第19話→魔法、失敗。
誤字脱字、おかしな点があったら、報告お願いしますね〜。
「あの・・・・夏那華さん・・・今日は何曜日かわかってるよね?」
俺は、仁王立ちしている夏那華に、慎重且つ丁寧に声をかける。
もちろん、夏那華に聞くまでもなく、何曜日かはわかるんだが。
念のために、ね。
「・・・・木曜日、だよ」
おぉ、お見事。正解、正解。
「学校は、平日は毎日のように行かなきゃってことは知ってる?」
俺の質問に、当たり前だといった感じで頷く夏那華。
よし、わかってるならいいんだ。わかってるなら。
とりあえず、仁王立ちしている夏那華の横にある俺のベッドに腰をかけている迷梨にも質問を。
「よし、迷梨。現在の状況説明を、俺に理解できるように、簡潔に教えてくれ」
現在、朝9時を過ぎて、学校で授業が始まっているこの時間帯。
俺は、なぜかまだ自分の部屋にいる。
これはサボりたい等の個人的理由ではない。
全ては、夏那華と迷梨の陰謀によるものだ。
「理由は簡単なの。義秋が、これ以上契約しないようにするための最善の処置なの」
「・・・・・そんな、ポンポンと湧いてくるように悪魔や天使がいるとは思えないが・・・・・・・」
そんな俺の答えに、夏那華が苛立ったように呟く。
「3日連続で契約・・・・」
ううっ!!・・・・・は、反論できない・・・。
「そ、それは稀じゃないのか?悪魔や天使って、そんなに沢山いるわけない・・・よな?」
「確かにそんなに沢山はいないけど。義秋の場合は例外だよね」
ギロッと睨んでくる夏那華。
「れ、例外だなんて・・・・アハハハハ」
「それ、冗談じゃないの。・・・・・原因はある。義秋の魔力が強すぎるの」
「そうだね。たぶん、この町から10km以上離れた場所にいても感知できる」
・・・・・まじですか・・・。
「魔力を消す方法を教えてください」
俺は素早く土下座を敢行する。
これ以上、厄介ごとに巻き込まれるのは御免だ。
「消すことは出来ないけど、魔力の探知防止はできるの」
「・・・今日、学校休んでもらったのはその方法を教える為だったんだよ」
・・・・・なるほど、俺の為に学校を休んでくれたのか。
「ん・・・・なんかありがとな、2人とも」
俺は素直に頭を下げる。
「いや、いいよ。こっちも、これ以上契約されると都合が悪いし、ね?」
「うん。3人もいれば十分なの。むしろ多いくらいかな」
ま、なにはともあれ、せっかく学校を休んだんだ。
やることをやらないとな。
☆☆☆☆
「・・・・こ、これで本当に探知防止できんのか?」
「うんっ!大丈夫だよ!」
「・・・は、早くするの!」
「そんな満面の笑みで言われてもなぁ・・・・あと、急かすな。今、心の準備をしてるんだから」
俺は、目を瞑りながら呟く。
「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ・・・」
「ブツブツ言わない!始めるよ?・・・・迷梨!」
「言われなくてもわかってるの!・・・・間違えないでね?」
2人はそう言うと、俺を囲んで言葉を紡ぎだす。
「「弛弛〈たゆたゆ〉と揺れて、固めて・・・・・・魔の元に、還れ。授けしは、力の主となりて。・・・その姿を隠さん・・・・」くしゅんっ!」
・・・・・・・あれ?気のせいかな?
くしゃみをするような音が・・・・・・っ!?。
「ちょ!?痛い!痛いからぁぁぁぁぁぁあ!?ごほっ!」
魔法の効果か、頭が唐突に自分の魔力を隠す方法を理解した。
と、同時に体をビリビリと電流のようなものが流れて、口から血が出てきた。
「ご、ごめんっ!」
夏那華が俺に駆け寄ってくる。
「・・・・夏那華のくしゃみのせいで、詠唱にバグが発生したの」
迷梨がヤレヤレと首を横に振ると、夏那華が口を尖らせながら謝る。
「ごめんってばぁ。でも、出るものは出るんだし仕方ないじゃん。ね?義秋ぃ」
俺は必死に否定する。
そんなに媚びるような声を出しても無駄だっての。
仕方ないで済むなら警察はいらないし。
「ほら、義秋も大丈夫だって」
アハハハハ、と乾いたように笑う夏那華を見ると、俺は泣きたくなってきた。
やっぱり、俺の意志は伝わらなかったか。
まぁ、それもそのはず。
さっきの電流のせいで、身体中が痺れて口も開けないし。
例えるなら、長時間正座した後の足の痺れが、全身を駆け巡っているといったところか。
「・・・義秋。口から出てる血を拭いて・・・・あと、もしかしたら内蔵に傷がついてるかもなの」
ま、まさか・・・・呪文詠唱中にくしゃみしただけで、俺に死亡フラグが立つとは・・・・・。
「・・・迷梨。回復の魔法って、使える?」
夏那華の質問に、迷梨が首を横に振る。
「私、というか、悪魔に回復魔法を使うのは無理だって学校で習わなかったの?悪魔の負の魔力は、どう頑張ってもプラスにならないの」
「ん〜・・・・なら、義秋、どうする?」
俺は朦朧とする意識の中で、そんな2人の会話をぼんやりと聞いていた。
(どうでもいいから、なんとかしてくれ・・・・)
少し動くようになった腕を動かし、口元の血を拭うと、俺の意識は完全に途切れた。
☆☆☆☆
「・・・にょ?やっと目が覚めたかな?」
頭にふんわり柔らかい感触を感じるとともに、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「・・・・先輩?」
「夏那華ちゃん〜、迷梨ちゃん〜!あっきー起きたよ」
和月先輩が2人の名前を呼ぶと、申し訳なさそうにこちらに歩いてくる2人の姿があった。
「・・・・・・ってか、ここ俺の部屋だよな?・・・なんで先輩がいるんすか?」
俺は、名残惜しげに先輩のふんわり柔らかい部分・・・・まぁ、膝なんだけど。その場所から頭を上げると、無駄にニコニコ笑っている和月先輩に質問した。
・・・・つか、よく考えてみれば学園のアイドルに膝枕してもらったんだよな、俺。
そんなことを思いながら、和月先輩が俺の部屋にいる理由を知るため、先輩の言葉に意識を集中させ始めた。