第7話→転校生って、何なんだろうね。
「義秋、なんで昨日休んだんだ?」
HRが終わった後、声をかけてきたのは、もう一人の悪友、竜馬 純〈りょうま じゅん〉である。
「おぅ。それだがな、コイツ、詳しいこと話してくれねぇんだよ」
純の質問に、旅人が答える。
「いや、話せないってか、ありえない話だし」
俺の言葉に、純が眼鏡をくいっとあげる。
「ほぅ・・・それは興味深いな」
純という人物を言葉にすると、『勉強が出来そうなイケメン』『眼鏡が似合うイケメン』『イケメンは死ねばいいのに』と、とりあえず眼鏡イケメンなのである。
まぁ、俺と旅人と友達ってことは、コイツもオタクなわけだ。
イケメンでも、同類なら許せるのはなんでだろうな。
「興味を持つな、興味を。別に何にもないから」
「そう言われると、逆に怪しいな・・・・純、どう思う?」
「・・・・・よくわからんが、この世の者じゃない何かにとり憑かれてるんじゃないか?」
純の言葉に、思わず頬が引きつる。
なんて勘をしてるんだ・・・純、恐るべし。
「そういえば、純の家は神社だったな。義秋、何かあるなら今のうちに相談しとけよ?」
旅人がニヤニヤと笑う。
なんだ、コイツ。
蒟蒻ゼリーを喉に詰まらせて死んでしまえ。
「義秋・・・まぁ、そう睨むな。本当に、何かあったら相談にのるぞ?」
俺は、純の言葉に深くため息を吐いた。
「・・・・もし、例えばだぞ?」
そう言いながら、俺は二人の顔を交互に見る。
二人が軽く頷くのを確認すると、俺もひとつ頷いて言葉を続ける。
「家に、見知らぬロリ少女が住み着いたら・・・・どうする?」
俺がそう言うと、二人は目をキランと輝かせた。
「そんなこと・・・・ぐっ、はぁはぁ」
旅人は、妄想世界にトリップして、悶えまくっている。
気持ち悪いなぁ・・・・。
「よ、義秋?く、くく詳しく話を聞かせてくれないだろうか?」
いつも冷静な純も、頬を赤くしながら、言葉を噛みまくっている。
やっぱり、こいつらロリコンだ。
俺は、二人の性癖を再度確認する。
旅人は妹属性。
純はロリ全般。
なんだろうな、このカオス。
俺が一番まともな人間じゃないか。
「詳しくと言ってもなぁ・・・・」
俺が言葉を濁していると、さっき退出していったばかりの担任の先生、小池 充秀〈こいけ みつひで〉、37歳独身が教卓に立った。
「すまんな。急だが、転校生を紹介する」
充秀。通称みっちーの言葉に、教室が静まり返る。
それとともに、めちゃくちゃ嫌な予感がした。
(まさか・・・・いや、ないない。そんな、どこぞのギャルゲのような展開なんて・・・あるはず・・・・・・・・・ぁ)
みっちーから手招きされて教室に入ってきたのは、紛れもなく夏那華だった。
俺は、夏那華に気づかれないように、体を萎縮させることに全力を注いだ。
☆☆☆☆
「さて、秋義。洗い浚い吐いてもらおうか?」
「そうだな。とりあえず、あの、ロリキュートな夏那華たんについて聞かせてもらおう」
担任が教室から去った後、クラスの面々から質問を受けている夏那華に対して、俺は、むさ苦しい男二人からの質問に答えていた。
俺が、全力で体を萎縮させて、存在感を皆無まで消したにも関わらず、夏那華は俺を目ざとく見つけるなりこう言いやがった。
「おはよう、義秋。今朝は楽しかったね」
ウィンクとともに発せられたその言葉は、クラスの男子が全員敵に回ってしまうほどの破壊力を持っていた。
今朝はありがとう、というと、俺が夏那華を放置して学校に行ったのを、まだ根に持ってるという意味なのだろうが。
それをこの二人は理解しやがらないんですよ、まったく。
「だぁ〜かぁ〜らぁ〜。別に二人が勘ぐるような関係じゃないんだって。二人とも知ってるだろ?俺はロリコンじゃないって」
俺がそう言うと、二人はじとっとした目で俺を見てきた。
「はいはい。嘘乙。お前、純の妹にはぁはぁしてただろ?」
「確かに、俺が言うのもなんだが、うちの妹はかなりのロリフェイスをしてるぞ?」
俺は、二人の言葉にため息をつく。
確かに、純の妹に、ときめいてしまったことは文句が言えない。
だって、巫女さんですよ?
しかもロリな顔なのに、けしからん胸を装備してるし。
俺じゃなくても、はぁはぁするっての。
「いや、あれはだな・・・・」
「へぇ〜・・・義秋、私とキスして、一緒にお風呂にも入ったのに、他の子にも色目使ってたんだ・・・・」
と、いきなりの夏那華参戦。
なんなんだコイツら。
俺をどうしたいんだ。
ほら、クラスの皆さんの視線が痛々しいじゃないか。
「・・・・なるほど、とうとうロリに目覚めたか。おめでとう、秋義」
「確かに、めでたい事だな。クハハハハハ!」
「そうそう。秋義は、もっと私みたいな子に興味を持たなきゃだよ。うん」
・・・・・・どうやら、俺はロリコン趣味に矯正されそうです。
誰か、助けてください。
そんな俺の祈りは、誰にも届くことはなかった。