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第42話→ルシフの過去。其の二。



ルシフは、懐かしむように言葉を紡ぐ。



俺は天井を見上げながら、その話に耳を傾けた。



「ぼくは、気がつくと知らない町の路地裏に倒れていました――――――――――――






☆☆☆☆






見たこともない世界でした。



道行く人は皆どことなく幸せそうで、その時のぼくはまだ幼かったですから。



なんで自分だけが、こんなに不幸なのか?



そんな疑問が頭の中に広がり、幸せそうなものを全部壊したい衝動に襲われました。



「・・・・・ねぇ。どうしたの?」



そんなぼくに、一人の男の子が声をかけてきました。



その男の子は幸せそうににこにこ笑っていました。



ぼくは、「なんでもないです!」と言って、男の子を張り倒しました。



その笑顔が羨ましくて。



そこでぼくは気付きました。



今のぼくはあの男の人と同じなのではないか?と。



ただ自分のために力を振るう。まさに、あの男の人と同じでした。



優しく声をかけてきてくれたのに、それを暴力で跳ね返して。



そんなことをしてしまった自分が悲しくて。



変わってしまった自分が恐くて。



ぼくは泣きました。



人目なんか気にせずに大声で。



そんなぼくを、ギュッと誰かが抱き締めてくれました。



涙で一杯になった目を開くと、男の子がぼくを抱き締めて優しく微笑んでいます。



「泣きやんでよ。俺が、いるからさ」



男の子の言葉を聞いたぼくは、さらに大声で泣きました。



暴力を振るったのに、泣き虫なのに、なんで優しくしてくれるんだろう。



そんなことを思いながら。


男の子は困ったような顔をしながら、血で汚れたぼくの手を掴んで歩きだしました。



「こっち。・・・・そんなに血が付いてたら気持ち悪いでしょ?」



ぼくは抵抗することもせず、男の子から引かれるままに歩きました。



男の子の手はとても暖かくて、ぼくはその手をずっと握っていたいと思いました。



男の子の家に着くと、すぐにお風呂を借りました。



男の子は言います。



「俺以外誰もいないから、ゆっくりしていってね!」


ぼくはそれに頷くと、お風呂に入りあの男の人の血を綺麗に流しました。



お風呂から上がると、男の子は美味しそうな料理を作っていました。



男の子は、どうやら一人で暮らしているみたいです。


出来上がった美味しそうな料理を机に並べている男の子に質問してみました。



「一人で、寂しくないんですか?」、と。



すると男の子は、「大丈夫。もう慣れたから」と苦笑いしながら椅子に座ります。



ぼくもそれに習い、椅子に座ると、男の子が「いただきます」と言ってご飯を食べ始めました。



その言葉がどういう意味かわかりませんでした。



でも、男の子の真似をして「いただきます」と言ってみました。



「あんまり、美味しくないかもだけど。・・・遠慮しないでね?」



男の子はそう言って、ニッコリと笑った。



ぼくは顔が赤くなるのを感じて、男の子から目を逸らしながら頷き、ご飯を口に運びました。



そのご飯はとても美味しくて。



自然に涙が溢れてくるのを止められませんでした。



男の子は、「料理美味しくなかった?」とか「嫌いなもの入ってた?」とか、色々と質問してきましたが、ぼくは首を横に振り続けました。



今思えば、それはただの嬉し涙だったんですけど。



その後、男の子の部屋に行って沢山遊びました。



男の子はぼくと同じ6歳だと言っていましたが、大人びた雰囲気を纏っていたのでぼくは半信半疑でした。



こんな、こんな幸せがいつまでも続けばいいな、と。


微かに願っていました。



が、ぼくはよほど幸せに恵まれていないようです。



男の子が眠ってしまった後、なかなか寝付けずに部屋の中を見回していると、男の子の部屋の隅に、見知らぬ誰かが立っていました。



いつからいたのか、どうやって入ってきたのか、考える前に行動を起こしました。



幸せを壊されたくない一心で。



「・・・・・はぁ。拙者は幼子と戦いたくはないんだがなぁ」



その誰かはそう言うと、ぼくの攻撃をあっさりと避けました。



「魔力を纏って突進してくるだけ、か。ふむ・・・・・避けるのは容易いが、当たると洒落にならんな」



ぼくの攻撃を避けたその人は、ぼくの背後に回り込みこう呟きました。



「橘式、其の伍。蛇縛〈じゃばく〉」



その瞬間。



ぼくの体は何かに巻き付かれて、動かなくなりました。



「どうしてっ!ぼく、何も悪いことしてないのに!・・・・・・うぅ・・・」



悔しくて、何も出来ない自分が悔しくて涙が止まらない。



「えぇと・・・・・拙者はどうしたら」



その人は、ぼくが泣きだすとあたふたし始めます。



「・・・・・まったく、見てられないですね。政宗さんは」



そう言って、もう一人、誰かが現われました。



「そう言われてものぉ・・・・・立夏と同じくらいの年の子だぞ?」



「まぁ、そういうとこが政宗さんのいい所でもあるんですけどね」



「ぅ・・・うむ。とりあえず、後は任せたぞ?」



「了解です」



ぼくを動けなくした誰かはどこかに消えました。



残った後から来た人は、ぼくにゆっくりと喋りかけてきます。



「あなた、名前は?」



「・・・・・・ルシフです」



答えるか迷いましたが、悪い人ではなさそうなのでとりあえず答えてみました。


「そう・・・・ルシフちゃんね。・・・私は仁美って言います。よろしくね」



仁美と名乗ったその人物は、優しくぼくにほほ笑みかけてきました。



「なんで、こんなことするんですか?」



ぼくの質問に、仁美さんは笑みを崩さないまま答えます。



「ルシフちゃんは、あの男の子のこと、好き?」



好き?と言われた瞬間、顔が一気に赤くなるのを感じました。



「そ、それは・・・・・・・・・・好きです」



ぼくは、間違いなくあの男の子のことが好きになっていました。



優しくて、暖かくて、笑顔の絶えないない男の子のことが。



「そう・・・・なら、聞いて。今、ルシフちゃんはあの男の子と一緒にはいられない」



「ッ!?・・・・なんで!!」



「落ち着いて。理由はきちんと話すから」



ぼくは、ざわついた心をなんとか静めながら、仁美さんの言葉に意識を集中させます。



「ルシフちゃんは、すごい魔力を持っているの。その魔力が、抑えきれなくて微量ながらも漏れだしている。・・・・・・普通の人間が、それに耐えれると思う?」



「・・・・・・それは・・・・」



人間は弱い生き物ですから、普通ならば、強い魔力に当てられた人間は精神異常を起こすはずです。



「この男の子は、生れつき耐性が強いみたいだけど、漏れだす魔力がこれ以上大きくなったらどうなるかわからない」



「ぼくは・・・どうすればいいんですか?」



顔を青ざめながらぼくが質問すると、仁美さんは優しくぼくに笑いかけながら答えてくれた。



「眠ればいいの。魔力を完全にコントロールできるまで。・・・・・・大丈夫よ。きっとまた、この子に会えるから」



仁美さんはそう言いながら、ぼくの頭をゆっくり撫で始めました。



それとともに、目蓋がだんだんと重くなっていきます。



ぼくは薄れゆく意識の中で、仁美さんに最後の質問をしました。



「あの・・・・男の子の名前・・・・・は?」



「・・・・・もり・・か・・・わ・・・・・よ・・・し・・・あき」



もりかわよしあき。



それが彼の名前。



ぼくの初恋の男の子。



それを心に刻みこみ、ぼくは深い眠りにつきました。





☆☆☆☆






「・・・・・・ご主人様・・・・寝てしまってるじゃないですか」



横で寝息をたてている義秋に、ルシフはそっとため息を吐く。



せっかく、自分と義秋の初めての出会いを語ったのに。



ルシフは、少しいじけながら義秋の頬にキスをした。


昔から変わってないその寝顔に。



「・・・・初恋の人が契約者になるなんて、本当に嬉しいです」



ルシフはボソリと呟くと、抱きつくように義秋に身を寄せた。



(この温もりは、絶対に誰にも渡さないです。ライバルは沢山いるみたいだけど、絶対に負けません)



夜空に輝く月は、二人を優しく見守りながら、暖かく二人の寝顔を照らすのだった。




つ、疲れた・・・・。  長文ってほど長くないですけど、いつもより多く書くのはなかなか肉体労働になりますねw       親指がつりそうですw

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