第1話→電波的少女との出会いは、やっぱり突然だった。
こんちは。璃瑠@です。 初めての人は初めまして。前作を見てくれた人はお久しぶりです。 ではでは、恥ずかしながら頑張って書いていくので、よろしくお願いします。
『今日の牡羊座の運勢は―――――――最悪です。かなりの不幸に見舞われるかもしれません。家から出ないようにしましょう』
そんなテレビの占いに、俺は苦笑した。
この番組の占いは毎度見ているが、今まで当たったことがない。
俺が牡羊座で、今日の運勢が最悪だとしても、何の問題もない・・・・はずだった。
ところが、占いというのは、不幸な出来事に限って当たりやがるわけで。
でも、ある偉い人が言っていた。幸福と不幸は紙一重だって。
つまり、俺に降り掛かった不幸も、もしかしたら幸福なのかもしれない。
うん、プラス思考に考えないと本当に辛い。
よし。じゃあ、とりあえず回想してみようか。
あれは遡ること数十分前の出来事だ。
☆☆☆☆
俺、森川 義秋〈もりかわ よしあき〉は、その日、いつものように家を出て学校へ向かった。
月曜ってのは何でこんなに憂鬱なんだろうな。
高校に入学してまだ2ヶ月も経ってないのに、学校に行きたくない気持ちがどんどん溢れてくる。
まぁ、こんなのはいつものことだ。
今すぐ家に帰りたい気持ちを抑え込んで、少し足早に学校へ向かう。
家から学校までは、ゆっくり歩いても15分くらいしかかからない。
しかし、いつも遅刻ギリギリにしか家を出ない俺にとっては、その15分という時間は長く感じられてしまう。
少し焦りながらも、時間がなくて食べれなかった朝食のトーストをゆっくりと咀嚼しながら、いつもと同じ道を歩く。
そして、学校まであと少しの所までやってきた。
眠そうに歩いている生徒や、友達と喋りながら楽しそうに笑っている生徒。
様々な生徒達の中に混ざろうと一歩を踏み出した。
「ちちち、ちょ、どどどどどいてーー!!」
突然の声、声の主を探す間もなく、体が横に吹っ飛ばされる感覚。
「ぐべっ!!」
俺の背中が、思い切り壁にぶつかり、肺の中の空気が逃げていく。
「ごほっ・・・・い、いったいなんなんだ・・・けほっ」
俺は咳き込みながら、俺を吹っ飛ばした方に視線を向ける。
「いててて・・・・あの、怪我はないですか?」
そこには、綺麗な黒髪を腰くらいまで伸ばした女の子が座り込んでいた。
どうやら俺とぶつかって倒れてしまったようだ。
・・・・・ちょっと待て。普通の女の子がぶつかっただけで人をあんなに吹っ飛ばせるだろうか。
俺は、少なくとも体重60キロはあるはずだ。
俺の頭の中で、今朝の占いがリピートされる。
『今日の牡羊座の運勢は―――――――最悪です。』
(そうだった・・・今日の俺の運勢は最悪だったんだ)
今まで平凡な生活を送ってきた俺にとっては、日常をブッ壊しそうなこの女の子との出会いはまさに最悪と言える。
俺は痛む背中をさすりつつ、ゆっくりと学校へ向かう。
これ以上関わってはダメだ、と心の中で誰かが訴えてくるのだ。
(いくら可愛い顔してるからって関わっちゃダメなんだ。綺麗な薔薇には刺があるって言うしな)
俺は自分にそう言い聞かせながら、女の子を無視して歩きだす。
女の子の横を通る時、ちらっと視線を向けると、女の子は俺が倒れていた辺りをジーッと凝視していた。
俺は妙な好奇心に勝てず、女の子と同じ方を見る。
そこには、食べかけのトーストが落ちていた。
俺がトーストから女の子に視線を移動させると、女の子は口元に手をやって涎を垂らしている。
・・・・もしかして、食べたい、とか?
俺は、まさかな、と笑いつつ女の子に声をかけてみた。
「あれ、食べたいの?」
そう言った俺の方を見て、コクコクと頷く女の子。
おいおい・・・まじかよ・・・・。
「私、ずっと、何も食べてないから・・・・・」
そう言った女の子のお腹がぐぅ〜っと鳴る。
俺はため息を一つ吐くと、女の子の手をとって、学校とは逆方向の俺の家に向かって歩きだした。
(落ちてる物なんて、食べさせるわけにはいかないだろ・・・・さすがに)
俺は、すれ違う同じ学校の生徒の視線を感じつつ、歩くスピードを早めた。
☆☆☆☆
家に到着した俺は、大量に買いこんであるカップ麺の中から適当なのを選び、お湯を注いで女の子の前に差し出した。
「これ、食べていいから」
俺がそう言うと、女の子は、ぱぁっと笑って俺の手を掴んできた。
「ありがとっ!!このお礼は必ずするから、期待しててねっ!」
女の子はそう言って、俺の手をブンブンと上下させる。
「わ、わかったから・・・・・・ほら、そろそろ食べていいぞ」
俺がそう言うと、女の子はカップ麺のフタを外して、勢いよく麺を啜り始めた。
その後、一つじゃ物足りないと訴えかけるような目で見つめられて、結局買い置きしていたカップ麺の半分である、10個ほどを女の子は完食した。
「・・・・よく食うなぁ」
俺が呆れたように呟くと、女の子は照れたように咳払いする。
「コホンッ・・・・・・2週間も何も食べてなかったから、しょうがないじゃん」
そう言って、プイッと横を向く仕草は・・・まぁ、なんとも・・・・かなり萌えるというかなんというか・・・・・・。
「と、とりあえず、そんな長い間何で何も食べなかったの?てか、家は?この辺りじゃ見ない顔だけど・・・・・・」
俺が次々に質問すると、女の子は何かを考えるように顎に手を当てて、う〜んと唸りだした。
「・・・・・・私の事、知ってしまったら後戻り出来ないけど大丈夫?」
・・・まさか、そんな重い話なのか?
これはなんと答えるべきだろう。
俺の心が、聞かずに日常を続けるか、聞いてしまって非日常に足を踏み入れるか、かなり揺れる。
とりあえず、ただ事ではなさそうだし・・・・うん、やっぱ関わらない方がいいよな。
「俺は」
「実は私、悪魔なんだよね」
・・・・・・は?
俺が拒否の言葉を口にしようとしたら、遮るように言葉を重ねてきやがった。
・・・ってのはどうでもよくて・・・・・いや、よくないけど・・・・・・。
「待て、悪魔ってあの悪魔か?デビルとかサタンとかそう言った類の・・・」
「そうそう。よく知ってるね〜」
・・・まじですか・・・・。
俺、もしかしてすんごい地雷踏んでしまった感じか?
「よ、予想外の電波系・・・・・・いい病院教えようか?」
俺がそう言うと、女の子は顔をぐいっと俺に近付けてきて眉をひそめる。
「嘘だって思ってる?私が、嘘ついてるって」
女の子の言葉に俺が頷くと、女の子は、「証拠を見せてあげるからついて来て」と歩きはじめた。
俺がその女の子についていくと、俺の家を知った家のように歩いて、迷うことなくとある部屋へ向かっている。
「よし、ストップ。今行こうとしてる場所を教えてもらおうか」
俺は女の子の肩を掴んで、引き止める。
「どこって・・・・もちろん、あんたの部屋に・・・」
やっぱりか・・・・・。
俺は、「ちょっと待ってろ」と言い残して、自分の部屋を目指して走る。
実は、ここ4年くらい両親と妹達は海外に住んでいて、実質俺は一人暮らしをしていたりする。
家の中は結構掃除とかするんだが、自分の部屋の中はひどい惨状になっているのだ。
いや、散らかってるとかじゃなくて・・・・趣味で集めたグッズとかが大量にあって、一般人(?)に見せるのは危うい。
部屋のドアを開けた俺は、どこに隠そうか思案する。
「へぇ〜。なんかたくさんあるね、コレ」
そんな声を聞いた俺は、頬を引きつらせながら部屋を見回す。
と、予想どおり例の女の子が、俺のお気に入りの漫画本をパラパラ捲ったり、ちょっとしたフィギュアに目を輝かせたりしていた。
・・・・冒頭に戻る。
大量の食料を食べられたうえに、趣味まで知られてしまった。
これを最悪と言わなくてなんと言うんだろうか。
可愛い女の子と部屋で二人っきりなのは喜ばしいが、状況が状況なだけにつらい。
というか、どうやって俺の部屋に先回りしたのだろうか。
「ふふん。どうやって部屋に入ったのか、って顔してるね」
驚いてポカンとしている俺に向かって、女の子が偉そうに胸を張る。
「もちろん、悪魔ですから。このくらい出来るって」
論より証拠。
どうやら、俺にはこの電波発言を受け入れる以外の選択肢はないらしい。
どうでしたか? たぶん毎日更新は無理なので、不定期更新になるとは思いますが、どうぞよろしくお願いしますねw