第27話→夏休み突入、始まる不幸。
7月末日。
学校は夏休みに入り、なんとか赤点を免れた俺は、毎日ダラダラと過ごしていた。
ちなみに、夏那華と迷梨は赤点をとり、今日まで補習登校。
まぁ、2人に日本史を覚えろというのはさすがに酷すぎるだろ。
日本人・・・いや、人ですらないのだから。
明日からは補習がないので、遊びまくるんだとか。
そんなわけで、ゆっくりとパソコンでゲームを出来るのも今日までだろう。
たぶん、学校休みになったら暇だとかぬかして、俺の部屋に無断で侵入してくるに違いない。
そうなったら安心してエロシーンを見れないじゃないか。
「ふぁ〜・・・・」
俺は大きな欠伸を一つして、時計を見る。
時刻は午前10時。
これでも早起きの部類に入るんだぞ?
さて、朝飯でも食べて早速ゲームの続きを・・・・。
ピンポーン。
・・・・・・いや、今のは幻聴だ。
純と旅人は、聖地秋葉原に旅行に行ってるし。
ん?なんで俺が行ってないのかって?
夏那華と迷梨から目覚ましを止められて遅刻。
結果、2人は先に行ってしまった、と。
まぁ、お土産は頼んでるからいいんだけど、あん時は泣きたくなったよ。マジで。
つまり、夏那華と迷梨は学校。
旅人と純は秋葉原。
尋ねてくる人物なんて誰もいないはずだ。
ピンポーン、ピンポーン。
・・・・・・・やっぱり、幻聴じゃないよね・・・。
「どうしよっかなぁー。なんか嫌な予感がするんだよ・・・・・・ぬぁぁぁぁぁぁぁあ!?」
なんか物音がするなぁ的なノリで窓の方を見たら、なぜか立夏がいた。
俺は急いで窓にかけよると、本当に立夏なのか確かめる。
庭に木が植えてあってそれを伝ってくれば俺の部屋の窓の前に来れるが、わざわざそんなことをする理由が・・・・・いや、俺がインターホンを無視してたからか。
「り・・・立夏・・・・何してんの?」
俺はゆっくりと窓を開けて、立夏に尋ねてみた。
「よ、義秋。今から私の家に来てくれ!」
頬を軽く赤らめながらニコッと笑うその笑顔は、俺の中の嫌な予感を確実なものとした。
☆☆☆☆
「そういえばさぁ、俺が立夏の家に行かなきゃいけない理由知りたいんだけど」
俺は、横を歩く立夏に質問する。
結局、無理矢理な感じで外へ連れ出されて、今は立夏の家へ向かう途中である。
理由も聞いてなかったし、とりあえず聞いとかないとな。
「ん、夏休み前の体育祭あっただろ?」
「・・・あったな」
体育祭・・・・何かしたっけなぁ・・・。
色々と考えてみるが、思いつかん。
「実はその時、お父様も見に来ててな。義秋たちのチームが騎馬戦で優勝しただろ?お父様がそれを見て、『騎馬の騎の者、あれは強いな』と仰ったのだ」
あれ?なんか先の展開がわかるぞ?・・・・・いや、ないだろさすがに。
立夏の言葉で、ある一つの結果が頭に浮かんだが、気にしないことにする。
むしろ、気にしたくない。
「それで私は言ったんだ。『私を負かせたのは、あの人です』、と。そしたら、今度一戦交えたいと仰っしゃられた。で、今日、義秋の家にお邪魔したわけだが」
俺の予想的中っと。
「やっべぇ、宿題しなきゃな。・・・・ばいばーいぐぇっ!?」
帰ろうと体を反転させたら、襟を掴まれてしまった。
それが見事に首にめり込んで、とっても痛い。
「お父様にはもう連れてくると言ってあるんだ」
「あ、そろそろ夏那華たち帰ってくるなぁ痛ぇぇぇっ!!」
「帰ってくる?もしかして、一緒に住んでたりするのか?」
さっきより強い力で今度は耳を掴まれた。
「あは、あはははは。なんのことやらさっぱり」
「本当の事を言え!早く!」
ヤバイ。立夏の体から、殺気らしきものを感じる。
「よ、よーし。早く立夏のお父様に会いに行こうか」
とりあえず、今は誤魔化さないと命に関わりそうだ。
「ちょ・・・待て!」
走りだした俺を、慌てて追い掛けてくる立夏。
俺は立夏の家の場所など知らないまま走り続ける。
とりあえず、立夏の怒りが納まるまで逃げ続けようと思いながら。