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捨てられ猫姫の憂鬱  作者:
第三章 隣国から来た男達

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女学院の説明会

 私はすぐに女学院のハウスにも登録をお願いした。この事は、バーバラには内緒にしておくことにした。これには絶対に参加させられない。

 貴族猫同士での、かなり本格的な、スパイごっこになリそうなのだ。


 説明会に参加すると、各学年数人ずつが、参加しているようだ。私の知っている現役生は十八名いた。

 宿泊者は全部で六十人程度だが、参加者数は、百人以上に上る。 かく言う私も参加のみする側だ。


 説明会では、大枠を説明してくれた。

 襲撃は二日目の夜に行われる。武器禁止、流血沙汰も禁止なので、そんなに過激なことはしないようだ。参加メンバーは十二歳から六十代までと幅広いが、皆一様に楽しそうにしている。


 アンケート用紙を渡され、得意分野を書くよう言われたので、魔法とジャンプ力と書いた。ジャンプには自信がある。作戦会議は2週間後と言われ、私は、その日を楽しみに待った。



 作戦会議の当日は、二百人以上の参加者が集まっていて、面食らった。百人を超えると聞いたが、それにしても多すぎる。


 パンパンと手が打ち鳴らされ、司祭長様が挨拶を始める。四十歳くらいの、ふっくらして優しそうな、黒髪の女性だ。慈愛に満ちた顔の中で、目だけがいたずらっぽく、キラキラしている。


「皆さん、女学院チームの作戦会議にようこそ。今回こそ、性悪の雄猫共を叩きのめしましょう」


 それに答えて椅子の背を叩く音と、歓声が響き渡った。

 私のような若者は、皆ぽかんとしている。先輩方の盛り上がりように、付いていけない。


「今からは私のことを総司令官と呼んでください。今回は団体戦です。今ここに集まっているのは、それに賛同し、協力を申し出てくれたメンバー達です」


 大きな拍手がわき上がった。

 前回まで個別で侵入していた、全てのグループに声を掛けて、共同線戦を張ることにしたそうだ。


「全体の作戦は当日各リーダーに通達します。皆さんは今から、チームに割り当てられた作戦について、準備と訓練をお願いします。では、チーム毎に集まってください」


 総司令官の声は明るく楽しげで、よく通った。人々に指示し慣れているのが分かる。


 その後チーム分けが発表され、私は第四チームだった。

 侵入の中心は第一チームで、人数は10人。少数精鋭のようだ。

 その他は撹乱や陽動、結界クラッシュ、バックアップなどに回る。なんとなくチェスを想像して、チームリーダーにそう言ってみた。


「よくわかったわね。総司令官はチェスの名手よ。私たちはその駒。どう動かすかは、総司令官次第だけど、駒は自分の役目を果たさなくてはね」


 第四チームの役目は陽動で、派手な行動で敵の目を引き付けないといけない。そのため身体能力の高い、若者中心のグループだ。目眩ましの派手な魔術も必要となる。


 その一つに、魔法で龍を出して、敷地内の男性達を驚かす、というのがあった。

 まずは、その龍のデザインで揉めた。

 あるメンバーは、赤黒い凶悪な龍が良いと言い、絶対に黒龍だと主張する人達と対立している。


 そこに私がピンクのリボンが一杯付いた水色の龍が良いと提案した。きっと驚いて見上げてしまうだろう。


 リーダーがサンプルを出してみて、と言うので、小さな龍を出してみた。途端に可愛い〜と声が上がる。


 リーダーがその龍を拡大して天井近くに投影した。すると、教会内の全員が口を開けて龍に釘付けになった。私が龍に虹を吐かせると、キャーという歓声が上がる。


「これに決まりね」


 リーダーの一声で、龍のデザインが決定し、次の項目に移っていった。そんな風に2時間ほど掛けて、出し物? のラインナップが決まった。


 説明会の終了時に、総司令官から注意事項が告げられた。


「家族、恋人、友人といえど、これに関しては敵だと心得てください。秘密厳守、よろしいですね」


 流石に修道院長、という威厳と圧でそう言ってから、ニコッと笑った。

 大会前にもう一度、全員での会合があるので、それまでに各自で、自分の役を練習することになった。



 大会まで1週間となり、なんとなくソワソワした気分で、街に買い物に出ていた私は、ソロモンにばったりと出会った。後ろにはニコラがいる。

 彼は、大会に向けて注文していた、ドレスシャツを受け取りに来たそうだ。


「今日はダンは一緒ではないのね」


「あいつは最終調整だって言って、格闘技の練習に行っているよ。軍の訓練施設だって。バーナードにいた友人に、紹介してもらったそうだ。」


 それは、例の陸軍大将の伝手なのでは。もしかしたら侵入作戦で、ダンと対戦することになるかもしれない。


「ニコラ様もお買い物ですか」


「いいや。暇なので彼に付き合っているだけだよ。ところで僕のこともニコラって呼んでくれないか。ダンとソロモンには様を付けて居ないでしょ」


 今更ダンの事を、様付けする気になれないし、ソロモンは、呼び捨てで定着してしまった。

 それに比べると、ニコラは王子様っぽくて、呼び捨てしにくい。それに実際に王子様なのだ。お忍びとはいえ、馴れ馴れしすぎると思う。


「そういえば、護衛の方は連れていないのですか」


「目立たないように、二人付いているよ。引き連れて歩いていては、仰々しいでしょ。他に護衛兼任の従者が居るけど、今日はソロモンが代わりだよ」


「僕は強いからね」


 ソロモンは自慢げに髪をかきあげた。ライラック色の髪が、長いまつ毛に影を落としている。

 この単純で可愛らしい性格と、繊細な美貌のギャップが、どうにもツボに嵌ってしまう。

 だからソロモンの恋を応援したくなるのだ。


「隣国のお姫様の話を、聞かせてもらえない? 相談に乗るって、以前言ったでしょ」


 それなら我が家に招待すると、ソロモンが言い出した。今はホテルを引き払って、ソロモンの家に滞在しているそうだ。近くに実家があるのに、ダンも一緒らしい。

 自分の家より、ソロモンの家の方が、自由にできると言って、泊まり込んでいるそうだ。


 私はソロモンの招待に応じることにした。買い物の荷物を馬車に積んで、先に帰ってもらい、ルルと共にソロモンの馬車に乗った。



 ソロモンの家は、住人に似て、繊細で美しい。

 ニコラにエスコートされて馬車を降り、屋敷に入ると、室内も非常に華やかで美しかった。

 その癖、気安くて居心地の良い雰囲気があり、これならダンが居着いてもおかしくない。


 居心地の良さそうなサロンに通され、三人で座ると、すぐに使用人たちがお茶の支度を整えてくれた。

 使用人たちの動きは、静かだけど気が利いていて、洗練されている。


「使用人たちが、とても優秀ね。まるで王室のサロンみたい」


「僕の今の母は、隣国の王妹なのでね。だから王宮風なのだと思う」


「もしかしたら、義理のお母さんは人間?」


 ソロモンは黙って頷いた。お姫様は、子供を諦めてまで、ソロモンのお父さんに嫁いだことになる。情熱的で素敵だわ。恋に憧れるお年頃の私は、またうっとりした。


「それで隣国に縁が深いのね。お姫様とはいつからの付き合いなの?」


 ソロモンは、ゆっくりとティーカップに口を付けた。何事か思い出したようで、うっすらと微笑んでいる。そういう姿は、絵のように美しい。


「僕が四歳の時かな。彼女はまだ2歳だったけど、いつも一生懸命、僕の後を追いかけてきたよ」


 綺麗なお兄様を慕う妹の姿が、頭の中に浮かび上った。

 今はどうなのだろう。多分ニコラに聞けば、正しい答えが返ってくる。だけど、聞いていいのかが分からなかった。

 もし、大きくなった妹が、従兄の事など全く気に留めていないなら、ソロモンを泣かせてしまう気がする。


「ミーア嬢、気を使わなくても大丈夫。妹は多分、ソロモンのことが好きなんだ。だけどお互いに、それを態度に出していない」



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