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第23話→放課後マジック。



「じゃあ、これで決まり。職員室に提出してくるから」



そう言って、委員長が教室を出ていく。



体育祭実行委員は、なぜか俺と委員長になっていた。



よく頑張るよね、ほんと。



それにしても、空気が重かった。



話し合い、というより委員長の言葉を俺が肯定するだけ。



まぁ、出たい競技がある人はそれに出して、特に何も決まってない人を適当に割り当てていくだけだしな。


実際そんなに決めることはなかったんだけど。



「・・・・・にしても、やっぱ委員長、何か怒ってんのか?」



教室に2人だけになった瞬間、委員長の顔が険しくなり、俺の顔をジーッと見ていた。



やっぱり、俺が何かやらかしたのか?



頭をフル回転させながら考える・・・・が、怒らせるようなことやりすぎて、どれが原因なのかわからない。



「はぁ〜・・・・帰ろうかなぁ」



俺はため息とともに独り言を呟く。



委員長的にも俺の顔なんて見たくないんじゃないのか?



もしそうなら、ちゃっちゃと帰宅した方が委員長のためでもあるし。



有言実行。



俺はカバンを手に掴むと、教室から出ようと立ち上がる。



「・・・・何してんの?」


ジャストタイミングで委員長が戻ってきた。



「い、いや・・・もう何もすることないし、帰ろうかなって」



俺がそう言うと、委員長はとても悲しそうな顔をした。



な、なんなんだ一体・・・・本当にあの委員長か?



まさか、偽者とかはないよな?



「私と教室に残るのが嫌なのか?」



少し声を震わせながら、委員長は言葉を紡ぐ。



「・・・いや・・・・別にそんなことはないんだがな」



俺は、いつもと違う委員長の様子に滅茶苦茶動揺してしまう。



なんだよ・・・まるで普通の女の子みたいじゃないか・・・・。



「じ、じゃあ何でそんなにすぐ帰ろうとするんだ?・・・・・や・・・やっぱり・・・・嫌なんだろ?」



・・・・ぇ?・・・・・う、嘘だろ?



あの委員長が、突然ポロポロと涙をこぼし始めた。



ま、まさか俺のせいなのか?



どどどどど、どうしよう・・・・・・。



これはまずいぞ・・・。



俺の動揺はかなりのレベルに達した。



「・・・・・これは夢か?いや、むしろ夢オチであってほしいんだが」



そんなことを呟いてみるも、目の前の委員長が泣き止むことはなく、俺はただ、しゃくり声を上げて泣いている委員長を見つめることしか出来なかった。



・・・いつも強かった委員長に、何が起きたんだ?



ふと浮かび上がった疑問。


とりあえず、質問してみるか。



「なぁ委員長。本当に、委員長なのか?」



俺の言葉に、顔を上げる委員長。



涙がたまった潤んだ瞳、上気した頬。



なんなんですかこの可愛さは。



いつもとのギャップもあり、その破壊力は凄まじかった。



それはもう、某ギャルゲの、誰にも譲れない俺の嫁の告白シーンくらいときめいてしまった。



「私は・・・私だよ?橘 立夏〈たちばな りっか〉。橘家の・・・・」



委員長はそこで言葉をつぐんだ。



てか、委員長。立夏って名前だったんだな。



初耳だ。



まぁいい。委員長が弱くなった原因らしきものがつかめた。



「委員長。家で何かあったのか?・・・話したくなかったら別にいいけど、教えてくれない?」



委員長は涙を制服の袖で拭うと、自分の席についた。


俺もそれに倣い、委員長の横の席に着く。



それと同時に、委員長が何かを語り始める。



「・・・・お父様から言われたんだ。一般人に負けるような子はいらないって・・・・・・だから強くなる為に修行をたくさんしたけど、義秋には勝てる気がしなかった」



なるほど・・・・まぁ、つまり、委員長が元気なかったりした元凶は俺なのか・・・。



「だから、義秋の弱点を探すために色々調べたんだ・・・・でも、調べれば調べるほど義秋に勝てる気を無くしていった。・・・・・・いや、義秋とは戦いたくなくなったんだ」



「・・・・・・・・ごめん」



俺は委員長に頭を下げる。


「俺のせいで委員長が弱くなって、家族から色々と言われたりしたんだろ?・・・・ほんとゴメン」



俺は少し調子に乗っていたのかもしれない。



誰かが傷つくとも知らずに、人外の力を使って・・・・・・ほんとに嫌な人間だな、俺は。



委員長は、頭を下げる俺をポーッと見ながら、「わかった」と呟く。



「弱かったのは私の心の方みたいだな。・・・義秋はこんなに優しいのに、無理矢理戦おうとしてたなんて」



くすくすっと委員長が微笑む。



俺は、思わず見惚れてしまった。



怒ってばっかのイメージしかない委員長が、こんなにふんわりと笑っている。



それに、教室に差し込む茜色の夕日の相乗効果もあるのだろう。



俺の心臓が、割れんばかりに鼓動する。



この可愛さは、今まで会った誰よりも、今までやったどんなゲームの女の子よりも輝いて見えた。



(こ、これが放課後マジックか・・・・)



俺は、赤くなっているであろう自分の顔を隠すために、窓の外に視線をおくる。


「もう、夕方かぁ〜」



「そうだな。そろそろ帰ろっか」



委員長がそう言って立ち上がると、俺も続くように立ち上がった。



「じ、じゃあな委員長。また明日」



「・・・・あのさっ!」



俺が委員長に背を向けると、委員長が突然大きな声を出した。



「・・・何?」



「・・・・・私のこと、立夏って呼んで。委員長じゃなくて」



そう言って、俺の肩をつかむ委員長。



「いや・・・・理由は?」


俺が委員長の方を振り向くと、顔を真っ赤にしながら委員長が口を開く。



「お願い・・・」



「・・・・わかったよ・・・・・・・・立夏」



こんな可愛い委員長の頼みを拒否できるはずもなく、俺はあっさりと用件を受け入れた。



「・・・・・えへへ」



委員長・・・いや、立夏か。



立夏は、ニコニコ笑いながら教室を後にした。



「・・・ったく、反則だろ」



俺はそう呟きながらも、自然とにやけてしまう頬を原型に戻すことを放棄しながら、ゆっくりと帰路についた。



立夏が、なぜ泣きだしてしまったかなんて考えることもせずに。




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