第51話→余裕は失敗の元。
「・・・・てなことがあって、家出してきた。だから、頼む!」
そう、俺は逃げるようにして我が家を飛び出してきたのだ。
そろそろ本気で精神が保ちそうになかったし、仕方ないよね。
「なるほどな。で、結局やったのか?」
逃げ出している途中、偶然出会った純と旅人に事情を説明し、家で匿ってくれないかと交渉中である。
「いや、これも毎度のことなんだがいいところで止められた」
そうなんだよなぁ・・・・せめて止められなかったら多少の理不尽も受け入れられるんだが・・・・・やる気になったとこを無理矢理止められるからなおさら質が悪い。
「・・・・・・どう思う、純」
「そうだな・・・・・とりあえず言えることが一つある」
「あぁ、俺も言いたいことがあるんだ」
俺の家出の理由を聞いた純と旅人は、ゆっくりと拳を振り上げて・・・・ちょっと待て、何で俺にその拳を向ける!?
「「リア充死ねぇぇぇえ!!」」
「げはぁっ!!」
り、理不尽すぎる・・・・なんで俺が殴られなきゃいけねぇんだよ!
二人のダブルアッパーを見事に頂いた俺は、無残に地面へと倒れた。
「ふんっ!今日はこれくらいで許してやる!」
旅人は鼻を鳴らしながらそう言うと、俺の右腕を掴んだ。
「まぁ、義秋が家に来るのであれば父も妹も喜ぶからな・・・・・・どうだ?」
左腕を純が掴み、二人は声を合わせて俺を立ち上がらせた。
「・・・・・んなら、お言葉に甘えて」
俺は苦笑いしながら、二人に身を任せる。
「いやぁ、それにしても息ぴったりだったよな・・・なぁ純」
「そうだな。練習もしてないのに」
二人は俺を立ち上がらせると、クスクスと笑い始めた。
「いや・・・もっと別のことに役立てようぜ」
「・・・・違いねぇ」
「まぁ・・・・・な」
俺たちは三人揃って笑いだした。
こんな雰囲気、悪くない・・・・うん。悪くないよ。
その後、無事純の家に泊まることが決まった俺は、苦笑する純と旅人を引きつれて、意気揚々と歩き始めた。
☆☆☆☆
「あ・・・・そういえば」
と、純の家に着いた俺はあることを思い出した。
「もしかしたら、迷梨とかが襲撃にくるかもだから」
俺の言葉に、純が肩をすくめて笑いだす。
「フフッ・・・義秋、心配するな。家の神社の敷地内には妖怪の類は侵入できないから。結構信用できる結界が張ってあるらしいから心配するなよ」
・・・・・あれ?今日、黒次とか簡単に侵入してなかったっけ?
そもそも、精霊の蒼樹がいた時点でその結界とやらの信憑性がだいぶ薄れる気が・・・・。
「ん?なんだそのジト目は。・・・・・大丈夫だって、家の周りには、さらに強い結界をはってるんだし」
「・・・・・・もしもの時は、守ってくれんのか?俺はこう見えてもか弱痛っ!!」
なぜか純から殴られてしまった。
「・・・・jk」
冗談は顔だけにしろだと?くそっ!!純相手だと何も言い返せないじゃないか!
「ほれほれ、戯れてないで早く行くぞ。純の部屋でゲーム三昧だ」
旅人は、俺と純の背中を押しながらニカッと笑った。
くぅっ!!爽やかな笑顔が眩しいぜ!
こうして、どうにか今日の寝床を確保した俺は、久しぶりに楽しい一日になりそうだと心踊らせていた。
そう、この時はまだ、あんなことが起こるなんて夢にも思ってなかったのだった。