後ろにバックアップチームの女性達が立っている。


「さあ、もう大丈夫よ。悪者は倒したわ」


 カアッコイイー


 全員で足元に擦り寄り、ニャーと感謝の言葉を伝えた。

 バックアップチームは、男たちを網で囲って木に縛り付け、見回りに戻っていった。


 私と下級生は、次の時には、バックアップチームに立候補しよう、と言い合った。


 そろそろ、アチラコチラで小競り合いが起こっているようだ。時々大きな音が立つ。


 一番目立つのは、結界クラッシュチームだ。屋敷の塀に向け、二箇所に集中して、派手に魔法を飛ばしている。

 だが、バーナードは余裕で結界を保っている。塀の外で迎え撃つ部隊が、かなり頑張っていて、思うように魔法が届かないのだ。

 そのメンバーの中にビリーとパーシーがいた。彼らは、働き者だった。

 バンバン魔法を繰り出し、風を起こして、女学院チームのメンバーを押し戻している。その合間にシールドを張り、女学院チームの水柱や、竜巻を弾き返す。


 昼の競技の時には頼もしく見えた姿が、今は憎ったらしくてたまらない。


 ちなみに怪我人が大量に出るような攻撃は禁止。なので、主に風と水での攻撃になる。


 女学院のバックアップチームが駆け付け、ブリザードを発生させた。それはパーシー達の視界を奪い、その間に女学園チームの攻撃陣が前に進む。一人が塀に取り付き、思いっきり破裂魔法を放った。

 塀に穴が空き、中で結界を張っている男達が狼狽える様が見えた。


 塀はすぐに修復されて閉じてしまったが、女学院チームの士気は一気に上がった。

 

 もう一箇所の方は、どうやらダンとソロモンが、参加しているらしい。

 そちらも善戦しているようで、休憩しに来た結界クラッシュチームのメンバーが、やっぱり二日目を突破した男達は強いわ、とぼやいている。


 他の侵入ルートとして、穴を掘って地下から入るものがある。


 バーナード学院の屋敷が、何処に作られるかは、事前に諜報チームが探っていた。

 このチームのメンバーは、クセが強い感じで、女学院の下級生もいるが、なにかが敵わない感じがする。

 そして活動内容は、味方側にも秘密なのだ。うーん、何をしているのだろう?


 諜報チームが各チームに伝達をして回っており、その時に状況を教えられた。


 探り当てたその場所で、穴掘りチームは待機していた。ところが情報漏洩が発覚し、屋敷の場所が移動していたため、慌てて探し回り、バーナードの旗を立てた屋敷を見つけた。

 穴掘りチームは、見回りに見つからない、少し離れた場所から掘り始めた。これでは間に合わないかと思われたのに、ここで人数が物を言った。

 諜報チームと突入チームと、手の空いた者全員が、穴掘りに参加し百人近い女性たちが投入されたそうだ。

 突入チームは攻撃力の特別に強い者で構成されている。連続して小さな爆発を起こし、穴をどんどん広げ、その後を、通路を強化する係と、土を運び出す係が続いていく。

 音や振動はバックアップチームが中心になって魔法で抑え、工事は恐ろしいスピードで進んだという。


 そこまで聞いてワクワクしていたら、すぐにその結果が現れた。塀が修復されて歓声を上げていたバーナード側から、驚愕の声が上がった。きっと地下からの通路が、塀の内側に開いたのだ。

 目の前の拡大映像がいくつも広がり、そこに突入チームが先頭に立って飛びしていくのが映しだされた。結構広い穴から、ぞろぞろと女学院のメンバーが敷地内に出ていく。


「屋敷内に撤収。屋敷の結界を強化」


 大きな号令が、私の耳にも聞こえてきた。



 私達は合図待ちなので、ジリジリして様子を見るばかり。とってもじれったい。

 突然にドンという、とても大きな音が鳴った。


 上空に真っ赤な花火が広がった。赤とピンクの花びらがいっぱいの、素敵な花の模様だ。花の横には剣が表示されている。そして、下に『QUEEN』と署名があった。


 続いて打ち上げられた花火は、青いユリの花模様の大きな盾だった。これの署名は『ネイト』だった。

 激励だろうか、煽りだろうか。とにかく、盛り上がった。

 花火に惹かれて、ギャラリーが一気に増えてしまった。

 


 たじろいでいる私達の元に、作戦決行の伝令が飛んで来た。


「狼煙と同時に打ち上げて」


 黄色い派手な火柱が、夜空に向かって立ち上がった。

 それを見て、私は特大サイズの水色龍を夜空に放った。龍はうれしそうに泳ぎ回り始め、他のメンバーは薄桃色の雲を幾つも周囲に上げていく。

 龍は泳ぎながら雲を集め、お手玉を始めた。雲のジャグリングだ。

 雲は色を変え、クルクル回る内にレインボーカラーの綿あめに変身した。


 大きな大きな綿あめは銀河の様に見えた。観戦者が喜びの声を上げている。

 私は龍に綿あめを被らせた。レインボーカラーの帽子は、水色の龍にとっても似合っていた。嬉しくなったので、ポーズを取ってウインクさせた。


 このあたりまで来て悩んだ。効果がありすぎて、現状、両軍揃って見入ってしまっている。これでは隙を付けない。


 すると、バーナード学院の屋敷から、もう一匹龍が現れた。青龍だった。その龍は、水色の龍にピンクの花束を捧げている。


 水色龍は花束を受け取って、綿あめの帽子を青龍に被せてあげた。

 すると何を勘違いしたのか、青龍が突然水色龍に抱きついて、キスした。


 私の龍になんてことをと頭にきて、水色龍に青龍を振り払わせた。水色龍はカギ爪で相手の顔を引っ掻き、尾で思いっきり叩き落とした。

 あまり強い力は使わないよう、抑えていたのに、この時は力の加減を間違えてしまったようだ。

 青龍はすごい勢いでバーナードの屋敷の屋根に突き刺さり、フッと消えた。そしてそこには、大きな穴が出現した。


 突入チームが、屋敷に向かって突進する様子が映しだされた。すごい気合で、殺気がダダ漏れだ。


次回、最終回です。

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