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出会い

「強かったら……もっと俺に力があれば……」


 洞窟のような空間を、たまに設置されている弱弱しい光を頼りに歩く。


 『F』


 それがこの冒険者のランク。

 最低ランクの『E』にすら及ばないことから付けられた、ある種特別な例外ランク。

 剣も魔法も、何もかもが想定外の弱さ。


 しかしこいつの今いるダンジョンのランクは『SSS』。

 ではなぜこんな最弱が場違いな所にいるのかというと。


「なんだよ……なんで俺が死刑になるんだよ……」


 死刑になったからだった。


「あれは濡れ衣なのに……畜生」


 この男には、一般人を殺してそのまま逃げたという罪がかけられたのだ。


 もちろんそんなことはしていない。

 するほどの力もない。


「くそ…くそが…」


 理不尽。しかし抗う能力も、気力すらも残っていない。


 独り言を呟きながらも、行先もわからぬまま歩き続ける。




 歩き続けて数時間。

 この男は異変を感じ取っていた。


「……おかしい。ここは難易度最高のダンジョンのはず」


 魔物が一体も現れない。

 暗い道をどれだけ歩いても、響くのは自身の足音だけ。

 それどころか、魔物の足音も息遣いすらも聞こえないのだ。


 しかし、そのおかげでこの男は生き延びている。


 それに加えて、


「どうなってやがるんだ?」


 目の前に、いかにも入ってくれと言いたげな扉が現れたのだ。


 先ほどまでは行き止まりなんてなかったはず。

 こんなモノがあるようなダンジョンがあるだろうか。

 いや、ここはSSSのダンジョン。

 何が起きても不思議じゃない。


 …先に進むしかない。


「…はぁ」


 ゆっくりと扉を開ける。

 とても重いが、動かせないほどじゃない。


 中はダンジョンとは違いきれいな作りになっている。


 一際目立つのは、明かりに照らされた大きな机に置かれている一冊の本。


「なんだこれ……表紙は何も書かれていないが」


 1ページめくるとミミズがのたうち回ったような文が紙にびっしりと書かれている。


「読めん……ハズレ部屋か」


 内心がっかりしながら部屋を出ようとしたその時。

 閉じようとしたはずの本が反発するようにパラパラとめくられ、本から声が聞こえてくる。


『匂う、匂うな。絶望と悲しみと…少しの怒り』


 反射的に、一歩下がる。

 頭の奥に響くような声だ。


「な、なにが起こって」


『いらんいらん。しゃべらんくても良い。…ふんふん、お主ビックリするほど弱いのぉ』


 本からの声は、深く心に突き刺さることを簡単に言った。


『それで、一般人を殺したところを見てしまったお主が罪を擦り付けられたと。…波乱万丈じゃなあ』


「訳が分からない。お前は一体なんなんだ」


『今は何でもよいじゃろうて。それよりお主、儂と契約せんか』


「け、契約?……どうしていきなりそんなことを?」


『力が欲しいんであろう?復讐をしたくないのか?理不尽な世界と、人々に。』

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