第6話→イケメンでも、ロリコンなら許せる。
「いょっしゃぁーー!学校行くぜぇぇぇ!!」
朝6時。
俺は、すんごいハイテンションのまま家を出た。
近所迷惑極まりないが、こっちは徹夜明けでテンションが上がりまくってるんだ。
許してくれるでしょ。
「ふにゅ・・・・がっこう・・・行くの?」
俺の声で目が覚めたのか、夏那華が目を擦りながら、玄関からとぼとぼと出てきた。
「おぅ。夏那華は寝てていいぞ。いや、むしろ寝ててくれ」
俺は、家の中に戻るようにお願いする。
ぶっちゃけ、学校に来てもらうとすんごい迷惑なんですよ。
俺の学校での評価が、急激に下がってしまう恐れがある。
たぶんだけど。
「大丈夫・・・こっちの学校、気になるし・・・・行く」
いや、来なくていいから。
とは、口に出したくても出せない。
昨日・・・いや、今日か。
今日の4時頃、夏那華が寝てしまって、暇だから起こして悪魔について色々聞こうと思った時のことだ。
半覚醒状態の夏那華は、めっちゃ不機嫌で、起こした俺をすんごい勢いで睨んできた。
「いい匂い・・・・いい匂い」
そう呟きながら、フラフラと体を揺らして夏那華が近づいてくる。
俺は身の危険を感じて、逃げようとするが、夏那華から腕を掴まれてしまった。
その後は、まさに惨劇。
腕は噛まれるし、顔は引っかかれるし。
人外になった影響か、傷はすぐ治ったけど。
本当に、痛かった。
それから、なんか逆らうのが恐いんです。
わかってくれるよね?
「い、いや・・・・やっぱり、人間の中に悪魔が来るのは不味いんじゃないかなぁ?」
「・・・顔、洗ってくる〜」
何コイツ。
スルーなんて酷いじゃないか。
しかし、本当に学校に来られては困る。
俺は、夏那華が家の中に入っていくのを見届けると、玄関の鍵を閉めて学校へ全力疾走を開始した。
どうせ、学校の場所なんてわかんないだろうし。
大丈夫、大丈夫。
自分にそう言い聞かせながら。
☆☆☆☆
「てんめぇ!何で昨日休んだんだよ!! 」
学校で待っていたのは、親友・・・いや、悪友其の壱、風下 旅人〈かざした たびと〉である。
現時刻は朝の6時15分過ぎ。
なんでこんな時間にいるんだよ、と心の中で突っ込みながら苦笑する。
「まぁ、色々あったんだよ。仕方ないだろ?」
旅人から睨まれるけど、今は恐くない。
会ったばっかの時は、すんげぇ恐かったけど。
旅人を、見知らぬ人が見たらこう言うだろう。
『目が怖い』『喧嘩が強そう』『お金は渡すので、どうか命だけは・・・』、と。
つまり、見た目はかなりイカツイのだ。
と、いっても、実はかなりのイケメンである。
強そうなうえに、イケメンということもあり、本来ならモテモテ。
今頃ハーレムを築いていてもおかしくないコイツには、すんごい困った趣味がある。
まぁ、俺の友達ってことは、予想つくよね?
「せっかく、萌え萌えきゅーと☆の初回版を持ってきてたのに、無駄だっただろ?」
「いやぁ、それは謝るよ。すまん・・・・・というわけで」
俺が手を差し出すと、旅人は、鞄からかなり痛い絵の箱を持ってきた。
「仕方ねぇなぁ。ほら」
旅人から渡されたそれを、俺は大事に自分の鞄に納める。
と、まぁ。
イケメンなこいつに、彼女がいない理由は単純明解。
旅人は、かなり重度のオタクなのだ。
「ありがと。代金は・・・・・・ほら、妹達の写真」
「・・・・・」
無言かつ、真剣な眼差しで俺の妹達の写真を見る旅人の目は、確実に犯罪者である。
実は、かなりのロリコ・・・・・・いや、かなりの妹属性を旅人は持っている。
しかも、俺の妹達は双子。
旅人曰く、双子ってのはかなりの高ポイントらしい。
「よし・・・毎度毎度、悪いな」
「いや、いいよ、別に」
言っとくけど、妹達を売ってるんじゃないよ?
旅人は、自分が管理しているブログに、写真を貼ったりしているだけなので大丈夫。
・・・・・何がって?
いや、犯罪とかには使用されないから、大丈夫。
たぶん。
旅人のブログは、毎日かなりのヒット数を叩きだしているらしいし。
その人たちが、俺の妹達の写真を楽しみにしているなら、それは提供してやるのが人間ってもんだろ?
その後、朝のHRが始まるまで、旅人による、双子の妹の重要性についての談義が行われた。
このロリコンめ。