第34話→嵐の前の、木枯らし。
「あれ?いつ帰ってきたんだ?」
「・・・・・・少し前」
俺の質問に、ぶすっとした態度で答える夏那華。
俺が地下から無事生還すると、丁度いいタイミングで晩飯だったらしく、運良くメイドさんに遭遇した俺は、食堂へと案内された。
食堂には、夏那華と迷梨、なぜか先輩もいて、3人とも不機嫌そうな表情をしていた。
俺はそんな3人に首を傾げながら、適当な席に座る。
「・・・・どうぞ食べてください」
座ると同時に、メイドさんからそう言われたので、遠慮なく頂くことにする。
俺が食べ始めると、夏那華たちも食べ始めた。
・・・・・・・・・なんなんだこの重い空気は・・・・・・。
食堂の中は静まり返っていて、食器の音だけが鳴る。
「・・・・・・三人とも、どうしたんだ?」
俺が恐る恐る口を開くと、三人はお互いに顔を見合わせて、同時にため息をはく。
「・・・・・・義秋は、わからない?」
ボソッと呟いたのは、迷梨である。
「・・・?何が?」
「・・・・・はぁ」
そんなため息吐かれても、なんのことかさっぱりわからん。
「あっきーの馬鹿」
「そうだね・・・・・義秋が悪い」
「義秋はとっても鈍感なの」
三人が次々に俺を罵る。
・・・・・・ねぇ、泣いていい?
何で俺が色々と言われなきゃなんねぇんだ?
とりあえず、理由が知りたい。
「・・・・・俺、なんかしたか?」
俺がそう質問すると、三人は再びため息を吐く。
「・・・寝言で、知らない女の人の名前言ってた」
俺を睨みながら、夏那華が呟く。
「そうなの。契約者である私たちの名前じゃなくて、知らない誰かの」
俺は、背中に嫌な汗が出てくるのを感じた。
そういえば、寝ている間に誰かの夢を見ていた気がする。
「あっきー、結花って誰かな?」
・・・・・・ですよねぇー。
何故かわからんが、某アニメのOPの蝸牛みたいに、たくさんの結花が夢に現われた。
い、いや・・・別にロリコンに目覚めたとかじゃないから。
確かに結花ちゃんは可愛いけどさ。
俺は、焦っていることを悟られないように食事を続ける。
大丈夫。俺がロリコンだということはバレな・・・・・・・・・あれ?
メイドさんたちがキラキラした目でこっちを見ている。
・・・・・・・・・そういえば、ここは橘家。つまり、ここのメイドさんたちは結花のことを知っているわけだ。
「あー・・・・・・俺、ちょっと用事が・・・」
俺が立ち上がった瞬間。
ガシッ。
そんな俺の肩を、誰かがすごい力で掴む。
「義秋様。もしかして、結花というのは」
「はいストーップ。それは言わないでくれるかな?俺が本格的にロリコンだと思われてしまうからさ」
俺は、肩を掴んできた人物、メイド長さんの口を塞ぎ、これ以上喋らないように頼む。
「義秋君、もしかして結花っていうのはぐふぅ」
俺は人外の力を行使して、メイド長さんと、今喋りかけていた胡桃を小脇に抱え逃走した。
他のメイドさんも連行したかったが、この時は色々と必死すぎて頭になかったのだ。
仕方・・・ないよね。
☆☆☆☆
逃げた俺は、とりあえず適当な部屋に入る。
部屋は沢山あるし、探すのにも結構時間がかかるはずだ。
とりあえず、抱えていた二人を下に降ろす。
「・・・・びっくりしました」
そう呟いたのは、メイド長さん。
「義秋様、さすがです。私、抱えられたことに気がつきませんでした」
メイド長さんは、目を子供みたいに輝かせながら俺を見る。
「さっすが義秋君だね!見直したよ!」
胡桃も同じように目を輝かせる。
「いや、そんな目で見られてもなぁ」
俺は頬を掻きながら、二人の視線から逃げるように目を逸らす。
「義秋様も、陰陽を使えるんですか?」
「リーダー、あれは陰陽ではないらしいですよ?」
メイド長さんの質問に、なぜか胡桃が答える。
「な・・・義秋様、本当ですか?」
俺が首を縦に振り肯定すると、メイド長は何かを考えるように腕を組んだ。
「えっと・・・・俺、そろそろ部屋に帰りたいんですけど」
「あ、リーダーは考え始めたら梃子でも動かないから私が案内するね」
俺と胡桃は、何かをブツブツ呟いているメイド長さんを放置して部屋を出た。
☆☆☆☆
義秋たちがそんな騒動を起こしている頃、封印されていた女の子は地下1階まで上がってきていた。
封印から解かれて、まだ力も戻っていないというのに、ただ一生懸命歩き続ける。
長い眠りから覚まさせてくれた、ご主人様に会うために。
「もうすぐ・・・ですから・・・・もうすぐ」
そう自分に言い聞かせながら、女の子は止まることをせずに、ただ前へと進むのだった。
次話は少しエロくなる予定。 嫌いな人は飛ばして読んでください。好きな人は、はぁはぁしながら読んでください。 まぁ、自分の文章力で出来る範囲なので微妙になりそうですがw