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第2話→契約とは、お互いの意志が大切だと思う。



「・・・・よし、なら百歩譲って悪魔ということは認めてやろうか」



俺がそう言うと、女の子はホッとした顔をする。



「で、その悪魔がなんであんな所にいたんだ?」



あんな所、とは勿論、学校までの通学路を指している。



俺としては、なぜあんな場所にいて、しかも、どうして俺に突撃してきたのかが気になるし。



「・・・まぁ、あの場所にいたのはいい匂いがしたからなんだよね」



「いい匂い?・・・・・俺のトーストか?」



「そうそう。あのバターの香りが・・・・・・って違ぁう!!」



おぉ、のり突っ込み。



最近の悪魔ってのは、俺の知識の中にある悪魔のイメージとは全然違うんだなぁ。



「じゃあ、他にどんないい匂いが?あの辺は、食べ物屋とかないはずだし」



「・・・・ん」



女の子が俺を指差す。



「・・・・ん?」



俺が自分を指差すと、コクコクと女の子が頷く。



「俺が、いい匂い?」



「うん。美味しそうな匂いが・・・・ジュル」



・・・こっち見んな!涎垂らすな!!



あれか?まさかの人食悪魔とか言わないよな?



「・・・・・・」



俺が訝しむような目で女の子を見ていると、フンッと鼻で笑われた。



「もしかして、私が人を食べる悪魔とか思ってない?」



・・・・ご名答。



「あんな低級悪魔と比べられたら困るんだけど。言っとくけど人を食べちゃうのは知能が低い奴らだけなんだからね?」



「・・・・そうか。よし、なら今すぐ出ていけ」



俺の言葉に、夏那華が作ったよう笑顔になる。



「・・・・・・私が、低級だって言いたいのかな?知能が低そうだって・・・」


「・・・・いや、俺は別に・・・」



すんません。知能が低そうに見えたのは否定できません。



だって、落ちてるトーストを食べようとする奴の知能が高いなんて思えないし。


むしろ、頭大丈夫?って聞きたくなる。



「じゃあ、証明してやろうじゃん!!あんた、名前は!?」



「も、森川義秋・・・・だけど」



「わかった。私の名前は、夏那華〈かなか〉。トルヴァン・夏那華・セリウス。覚えた?」



「・・・・なんとか」



俺は急な展開についていけず、言われるがままに頷く。



「よし、なら始めるから」


・・・・・・何をですか?


俺が首を傾げると、女の子、夏那華は手を前に出して何かを呟き始めた。



「・・・我、セリウスの名に於いて契りを交わす。・・・・我は夏那華、貴方は秋義・・・・・・ハ・デス様に誓い、この身を捧げん」



夏那華が言葉を紡ぎ終えると、夏那華を中心に、幾何学模様の魔方陣らしきものが展開された。



(悪魔って、まじだったんだ・・・・)



俺は唾を飲み込みながら、その光景を呆然と見守る。


魔方陣が部屋一杯まで広がると、夏那華がゆっくりと俺の方に歩いてきた。



「汝、我に契約を示せ」



夏那華は、俺のすぐ近くに来ると、ぐいっと顔を近付けてきた。



「ちょ・・・・・・・っっ!!?」



「今、此処に永遠の契りを」



俺と夏那華の唇が重なる。


それとともに、部屋の中に展開していた魔方陣がどんどん凝縮されて、俺と夏那華との接点。



つまり、唇と唇の間に吸い込まれるように消えていった。



「・・・・・・ふぅ。契約完了っと」



夏那華は汗を拭うように額を手で拭く。



「・・・・ちょっと待て。お前何したんだ?」



俺は夏那華を睨む。



なんだか体が熱っぽくなってきたし、頭痛もする。



「何って・・・・証明してやったんだけど?低級悪魔なんかじゃないってことを」



「・・・今のが、証明?」


俺がそう言うと、やれやれと肩を竦める夏那華。



「まったく・・・・知らないの?低級悪魔は契約する魔力なんてないし、つまりそれができる私は低級じゃないってことよ」



いや、知ってるわけがないだろ・・・・・んまぁ、言いたいことはわかったからあえて突っ込まないけど。



「で、その契約ってのは具体的にどんなものなんだ?」



「・・・・た、確か・・・普通の人間じゃできないような事が出来るようになる、とかだったような」



夏那華は、必死に言葉を考えながらボソボソと答える。



・・・・俺に人間を辞めろ、と?



「・・・ちょっと待て。つまり、お前は、許可もなく俺を人外にしたってことだよな?」



「・・・・・・・・・で、契約した人。契約者のことなんだけど・・・」



見事にスルーされましたよっと。



「・・・・・・っっ!」



突然、今までにないくらいの頭痛が襲ってきた。



俺は、ゆっくりとその場にうずくまる。



幸い、ここは俺の部屋なわけだし。



疼く頭を抑えながら、ベッドにダイブする。



今はただ、眠りたい。



そう思い、俺は静かに目を閉じた。






☆☆☆☆






「・・・・・・」



どのくらい寝てたのだろうか。



目が覚めて、窓の方を見てみると、外は真っ暗になっていた。



「・・・・大丈夫?」



真っ暗な部屋の中、声がした方に視線を向けると、月明かりに照らされた夏那華が、心配そうに俺の顔を見ていた。



「・・・・・・・・・俺は、寝てたのか?」



俺の言葉に頷く夏那華。



「・・・ごめん。私、なんか歯止めきかなくて。勝手に契約なんかして」



夏那華は、唇を噛みながら涙をポロポロと零し始める。



「・・・・・・いや。もう、いいから」



さっきまでは、勝手に契約されたことはかなり頭にきてたけど、涙なんて見たら許してしまいたくなるじゃん・・・・・女の涙は武器、とはよく言ったものだ。


「本当にごめんなさい。私、未熟だから成功するかわかんなかったし」



「・・・・・・・・・もし、失敗してたら?」



「・・・・・・・・・・・・・・・死んでた、かも」


・・・・まじですか?



俺は人外にされただけじゃなく、危うく死んでしまうとこだったのか・・・。



それは泣いて謝ってもらってもお釣りがくるな。うん。



「まぁ、過ぎたことは仕方ないけど・・・・そういえば、人外になったって実感ないんだけど。本当に成功したのか?」



俺の言葉に、涙を拭きながら頷く夏那華。



「間違いないよ。だって・・・・・・感じるでしょ?」



自分の胸に手を当てながら、目を閉じる夏那華。



俺も同じように胸に手を当てて目を閉じる。



―――――ドクン。



自分の心臓の鼓動とは違う、もう一つの鼓動を感じた。



「これは・・・夏那華の?」



「うん。これが契約成功の証。二人の魔力回路が一つになって、お互いにそれがわかるの」



俺は、再び鼓動を確かめるように神経を集中させる。


・・・・・・確かに、夏那華の存在を近くに感じる。


知り合ってそんな時間も経ってないのに、ずっと前から知り合いだったような、妙にくすぐったい感じ。



「・・・・・で、俺が人外になったってことは何か変な能力が付いたって事だよな?能力の詳細とかわかるか?」



これは、俺が一番気になっていた質問である。



もう普通の生活には戻れない。



確かに魔法はあって、それを使える夏那華は、自分で名乗った通り悪魔なのだ。


毒を食うなら皿までって言うし、ちょっとした非日常を垣間見たなら、奥まで行くのも悪くないと思う。


その為には、自分の力を知っておくことが大事なんじゃないかな、やっぱり。



俺は、少しわくわくしながら夏那華の返事を待つ。



「・・・・義秋の能力は・・・」




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