鞄
「武器について全て説明してやっても良いが、流石にそれは面倒じゃしのぉ……そうじゃ」
フールは、自身が封印されていた本を手に取る。
「もうボロボロになってますけど……どうするんですか?」
中身も真っ白で文一つ書かれていない。
「この本はとある英雄に仕えた者が作った物でな、本の中になんでもしまえるんじゃ。もちろん儂みたいな神でもな」
そして、この本に入れられたモノは文として保管される。
取り出すと文は消える。
「すごい便利なんですね。その本」
「そうじゃ、儂には封印目的でつかられておったがの……まぁ良い。そんでこの本に」
本に武器をドンドンしまっていくフール。
「ここでは狭くて出せんかったやつもこれに入れておいた。説明書にもなっておるから、この本を持って行くと良いぞ」
なんて便利な物まで貰ってしまったのだろうか。
「……これの名前はなんですか。あ、無かったら無かったでいいんですけど」
「そうじゃのぉ……<鞄>と呼んでおったかな」
<鞄>を開くと、中には武器の絵と説明が書かれている。
なんだか図鑑みたいだが、一部読めない所もある。
あの時のミミズ文字だ。
「あの、この部分は……」
「気にせん方が良いぞ、儂の魔力がアルバに流れておるから読めるようになっておるだけなんじゃ。そのお前でも読めんという事は……な?」
背中にゾクリと寒気を感じた。
触れてはいけない。知ってはいけない部分なんだと直感する。
「という事は、この本を一般人が読んでもミミズ文字ってことですか」
「そうじゃろうな……さて、儂はそろそろ行こうと思うぞ」
「そうですか……何から何までありがとうございます」
「構わん構わん。儂が自由になりたかっただけじゃし。ついでじゃ、ついで」
と言いながら机をかわして奥の壁を殴るフール。
するとそこには、大きな穴が出来た。
「じゃあの。邪神の加護があらんことを」
すごい速さで飛んで出ていく邪神様。
穴の遠くに光が見える。
出口だ。
「この力を使って……あいつらを見返してやるんだ!」
希望と力を持って、アルバは穴から抜け出した。
難易度『SSS』から脱出した、最初の探索者の誕生である。
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