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第9話→キスって、こんなに無情なものなのか?



ピポ、パポ、ポピ。



電話ボックス内には、俺たち3人の息遣いと、電話のボタン音だけがやけに大きく響く。



俺は、純から聞いた番号を、間違いのないように慎重に押した。



『プルルルル・・・・・プルルルル・・・・・・・・・現在、この番号は使われておりません。番号をお確かめのうえ――――ブツッ』



俺はちょっと安心したように息を吐く。



「電話番号、使われてないってさ」



俺がそう言うと、二人も、ふぅ、と息を漏らす。



ぶっちゃけ、メリーさんとか、有名な都市伝説級の幽霊が出てきたら、俺達だけじゃ何もできないし。



二人もそれがわかってるんだろう。



「つか、いい加減出ようぜ?熱いし」



俺がそう言うと、純と旅人は苦笑しながら電話ボックスから出る。



俺たちは、1つの電話ボックスに3人で詰め入っていたのだ。



熱いのは当然である。



と、二人が電話ボックスから出たので、俺もそれに続こうとした瞬間。



――――プルルルル・・・・・プルルルル・・・・・・。



突然公衆電話が鳴り始めたのだ。



熱くなっていた体が、急激に冷めていくのを感じた。


純と旅人も、目を見開いて驚いている。



俺は二人に頷きかける。



二人も、コクッと頷いて、電話ボックスの中に戻ってきた。



俺はそれを確認すると、ゆっくりと受話器を取り、耳にあてる。



『私・・・・め・・・りー・・・・今・・・・・・駅の・・・・ホームにいるの――――ブツッ』



途切れ途切れだが、女の子の声がした。



俺は受話器を元の位置に戻すと、後ろにいる二人を見る。



「・・・・・なんか、今、駅前だって」



俺の言葉に、二人がゴクッと唾を飲んだ。



「だ、大丈夫だ。一応、かなり強力な護符は貰っている」



と、純が懐から見たこともないような文字が書かれた長方形の紙を取り出す。



俺と旅人は、その紙を見て安心した。



純の親父さんの護符があれば大丈夫、と自分を励ましつつ、俺たちは次の電話を待った。






☆☆☆☆






「とうとう、すぐそこまで来たな・・・」



俺の呟きに、純と旅人が拳を握り締める。



メリーさんからの電話は、3回目にして、俺たちが今いる電話ボックスの近くにある公園に居る、と告げてきた。



移動距離から考えて、次の電話で俺たちの前に姿を現すだろう。



体が強張るのを感じつつ、今鳴りだした電話の受話器を、少し震える手で掴んだ。



「・・・私、メイリー。今、あなたの後ろにいるの」


最後は、受話器からではなく俺たちの背後から聞こえた。



・・・・メイリー?・・・・・メリーさんじゃないのか?



そんな疑問を感じつつ、後ろをゆっくり振り返る。



俺に従って、純と旅人も後ろを振り返る。



「――――――ぬぁぁぁぁぁぁぁあ!!」



・・・・・・旅人が発した言葉は、悲鳴などではなく、歓喜の言葉だった。



「こ、これは・・・・いい」



純も、旅人に続いて声をあげた。



メリーさん・・・いや、メイリーさん(?)は、綺麗な金髪の髪をツインテールに結んだ、可愛らしい女の子だった。



しかも、二人が大好きな、胸が残念なくらいぺったんな少女、所謂ロリ少女だ。



さらに、少し汚くなっている片足がない熊のぬいぐるみを片手に持っていて、それがロリっぽさに拍車をかけている。



「さぁ、早く怖がって、いい悲鳴を聞かせろなの」



メイリーさんはクスクスと不気味に笑うが、はぁはぁしてる二人には全く堪えていない。



「・・・・はぁ〜」



無駄に怖がって損した、と、俺は深いため息を吐く。


緊張が解けたせいか、自然に頬が緩む。



「な、ななななな、なんなのあんたたち、何で怖がらないの?」



メイリーさんは、デレデレ状態になっている二人に怯えながら、後退る。



「・・・・なんつーか。御愁傷様」



涙目になっているメイリーさんを見ていると、不憫になってきた。



これが本当に、噂に聞くメリーさんの正体なのだろうか?



予想外れもいいとこだ。



「今までの人たちとは違うの・・・・・他の人は、怖がって魂をくれたのに」



残念だったな。



本当に、運が悪かったとしか言い様がない。



俺が、メイリーさんに哀れみの視線を送っていると、ふいにメイリーさんと目が合ってしまった。



「・・・・いい、魔力の匂いがするの・・・・・・あなた、名前は?」



「・・・森川、秋義・・・・・・ぁ」



メイリーさんの問いに、俺はあることを思い出した。


このやりとり、夏那華ともやったような・・・。



「あ、俺は風下旅人って名前ね」



「・・・竜馬、純だ」



二人とも意気揚々と名乗るが、メイリーさんはそれを無視して俺の方に近づいてきた。



純と旅人は、そんなメイリーさんを俺の方に通すと、羨ましそうな視線を向けてくる。



「私、クリス・迷梨・ヴォルフって名前なの。覚えた?」



俺はブンブンと首を横に振って否定する。



きっと、認めてしまったら変な契約をさせられるに違いない。



「お前・・・幽霊じゃなくて悪魔だったのか?・・・・・・」



俺の問いに、メイリーさん、いや、迷梨〈めいり〉は驚いたように目を見開くと、コクッと頷く。



「よく、わかったね・・・・じゃあ、そろそろ、いいよね? 」



迷梨はそう言うと、呪文のような言葉を紡ぎ始めた。


「我、ヴォルフの名に於いて契りを交わす。・・・・・我は義秋に、義秋は我に全てを捧げることをここに誓おう。ハ・デス様の名において」



夏那華の時と同じように、幾何学な紋様が展開される。



俺は、何も言わない純と旅人の方を見る、と、二人は時を止められたみたいに固まって動かない。



「どうやら、他の悪魔と契約してるみたいだけど、義秋なら大丈夫なの」



迷梨は、俺に近付きながらそう呟いた。



何が大丈夫かわからんけど、こいつも俺の意見なしに契約をするつもりなのか。


「汝、我に契約を示せ。今、此処に永遠の契りを」



しかし、女の子からのキスを拒否できるほど、俺はできた人間ではない。



俺は、素直に迷梨のキスを受けとめた。



「・・・契約、完了なの」


そんな迷梨の言葉に、猛烈な後悔の念が湧いてきたことは言うまでもあるまい。


・・・・こうして、俺の人生2度目のキス、セカンドキスは呆気なく奪われていった。





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