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からくりピエロと大罪の姫  作者: 深月(由希つばさ)
第5章 鼓動ふたつ

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5-5

 視界が白く弾けた。

 今度こそ消滅(しょうめつ)したかと思った少女は目を(おお)って、

 ──……自分に(うで)と目があることに驚いた。

 誰かに支えられている。

 自分の(あし)がある……心臓も。



「サフィア。無事?」



 輪郭(りんかく)を取り戻した少女は──サフィアは目を(みは)った。

 何者かがレイピアで、あろうことか、(やみ)を切り裂いて乱入したのだ。

 (やみ)を構成していた羽虫(はむし)一斉(いっせい)に飛び立ち、サフィアたちは白い異空間に取り残される。

 サフィアは自分を支えてくれている青年を見た。

 相変わらず、三方向に()れた奇妙(きみょう)帽子(ぼうし)とちぐはぐな道化服という()で立ち。

 横顔が獰猛(どうもう)()みを(きざ)んで、目の前の虚空(こくう)を好戦的に(にら)んでいる。

 サフィアの(ほほ)(こぼ)れ落ちた涙が、透明な(しずく)となって、無重力の空間にきらきら散っていった。



「トト……遅いよぅ!」



 かつてのアメリアと同じ苦情に、青年となったトトは(おど)けて笑った。



「やあ、サフィア──『五百年ぶり』」



 その台詞(せりふ)で、今度こそ本当に本物のトトだと知れた。

 トトの胸元には、革紐(かわひも)(つる)した銀色の鍵があった。

 対魔の光を宿(やど)して輝いている──サフィアではなく、アメリアの願いを(たく)したもの。

 かつて魔王デュヴァルオードを封印して昏睡(こんすい)した幼なじみを救おうとした彼女の祈りがこめられていた。



「これがサフィアの元に(みちび)いてくれたんだ。それこそ時空を()えて、ね」



 サフィアの手の中で、トトの心臓が優しいリズムを(きざ)んだ。

 サフィアの心にも、トトの(いだ)く切ない(いと)しさや優しさが届いてくる。

 そこには喪失(そうしつ)の痛みも混じっていた。

 トトにとっても、それはもう遠い昔の傷跡(きずあと)なのだった。



「……トト、私、五百年前の貴方と魔王に()み込まれたの。助けなくちゃ!」


「大丈夫、無事だよ。五百年前の僕も、今の僕も、()()()()()()()()()()()()()()()()



 ……どういう意味だろう?

 疑問に思ったが、トトが無事だと言うのなら大丈夫なのだろう。

 サフィアはほっと胸を()で下ろした。



「さあ、ここを出るよ。しっかり(つか)まって」


「えっ、どうやって?」



 魔王のお腹の中どころか、まるっきり異空間だ。

 言うなれば精神体で世界の狭間(はざま)(ただよ)っているようなものである。

 トトは悪戯(いたずら)っぽく笑った。



「魔法を使うのさ。君が僕のこころを取り戻してくれたから、ね」



 トトが受け取った心臓を胸元に当てると、深紅(しんく)の宝石は粉々の欠片となって青年の中に溶けていった。

 そうして、今度は視界だけでなく、空間ごと弾けた。

 もう不安は感じなかった。

 温かい光の粒子(りゅうし)となって、サフィアたちは()けて行った。

 出口へと……──

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― 新着の感想 ―
[一言] クライマックスへのプロローグ回といったでしょうか。文字数は少ないですが、え、え、どういうことだ? とたくさん考えさせられる回でした(*´ω`*) くっ…………五百年ぶりとはどういうことなん…
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