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第46話→動きだした、影。



俺のお気に入りの場所のせいで、すっかり雰囲気が悪くなってしまった。



妙な沈黙が続く中、俺とルシフはとぼとぼと帰路につく。



せっかくの夏休みなのに、俺は何をやってんだ・・・・・。



そんな雰囲気を吹き飛ばすように、俺は無理矢理作り笑いをしながら、ルシフに謝る。



「ルシフ、ごめんな」



そんな俺の心境を察してか、ルシフは、繋いでいる手にギュッと力を込めてきた。



「・・・・ご主人様、無理はしないでくださいね?」


・・・俺は確かに無理をしている。



思い出の場所が、あんなに変わっていて。



いや、変わったのは俺か。


どんどん変わっていく自分が怖い。



どんどん変わっていく周りが怖い。



いつからだろうか。



心だけが、子供のまま変わらなくなったのは。



「・・・・・・・・約束」


「?ご主人様、何か言いましたか?」



「いや、別に」



なんださっきのは。



昔を思い出そうとしたら、言葉が勝手に口からもれて・・・・。



「・・・・・・・・わかんねぇ」



まるで、何かに邪魔されているように、昔の記憶に靄がかかる。



まぁ、思い出せないってことは大した記憶じゃないんだろう。



俺はそう納得し、じわりと滲んできた汗を手で拭いながら足を進める。



そんな義秋の隣で、ルシフが、何かを考えるようにぶつぶつと呟きだす。



「ルシフ、どうした?」



「・・・・・・いえ。きっと気のせいですから。大丈夫です」



「・・・・そうか」



義秋は、いつもとは少し違う雰囲気のルシフに違和感を覚えながらも、それはきっと、この暑さと蝉の鳴き声のせいだと自己完結させた。






☆☆☆☆






「・・・・・・これは、よしにぃといい勝負、だね」


「そうだね・・・・まさか楔先輩が・・・」



義秋をこれからどうするか相談する、ための場所を間違えたと、軽くため息を吐く苺と蜜柑。



他のメンバーは、そんな二人に首を傾げる。



(別に、楔先輩の歌が下手なわけじゃないんだけど・・・・・・むしろかなり上手い。・・・でも、選曲が・・・・)



(よりにもよって、選曲がボーカロイドと、マイナーアニメソングって・・・・)



苺と蜜柑は、現在一番のライバルが和月であることを実感した。



(・・・・蜜柑!)



(・・・・苺!)



二人は、双子ならではのテレパシー的なもので会話する。



((負けられない戦いが、此処にある!))



二人は、和月に対抗するように、アニメソングを検索、そして送信。



イントロが流れはじめるとともに、マイクを握り、中指を立てて和月を挑発する。



それを見た和月の目には、微かに火が灯った。



三人が何をしているかわからない夏那華、迷梨、立夏、結花の四人は、首を傾げながら成り行きを見守る。


曲名、ライオン。



某ロボットアニメのOPである。



双子の絶妙なコンビネーションで歌われているそれを聞いた和月は、内心舌打ちする。



(まさか・・・・今度あっきーとカラオケに来たときのことを想定して、歌の練習をしていたら、それに気付かれてしまうなんて・・・・・・さすがだね。しかも、歌はかなり上手い)



実際のところ、二人は和月の気持ちになんて気付いてはいないのだが。



そんな勘違いから、壮絶なアニソンバトルが始まった。



2、3曲アニソンが続くと、二人の意図に気付いたのか立夏と結花もアニソンを歌いはじめた。



そして、なぜか夏那華と迷梨も。



悪魔の二人がなぜアニソンを歌えるのかについては、神のみぞ知るところだ。



・・・・事実を言うと、義秋の家に住み初めてから、まるで汚染されるかのようにアニメにはまってしまったからである。



そんなわけで、ジュースを運んできた店員さんや、部屋の前を通りかかったお客さんなどが聞き惚れてしまうくらい高レベルな歌合戦は、どんどんヒートアップしていった。






☆☆☆☆






「いやぁ〜・・・楽しかったね〜」



「そうだね〜。また、来たいよね」



部屋を出るとき、いつのまにか部屋の外にできていた人だかりからの大きな拍手を受けて、全員ご満悦である。



また来たいという言葉に、頷かない者はいなかった。


「今度は、あっきーも一緒にね」



和月の言葉に、一同が再び頷く。



こんな、みんなで笑える幸せが続けばいいな、と誰もが思っていた。



しかし、幸せとは儚く脆いものである。



だからこそ、幸せのありがたみがわかるのだが。






☆☆☆☆






「なるほど。やはりこの町に在りましたか」



学校の屋上。



屋上のフェンスの上に立ち、ある一点を見つめる一つの影。



黒いシルクハットに黒いスーツ。



影使いの黒次、その人である。



黒次の瞳には、微かに蒼く輝く木が映っていた。



そして、その場所から出てきた一人の青年と女の子も。



「楔家のお嬢さんではないな・・・・・・しかし、彼は、とても面白い」



黒次は、青年。義秋を見ながら、一人呟く。



「さて・・・・楽しいパーティーの始まりだ」



声だけを残し、黒次の姿がゆっくりと消えていく。



不吉な影は、ゆっくりと義秋に忍び寄るのだった。



やはり、連続投稿できなかったです。       ちくせうw毎日投稿になるように、なるべく頑張ってみますです。

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