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第17話→右腕は、わざとじゃなかったんだ・・・・。



ゆっくりと、頭の中がクリアになっていく。



目を開くと、そこは元居た屋上だった。



俺は、倒れている体を無理矢理起こして歩きだす。



向かう場所はただ1つ。



和月先輩の所へ。



きっと、なんとなくだけど・・・・和月先輩はあの黒次という男の場所に行ったに違いない。



さっき見ていた夢みたいなものが本当に和月先輩の記憶なら、黒次はまだ生きているはず。



きっと、俺なんかと契約した理由は、『力が欲しい』という単純なものだろう。


まぁ、俺は魔力だけはかなりあるみたいだし。



契約者と繋がった悪魔は、魔力を共有できるようになると迷梨が言ってたような気がする。



天使にも、その理屈が通じるかわかんないけど。



屋上から下の階に降りながら、ふと思う。



たぶん、俺の力を借りただけじゃあの男には勝てない気がする。



本当に直感なんだが。



しかし、案外勘というものはよく当たる。



特に、嫌な勘は。



一番考えたくない、最悪の結末が頭をよぎる。



(くそ・・・・動けよ、足・・・)



和月先輩との契約の影響か、身体が思うように動かない。



俺は、足を引きずりながらも、なんとか下足箱まで来ることができた。



「・・・1人でどこか行くのか?」



「・・・・らしくねぇな」


と、聞き慣れた2つの声がした。



俺は、なぜか妙に安心できるそいつらの顔を見て苦笑する。



「・・・・純、旅人・・・何してんの?」






☆☆☆☆






「・・・・なるほど、だいたい状況は把握出来た。つまり、我らが高校のアイドル、楔先輩が変なおっさんに襲われている、と」



まぁ、あながち間違っちゃいないけどな。



「・・・・だいたいそんな感じかな」



やっと動くようになった体を全力で動かしながら、町中を疾走する。



「・・・そういや、場所わかってんのか?」



旅人の言葉に、曖昧に頷く。



「なんとなく、だけどね」


これも、何かの能力なのだろうか?



薄らと、和月先輩、夏那華、迷梨の居場所がわかる。


ちなみに、夏那華と迷梨は学校の中。



和月先輩は・・・・俺の記憶が正しければ、数年前に潰れた個人経営の博物館の跡地にいる。



「たぶん・・・幽霊館」



俺の言葉に、なるほど、と呟く旅人と純。



俺たちの間では、幽霊が多く出没する建物、通称幽霊館と言ったほうが伝わるのだ。



あの場所の幽霊、もとい、人の怨念は相当強いものらしく、純の親父さんでもお手上げらしい。



そんなわけで、博物館跡地=幽霊館という公式が、俺たちの常識になっていたりする。



「しかし、あの場所となると・・・・」



純が、不安の色を混じえつつ呟く。



「そうだな。俺たちじゃ入ることすら出来ないかも」


旅人の言葉に、俺は深くため息を吐く。



確かに・・・場所がわかっていても、和月先輩を助けてやれないかもしれないのだ。



前に一度、純の親父さんに黙って幽霊館に入ろうとしたことがあったけど、生半可に霊感がある俺たち3人は、敷地に足を踏み入れた瞬間体が拒否反応を起こして吐き気をもよおしたことがある。



その後、そのことを純の親父さんに話すと、親父さんは苦笑いしながらこう言った。



「あそこは、すでに人間が立ち入っていい場所じゃないんだよ」、と。



つまり、それほどまでに悲惨な何かが、あの場所で起きたのだろう。



それこそ、すごい怨みが籠もるほどの何かが。



でも、今そんなんはどうでもいいんだ。



今は優先すべきことがある。



そうこうしているうちに、俺たち3人は幽霊館の前へと到着した。






☆☆☆☆






「ちょ!?こっちくんなぁぁぁぁぁぁぁあ!!」



俺は、幽霊館の中を1人で逃走していた。



そんな俺を追い掛けてくるのは、昔の武将のような鎧をつけた何かと、右腕が無い人体模型。



こんなことになったのには、深い、深い理由がある。






☆☆☆☆






純と旅人は、結局幽霊館のドアを叩く前にギブアップした。



まぁ、俺だけが平気なのは人外故だろうが。



「学校に戻って、夏那華と迷梨に伝えてくれないか?義秋が助けを求めてたって」



俺がそう言うと、2人は悔しそうな顔をしながら、「任せろ」と言い残して去っていった。



きっと、無理矢理幽霊館の中に入っても足手まといになることを理解したうえでの行動だと思うが・・・・。



俺はとっても心細くなったわけで。



恐る恐る中に入ってみると、学校の旧校舎を思い出すような造りになっていた。


ガチャン。



開きっぱなしだった入り口のドアが閉った。



「な、なんというお決まりパターンなんだ・・・・・」



ガチャガチャ。



もちろん、そのドアは押しても引いても反応なし。



飛んで火にいる夏の虫ってとこか。



ざまぁ、俺。



俺は、涙目になりながらも、和月先輩の気配がする上の階へ進んだ。



すると、色々な展示物が飾ってある広い空間に出た。


その空間の中心辺りに、武将の鎧と、人体模型という不自然な組み合わせが立っていた。



嫌な予感がした俺は、それを無視してもう1つ上の階へ上ろうと歩きだした。



サザッ。



妙な音とともに、背後から気配が。



急いで振り返ると、さっきより俺に近づいている鎧と人体模型。



・・・・・だいたいの展開は読めた。



俺は、足元に落ちていた木の破片を手に取り、人体模型に向かって投げた。



殺られる前に殺っちまえ作戦だ。



その木の破片は、思いの外当たりどころがよかったらしく、見事に人体模型の腕をぶっ飛ばした。



人体模型の右腕が無残に床に落ちると同時に、甲高い絶叫が響いた。



「キェェェェェェェェェ!!!」



俺が思わず逃げ出すと、声の主である人体模型と、その横に並んでいた鎧が追い掛けてきた。



で、今だに逃げ回ってるんだけど・・・・・いい加減疲れてきた。



俺は、足を止めると、追い掛けてくる人体模型と鎧に対峙する。



とりあえず、逃げ回っても埒があかないし。



俺は拳を握り締めると、微かに笑みをこぼした。

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