第5話→貧乳はステータスで、希少価値なのか?
「残念だったな。やはり、イケメンは滅びる運命なのだ」
俺はそう言いながら男に近づく。
「これが、契約者・・・・お前、一体どんな能力なんだ!!」
「バッカだなぁ。そんなの、俺が知るわけないだろ?」
そう言って、俺は男に殴りかかった。
・・・・・結果を言うと、男はかなり弱かった。
たぶんだが、魔法に頼りっぱなしで肉体は鍛えてなかったんだろうし。
それに、なぜか俺の体の筋力とかが、異常に強くなってるのを感じた。
俺の動きは、まさに人外。
普通の人には出せないような速さで、男に突進したのだ。
肉体を鍛えていたとしても、どうなってたことか。
とりあえず、わかった事がある。
俺の能力の曖昧な詳細と、悪魔は他にもいるってことだ。
公園に突っ伏してる男は放置して、夏那華と一緒に、歩いて家に戻る。
夏那華曰く、緊急回避〈テレポート〉、つまり瞬間移動みたいな魔法は1日に2回しか使えないらしい。
ちなみに、普通一般の魔法使いは、無制限で使えるとか。
夏那華は本当に落ちこぼれらしいな。
家に帰る途中。
暗い道を二人で歩く。
「ごめん。もっといい悪魔と契約してれば、楽、出来たのにね」
夏那華は、さっきから謝ってばかりである。
俺は一つため息をついて、夏那華の頭を撫でる。
「楽とかは、どうでもいいんだよ。俺は契約してたのが夏那華で良かったと思ってる」
「・・・・・・嘘」
「いや、嘘じゃないって。だって・・・・」
夏那華が、俺の顔を上目遣いでじーっと見ている。
「だって、きっと、こんなに可愛い悪魔は他にいないだろ?」
「ぇ・・・・・・?か、かかかかかか可愛い?私が?」
「・・・可愛いよ、うん」
俺の言葉に、顔を赤くして狼狽える夏那華を見ながら苦笑する。
正直、可愛いなんて率直に言うのは恥ずかしかったけど。
少しは元気になってくれたかな。
おろおろと視線を泳がせながら、何か独り言を呟いてる夏那華を見ながら、俺は、そんなことを思った。
☆☆☆☆
家に到着すると、小腹が空いたので、カップラーメンを取り出してお湯を注いだ。
もちろん、夏那華の分も。
そろそろ、新しく買いに行かなきゃなぁ、と思いつつ、ポケットに入れっぱなしだった携帯電話を取り出して時間を見ると、深夜の2時を回っていた。
今から寝るのも逆に疲れそうだし、今夜は徹夜かな、と欠伸を1つ。
カップラーメンにお湯を注いで、3分経過したので、フタを剥いで麺を啜る。
うぅ〜。なんかめっちゃうまい。
夏那華も、美味しそうに麺を口に運んでいる。
俺は、箸を止めて、夏那華にある報告をする。
「そういえば、能力のこと、少しわかったかも」
「っっ!?けほっけほっ。それ、本当!?」
どうやら、ビックリして麺を詰まらせたらしい。
咳き込む夏那華に苦笑しながら、俺は頷く。
「なんとなく、なんだが・・・・・・たぶん俺の能力は・・・・吸収だ」
「・・・吸収?」
「うん。さっき、電気男が放った電気が、俺に触れる前に消えたろ?あん時、微かだけど、何かが体の中に入ってくる感覚がしたんだよね」
「確かに、それだと消えた理由は説明できるけど・・・・・だから、吸収?」
「んまぁな。それに、電気を吸い取った後、妙に力が湧いてきたし。たぶん、電気を取り込んで、それを自分のエネルギーに変換、ってのが俺の能力だと思う」
「・・・・なんか、すごい」
「・・・そうか?」
俺は、少し照れたように笑った。
褒められるのは慣れてないし、なんかむず痒い。
「っと、そろそろ風呂に入るかな・・・・夏那華はどうする?」
「ん、一緒に入る」
・・・・・・・ぇ?
「いや、先に入るか後に入るかを聞きたかったんだが・・・・・」
「一緒に、入るよね?」
「よ、喜んで」
夏那華の笑顔のプレッシャーに、思わず頷いてしまった。
だって、否定したら殺す、的な目をしてたし。
それに、一緒に風呂だなんて。
やっと俺にも運が巡ってきたみたいだ。
きっと、今日の占いは1位なんだろうな。
「さて、じゃあ入るかぁ。たぶんお湯はたまってるはずだしな。カップ麺にお湯注ぐ前にちゃんと準備をしといたんだぜ?」
俺は自慢気に胸を張るが、それを見るものはいない。
「早くぅ〜。入ろうよ〜」
風呂場の方から声が。
どうやら、一人で行ってしまったみたいだ。
俺はため息をつきながら、風呂場へ急いだ。
☆☆☆☆
「・・・・はぁ〜」
「さっきから、ため息ばっかり。幸せが逃げるよ?」
だって、仕方ないだろ?
期待して風呂場に向かえば、裸の夏那華がいて。
でも・・・その、なんだ。
とっても残念な体型をしていらっしゃる。
ため息の一つも出るだろ。
「所謂つるぺた・・・・・・・・・・っ!?痛ってぇ!!何すんだよ!」
俺が、ツルペタ、と呟くと、夏那華が背中をつねってきた。
「義秋ぃ?聞こえてるんですけど」
くぅぅ・・・不幸だぁ。
俺にロリ属性はないし、俺の友人二人なら、泣いて喜びそうなんだがな。
「すんません・・・・実は、ツルペタ大好物なんだ、はぁはぁ」
俺が棒読み気味にそう言うと、夏那華は、自分のない胸を手で隠す。
「・・・えっち」
・・・・・俺に、どうしろってんだよ。
俺は、今日で一番深いため息を吐く。
これからの生活の不安を、そのため息に交えながら。