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第25話→体育祭、司会進行係Aの憂鬱。



『なんかアイドル的な存在の女の子』



『可愛くてツルペタで・・・・はぁはぁ』



俺は紙を開くと同時に、思わず破りそうになってしまった。



なんなんだ、この借り物競争は・・・・。



1枚目は、確実に人物指定しているし、2枚目は選ばれたほうにとってはかなり嫌なんじゃないだろうか。


コンプレックスを抱いてる人もいるだろうし。



「あの〜。コレって引き直すことは・・・・」



「頑張ってください」



「・・・・・・ですよね〜」



係員の人に笑顔で見送られながら、1枚目の紙の目的を達成するべく、重い足を引きずり歩みを進めた。






☆☆☆☆






「あの〜。和月先輩いますか?」



俺は二年生の視線を集めながら、和月先輩を探す。



すると、二年生の中にも去年借り物競争をした人が結構いたらしく、親切に和月先輩のクラスを教えてくれた。



「頑張れよ、色んな意味で」



何人かがそう声をかけてくれたのは、少し励みになった。



(ん〜。これが年上の余裕ってやつかぁ〜)



そんなことを思いながらキョロキョロしていると、友達と楽しそうに話をしている和月先輩を見つけた。



声をかけていいか悩んでいると、俺が視界に入ったのか、和月先輩の方から声をかけてきてくれた。



「おぉ!あっきー、どしたの?」



そう言って先輩が俺に手を振ってくると、周りの視線が俺に集まった。



主に、男子からの視線が俺にすんごいプレッシャーを与えてくる。



「え、えと・・・・・・ちょっと付き合ってください!」



(・・・・・・ぬぁぁぁぁぁぁあ!なんかやらかした感が!やばいよやばいよ!なんか男子からの睨むような視線と、女子からの好奇の視線が痛い!)



俺はテンパりすぎて、告白じみたことを言ってしまった。



なんか、俺のキャラ崩壊寸前なんだけど。



俺ってこんなキャラだったっけ?



集まる視線に、自分のキャラについて深く考え始めてしまった。



「えっと・・・・あの・・・・・あっきーがいいなら」



顔を赤くしながら、和月先輩が呟く。



「うぅ〜・・・・・とりあえず、来てください!」



俺は先輩の手をとり走りだした。



周りの冷やかすような声に、自分の顔が赤くなるのを感じる。



(これ・・・・なんて説明しようか・・・)



顔を赤くして、少し顔を伏せ気味に俺の後ろを着いてくる先輩をチラ見して、俺は深くため息を吐いた。






☆☆☆☆






「な、なんだ〜。そうだったんだ。そうだよね〜ビックリしたよ」



俺は、和月先輩に事情を詳しく説明した。



すると先輩は、明らかにガックリしたような表情をしながら納得してくれた。



いやぁ〜物分かりのいい人で助かった。



「ほんとすみません。お詫びになんかしたいんですけど・・・・・何か希望あります?」



俺の言葉に先輩は少し考えるような素振りをみせて、真剣な顔をする。



「な・・・・なな、なんでもいいのかな?」



顔を先ほどよりも赤くしながら、先輩が言葉を口にする。



「んまぁ・・・・俺に出来る範囲でなら」



俺がそう言うと、先輩はボンッと頭から湯気を吹き出した。



「そ、そそそそそう。出来る範囲でなら・・・・・・わかった。か、考えとく」


はて。先輩は何を考えてるのだろうか。



そんな疑問が頭をよぎるが、とりあえず置いといて。


今は、もう1枚の紙に書いてある借り物を借りてくる方が先決だ。



可愛いいツルペタといったら、約二名が頭に浮かんでくる。



と、いつのまにか自分たちのテントの近くまで来ていたので、2人の名前を呼ぶ。



「夏那華と迷梨いる?」



「どうしたの?」



「何か用?」



コンマ2秒くらいで返事があった。



「早いな・・・・・・まぁいいっか。実はこれなんだが・・・」



俺はそう言いながら、借り物競争の紙を見せる。



2人はそれを穴があきそうな勢いで見つめると、俺の顔を見て、もちろん自分を選んでくれるよね?的な顔をしている。



「あっきー、早く行かないと1位になれないよ?」



「・・・・・・だな。どっちでもいいから・・・・・」



ムギュ、ムギュ。



夏那華が右腕に、迷梨が左腕にがっしりと掴まってきた。



「な、ななななんだよ?」


2人の体温が体操服から直接伝わってきて、やばい。


それに、大きくはないが、柔らかい胸の感触ががががががが・・・・・。



「2人ともずるい〜。・・・・・・えいっ!」



ムニュッ。



何を血迷ったやら、和月先輩が俺の背中に飛び乗ってきた。



まぁ、重くはないんだが・・・・・。



「せ、先輩・・・・胸がめちゃくちゃ当たってます」


「気にしない、気にしない。さぁあっきー。ゴール目指してレッツゴー」



どうやら降りる気はないらしいな・・・・。



「ほら、くそ義秋!さっさとゴールしろやボケ茄子巫女属性ラブルジョア!」



今の声は旅人か・・・・あいつ、覚えとけよ。



「・・・・よし、妹に報告だ」



そう言って、純がおもむろに携帯を取り出し、シャッターを切り始めた。



パシャ、パシャ。



「純んんんん!!お前も覚えとけやこんちくしょー!」



俺はそう言い残して、背中に和月先輩。右手に夏那華、左手に迷梨を抱き抱えてゴールまで全力疾走した。


『おおっと!競技が開始してから早10分!1人目のゴールなるか!・・・・・・ってなんだアイツ!小さなハーレム作りやがって!死ね!死んでしまえ!!』



『はいは〜い。こんな短小の言うことは気にしないでくださいね〜。頑張れ〜』


『だ!誰が短小じゃあ!!つか、なんで理由もなしにそんなこと言えるんだよ!証拠あんのか?あぁ!?』


『・・・・この前の体育の時、誰かからズボン下ろされてたよね?その時に・・・・・・』



『う、うわぁぁぁぁあ!そんな哀れんだ目で俺を見るなぁぁぁあ!!くそぉ!!あのアホ田中が人のズボン下ろすから!みんな、友達どうしでズボン下ろしたりして遊ぶとき、パンツは絶対に下ろしちゃダメだぞ!!』


『・・・・短小・・・プププ。ちなみに、あの場にいた女子の殆どが目撃したよ?』



『・・・・・・死にたい』


司会の人たちがそんなやりとりをしている間に、俺はなんとかゴールできた。



「ぜぇっ、はぁっ・・・・・・さすがに疲れた・・・」



俺は、夏那華、迷梨、和月先輩を地面に降ろすと、地面にへたりこんだ。



なんとか1位にはなれたらしい。



何やら話し込んでいる3人を放置して、俺はテントへ戻る。



もう午前に出る競技はないし、ゆっくり休もうと、心に決めて。




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